9月のメビウス便

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(写真と文:石川 久)
 8月のメビウス便がお休みだったため、久々のメビウス頒布会である。
 10月8日に届いたので、早速、三鷹のテンデイズゲームズの店長タナカマさんと「プラトーX」の2人プレイを試してみる。翌9日の高円寺盤友会10月例会でも2つのゲームをプレイする機会を得た。
プラトーX(ウィニングムーブス)10歳以上/2-4人/30分 (6点)

 「プラトーX」はヘンドリック・シモンのデビュー作で、コマを最も高い位置に置くことが目的の多人数アブストラクトゲームである。「プラトー(Plateau)」とは高原や台地を意味する英語。
 手番にできることは、タイル1枚をボードに配置するか、自分のコマを移動するかの2択である。(自分のコマをまだボード上に配置していない場合には、それを配置するというのも、手番の選択肢のひとつになる)
 ゲームボードはプレイ人数によって面が異なる。2人用は6×6=36マス、その裏面が3,4人用の7×7=49マスになっている。
 タイルは、1マス、2マス、3マスの3種類があり、このうち3マスのタイルだけは共通のストックから全プレイヤーが利用できる。このタイルを積み重ねて高さを作り出すのだが、タイルの下には隙間があったり、同じタイルを同じ位置で重ねるような配置は禁止されている。この制約がゲームに深みを与えていて悩ましい。
 コマは一段の高低差がある隣接マスに移動できる。ただし、他のコマがあるマスやフラットに繋がるようなマスには入れない。この条件に従う限りは連続して移動できる。このアイデアも面白い。
 誰かの手番でタイルを置くことができなくなったら、その時点でゲームは終了。コマが同じ高さでタイブレイクした場合、同じ高さで繋がっているマスの多い方が優先して勝利する。それも同じであれば、先にその高さにコマを移動させたプレイヤーが勝つ。
 ゲーム全体としては、2000年のドイツ年間ゲーム大賞(SDJ)を受賞した「トーレス」に似た印象。実は「トーレス」を初めて遊んだとき、建物どうしを繋げることのできないルールを説明し忘れ、この「プラトーX」のようになってしまった苦い経験がある;。私はプレイしたことがないが、国産の2人用アブストラクト「ポジット」にも似ているとか。
 タナカマさんと2人用の狭いマップでまず遊んでみる。最初はそれぞれ自分の山をタイルで築いていく。中盤になると、同じエリアには入れないルールを利用してこの2つの山を合体させてみる。一段ずつ昇れれば一気に移動できるのが、このゲームのダイナミックなところだ。スタート時にはたくさんあったL字型の3マス分のタイルもあっという間になくなってしまう。
 広いマップをコマ2個持ちで遊ぶ2人用のヴァリアントルールもやってみたが、さほどプレイ感に変化はなかった。
 高円寺盤遊会では、4人マックスでプレイ。2人プレイとは違って手番が回ってくるまでに、どういう状態になっているかを読むのは難しい。黄コマのプレイヤーは中盤までコマをボード上に登場していなかったが、終盤にかけ見事に頂点にコマを進めて勝利した。こういう展開もあるから奥が深い。

4人プレイ時の終局状態

立体的なコンポーネントが魅力的
 ボードやタイルの配色がキレイで、短時間で勝負が決まるのも良い。だが、アブストラクトは全般的に、慣れないうちはうっかりミスをしてしまいがちだけに、何度か続けて遊ぶようにしたいものだ。
◎メビウスおやじ「プラトーX」の紹介
http://mobiusoyaji.cocolog-nifty.com/blog/2010/09/x-90c0.html
◎PlateauX for BoardGameGeek
http://www.boardgamegeek.com/boardgame/79216/plateau-x
トリックマイスター(アミーゴ)10歳以上/3-5人/45分 (8点)

 「トリックマイスター」は、「電力会社」でお馴染みフリーデマン・フリーゼがデザインしたトリックテイキングゲームである。因にフリーゼの名前のカタカナ表記に、フリー“ド”マンとフリー“デ”マンが散見するが、昨年のエッセン・シュピールで本人確認したところ、フリー“デ”マンが正解だ。(ローマ字でも確認した)
 アークライトから発売している「電力会社・日本語版」のボックスには、カタカナでフリー“ド”マンになっていたりする;。アークライト側もこの間違いには気づいているらしいので、リプリントするときには、是非とも訂正してもらいたいものである。

ボックスアート
 さて、フリーゼは、これまでに「フォッペン」というトリックテイキングゲームの良作を発表しているが、これとはまた違った内容のカードゲームだ。(「フォッペン」は「GameLink vol.5」の付録になっている)
 「トリックマイスター」では、ディールごとに切り札や得点形式などのルールに変更が加えられる。各プレイヤーに配られた3枚のルールカードから、自分の手札を参考に、ルールカードを1枚選んで裏にして出す。これをディーラーが集めてシャッフルして公開する。シャッフルするのは、誰がどのルールを出したかで、手札が読めてしまうからだろう。
 ゲーム中にルールを決めるトリックテイキングは、「ニエット」や「バスシュティッヒ」など、これまでにもいくつか発表されているが、このゲームではルールカードが60枚も用意されていて、基本ルールを覆すようなミゼールや、獲得したトリックが左隣プレイヤーの得点になるような、トリッキーで派手なルールも入っている。いかにもフリーゼらしい。

怪しいアジアンテスイトのイラスト

ルールカード(日本語シールはDtoJ-Pが作成)
 ルールカードにはドイツ語テキストが書かれているが、メビウスでは日本語シールを添付してくれている。またこのゲームは、日本をイメージしたアートワークになっているが、農民はベトナム人のようだし、老師は中国人のようで、無国籍なアジアンテイストだ。特にバックボーンについての記述はルールには書かれていないのが残念である。
・マストフォローのトリックテイキンングです。
・赤、青、黄、緑の4スートで、数字は1から15まであります。
・最初に配った3枚のルールカードのうち、各自が1枚を裏向きに出して、それをディーラーが集めてシャッフルして表向けます。その全てのルールを適用します。
・ルールカードの下に書かれた番号の小さい順に優先し、多く該当かる切り札が強くなります。同じ強さの切り札は、後出が有利となります。
・基本的には取ったトリックは1点ですが、ルールカードによって修正される場合があります。
 こんな感じの説明で、トリックテイキングを知るプレイヤーとは、簡単にゲームが始められる。
 テンデイズゲームズを訪れた伯爵さんも加わって3人で遊んでみる。3人だと各スートから3枚のカードを除外するが、それでも手札枚数が多いのでいろいろと作戦が立てられる。ルールカードを適用するだけなのに、テクニカルに遊べるところが面白い。またディールごとに新たなルールが決められるから、これが刺激になって飽きない。
 高円寺盤遊会では、5人プレイと4人プレイでも遊んでみた。
 どちらもテンポ良く、5人で全員がディーラーをやって、フルラウンド回してみたが45分程度。前のラウンドの強烈なルールの衝撃が、次のラウンドまで尾を引いて、脳内で混乱を起こしてしまうところが可笑しい。このあたり、フリーゼにおちょくられているような錯覚すら覚える。大逆転も可能だし、派手な展開も魅力的である。
 アミーゴは「トリックマイスター」と同時に、トレーディングカードゲームと競売ゲームを融合した「フリーゼマテンテン」のリメイクも発売した。今年はフリーゼの当たり年で、彼がデザインしたゲームがメジャーメーカーからも次々と発表される。
◎Stich-Meister for BoardGameGeek
http://www.boardgamegeek.com/boardgame/81250/stich-meister

9月のメビウス便」に3件のコメント;

  1. 点数表記されてますが、これは遊んでみた評価ってことでしょうか?

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