コミュニケーションゲームは、私の最も大好きなジャンルである。なので、ノミネートを絞り込むのも、ベストを決めるのも候補が多すぎてたいへん難しい。でも、ここでは悩んだ軌跡を記しておこうと思う。
コミュニケーションは、対人のボードゲームに不可欠の要素で、たとえアブストラクトゲームでも皆無ではない。そのため広義ではどんなボードゲームもコミュニケーションゲームと言えるが、ここでは狭い意味でコミュニケーションがメインの、次のようなゲームを考える。
プレイヤーそれぞれの思考を表明し合い、つきあわせるゲーム。初対面同士が打ち解けたり、場の雰囲気を盛り上げるのに有効。可能であれば異性がいることが望ましい。(ドイツゲーム用語辞典)
私のノミネートは『私の世界の見方』『リンク』『クイズいいセン行きまSHOW!』。
『私の世界の見方(Wie ich die Welt sehe…)』は、親が読んだお題の空白部分に当てはまると思うカードを全員が出し、親が自分の主観で選ぶスイスのゲーム。お題も単語も詩的だったりグロかったりエロかったりするのが、さらに妙な組み合わせになって笑いが止まらない。ランダムにカードを混ぜ、そのカードを選んだら失点というダミープレイヤーのルールも秀逸。カード枚数も400枚以上と豊富で飽きが来ない。→TGW
U.ホシュテトラー/ファタ・モルガーナ+アバクス(2004年)
2〜10人用/8才以上/30〜45分
『リンク(Linq)』はヒントを出し合って、同じカードを持っているパートナーを予想するアメリカのゲーム。あからさまなヒントを出すとばれて失点してしまうし、難しいヒントでは相手が分からない。さらに誰のパートナーでもないジョーカーがいて事態を混乱させる。相手を見てこれなら通じると思ったヒントが通じたときは快感。→TGW
E.ニールセン/エンドレスゲームズ+ビーウィッチトシュピーレ(2004年)
4〜8人用/10才以上/45分
『クイズいいセン行きまSHOW!』は正解がないような問題の答え(数字)を考えて、全員の回答の中間になることを目指す日本のゲーム。問題は「「贅沢な食事」と呼べる外食は、何円以上からでしょう?」というような世間の常識的なところから、プレイヤーをネタにしたものまでさまざまあり、さらに自分で考えてもよい。戦略的に数字を調整したつもりが、思いっきり外れていたりしておかしい。→TGW
川崎晋/カワサキファクトリー(2008年)
3〜10人用/10歳以上/10〜30分
今年のドイツ年間ゲーム大賞にコミュニケーションゲームの『ディクシット』がノミネートされ、新たな時代の到来を予感させる。ボードゲームがより多くの人に遊ばれるには、ルールが簡単で、人数を問わず(多いほうが楽しいが)盛り上がれるというコミュニケーションゲームが大きなカギを握るのではないかと思う。
さてベストゲームは『私の世界の見方』。ドイツから取り寄せて、水曜日の会で遊ぶために全部のカードを翻訳したのもいい思い出だ(この翻訳を手直ししたものが、現在テンデイズゲームズで取り扱われている)。そのときに、ドイツでしか分からない人名やキャラクターを日本風にローカライズするという術を覚えた。こうして生まれた「ガチャピン」カードは無敵カードのひとつ。でも同時に、政治家やアイドルは次々と変わっていくので難しいと感じた(同じ系統の『アップルトゥアップル』もそうだった)。もっと目いっぱいローカライズして、日本語版出ないかなと思っているんだけど。