ゲームマーケットではたくさんの国産新作ゲームが発売された。タイトル数が増えただけでなく質も向上していると感じたが、一方で内容と見栄え(=価格)のバランスに疑問を感じるものもあった。
結局のところ、どんなものであれ価値を認める人が多ければ売れるし、そうでなければ売れないというだけなので、価格設定は売る人の自由である。その上で、買う側での話。
国産ボードゲームは、同人か商業かの区別が曖昧である。個人でも、萬印堂などに頼んで立派なコンポーネントにして、専門ショップに置いてもらえば、企業が作ったものと肩を並べられる。
そのせいなのか、あるいは意図せず結果的になのか、ずいぶん強気な価格設定で、「これで○○円はないよね」と思われるものがあった。500円ゲームズの影響で高額化に歯止めがかかることを期待していたが、むしろ価格の二極化が進んだようだ。
海外ゲームもこれくらいの値段だからというのはおかしい。海外ゲームは輸入コストが含まれていて、現地では3〜4割安いわけだから、海外ゲームの日本価格と同じぐらいの価格設定では高い。ましてや海外ゲームはショップがセレクトしているので、当たりか外れか分からない原石を同じ価格で出しても太刀打ちできないだろう。
小部数製作だから高くついたというのも、買う人のことを考えていない。この内容やプレイ時間ならば普通いくらぐらいというところから始めて、逆算して製作方法を選ぶ方法はないだろうか。中身さえよければ見かけは何でもよいとまでは言わないが(手にとってもらうためにはある程度の見栄えも必要なのは理解できる)、手軽なゲームをたくさんの人に遊んでほしいならば、高級感あふれるコンポーネント・パッケージである必要はない。
あと同人なら儲けちゃいけないという意見も聞く(同人=同じ趣味の仲間だから)。さらには、立派なコンポーネントにするのが楽しいならば、その対価を作り手がある程度負担すべきという意見さえある。ポリシーは多様なほうがいいし、上記のようにボードゲームは同人か商業の区別が曖昧なので一概に言えないが、自分が好きなものを作り、たくさんの人に遊んでもらいたいならば、高価にしない努力や工夫をもっとしたほうがよいのではないか。
将来も自分が楽しめるよう、デザイナーに対して「また面白いゲーム作ってきてよ!」という応援の気持ちもあるので、安ければ安いほどよいというのではない(そういう意味で500円ゲームズの中に安すぎると思われるものがあった)。また、適正価格はいくらがいいというのでもない。どんな人に手にとってもらいたいのかまで考えて、価格設定にもっと注意を払ってほしいと思う。
いつも楽しく拝見させてもらってます。
僕自身は同人ゲームの価格についてあまり違和感がありませんが、それは、「同人だから、まぁ良いか」という気持ちになるからだと思います。
(仲間には寛容になってしまう部分がある。)
仲間 という部分を離れて、一つの創作物として見ると、「高すぎる」という意見も出るのは自然なことと思います。
ただ、その点でいえば、小野さんの著書「ドイツゲームでしょう」は、まさに「高すぎ」て、「高価にしないような作り手の努力が足りなく」て、「どんな人に手に取ってもらいたいのかを考えての価格設定とは思えない」本ではなかったかな と(笑)。
僕としては、「楽しいサイトをいつも運営してくれている小野さんが書いた」「少部数の」「同人誌のような本」だから、この価格にも特に違和感は感じませんでしたが、「これくらいの値段なら仲間はみんな買ってくれるだろう」と読者の気持ちに甘えた本作りだったとは思います。
同人であっても、本とゲームでは違うのか?
僕からは矛盾があるように見えますが、小野さんがどのように自己消化しているのかを是非お聞きしたいです。
※ちなみに僕は、ゲームの値段が高いのが問題なのではなく、中古市場が少ないのが問題なのだと思ってます。
買って遊んでみて、自分にあわなかったり、期待はずれだったら、気軽に他の人に譲る事が出来る。譲ることができるから、安心して新しい作品にチャレンジできる。
ゲームマーケットのフリーバザールみたいなのがどんどん増える事で、ゲーム市場の活性化につながってゆくと考えています。
『ドイツゲームでしょう!』の価格が高いのは仰る通りで、これを買ってくださっている仲間のみなさんには言い訳の余地なく、本当に申し訳ないと思っています。
あくまで一般論としてですが、同人なら高価でも寛容になれる、でも創作物(商業)としてはおかしいというのは、私の場合逆でして、商業としては高ければ買わないというだけの話ですが、同人は「仲間」が相手なのでそうはいかないのではないかと考えます。もっとも、上記の通り、ボードゲームでは同人と商業の境界が曖昧で、どちら寄りかというくらいでしか捉えられませんが。
同人の中古市場が少ないのも、ナッツさんが仰るような仲間内の流通がベースにあるからでしょう。仲間が思い入れをぶつけて作ったと思うと、容易には手放せないものです(私の場合だけかもしれませんが)。お金だけでは割り切れないものがあるのも、同人ゲームのよさですよね。
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さて、価格とは、売り手ではなく買い手が決めるものではないでしょうか。
つまり、その価値に対して高すぎれば売れないでしょう。さらに、出品者も増えているとの事ですから、尚の事高すぎれば、それを買うのをやめて、もっと安い作品を買いに行くのではないでしょうか。
私は、同人ゲームの値段が高くても安くてもいいと考えています。
「海外ゲームは輸入コストが含まれていて、現地では3〜4割安いわけだから、海外ゲームの日本価格と同じぐらいの価格設定では高い。」とありますが、買い手は、ゲームのコンポーネントを買うのと同時に、ゲームのルールを買っていると考えます。分量が多くても少なくても、そこにはデザイナーの意図があるのではないでしょうか。私はゲームを買う時、後者も楽しみたいし、それにお金を払っているとも考えています。
また、私は作り手がかけた金額だけでなく、これから得られる楽しみの度合いに対してお金を払っているとも考えています。(例えば、飲み会の値段と比べるとか)
「商業としては高ければ買わないというだけの話ですが、同人は「仲間」が相手なのでそうはいかないのではないかと考えます」についてよく理解できません。もう少し具体的に説明をいただければ幸いです。
ひげダイスさんこんにちは。便利なGoogleツール、利用しております。
仰るとおり間接的には、買い手が価格を決めているともいえますね。それでも同人ゲームの場合、多少高くても、実際遊んでみると面白くなくても、何かひっかかるところがあった人が買うために多く売れることもあるわけでして、商業ゲームよりも価格と販売数が関係しないのではないかと思います(規模が小さいので誤差が大きいのかも)。
海外ゲームを引き合いに出したのは、価格の目安にならないというだけの意図ですが、ルールや面白さへの対価という点では海外ゲームも同じです。ただ同人ゲームは海外ゲームと比べてそのあたりが未知数なものが多く、羊頭狗肉の可能性もあるわけです。それを承知で買うのは、同じ趣味の仲間のアイデアやフィーリングに期待するからでしょう。
「同人は仲間が相手なので高ければ買わないというわけにはいかない」というのは、上記のようなことを述べたものです。
はじめまして、いつも有益で楽しい記事を楽しませていただいております。
今回の記事においては少し反対意見がありますので投稿いたしました。
この部分に関してです。
>あと同人なら儲けちゃいけないという意見も聞く
これはどうかと思いました。
私は長い事、同人誌関連の業界に身を置いていましたが、このような言葉はまず聞かなかったです。
永い時間と労力をかけた作品でなぜ儲けてはいけないのでしょうか?
好きだから作る、それは当然あるでしょう
儲けたいから作る、それも当然の欲求なのではないでしょうか?
日本の同人誌市場がなぜあれほどの賑わいを見せているか
日本の漫画の作り手がなぜあれほど広く層も厚いのか
作る情熱も確かにあるが
売れれば儲かるといった直接的な利益の部分も多分にあります。
優秀なクリエイターは利益の無い所には集まってきません。
日本の今後のボードゲーム界を考えるなら、とにかく層を厚くすることだと思います。
儲けちゃいけないなどという閉塞的な雰囲気は作らず
良い物を作れば儲かる
そういった方面での夢がある分野へ導いていくのも必要なのではないでしょうか?
コメントありがとうございます。
ポリシーは多様なほうがいいですから、儲けたいから作るという人を排除して閉塞的な雰囲気にしようという意図はありません。そういう意見も世の中にはあるよということを紹介したかっただけです。
儲けるために作ったものが良いものになるかどうかは分かりませんが、良いものを作れば儲かるというのは、そうであってほしいと思いますよ。今の同人ボードゲームの市場規模ではそれすらも怪しいかもしれませんが。
ツイッターでは「実際のとこ別に「たくさんの人に遊んでほしい」訳でも無かったりするし」というコメントもありました。「夢」も思ったよりずっと多様なんだなと思ったところです。
今回の記事の本題とは離れた内容になってしまいますが,
今回の記事に対する他の方の投稿に共感できる部分がありましたので,
投稿させていただきます。
まず“ナッツさん”がおっしゃっていた
「買って遊んでみて,自分にあわなかったり,期待はずれだったら,
気軽に他の人に譲る事が出来る。
(中略)
ゲームマーケットのフリーバザールみたいなのがどんどん増える事で,
ゲーム市場の活性化につながってゆくと考えています。」
についてです。
私はテーブルゲームのコレクションを始めて約3年経ちますが,
コレクション数が200を超えました。
お金も保管場所も必要なので,
購入する前にいろいろなサイトで研究し,
「これは確かに面白そうだ。」と感じたものを購入するようにしています。
でも,いくら評価が高くても
実際プレイしてみたら自分にはいまいちだったというものもあります。
そうした時,ゲーム・マーケットのフリー・バザールは大変有用だと思います。
ゲームの好みは人それぞれ。
私にはいまいちでも,それを面白いと思う方はたくさんいると思います。
ネットオークションという手もありますが,
同好の士が集まる場で,
同好の士を相手に自分が出品したゲームについて直接話をするのは楽しいものです。
(たとえ買ってもらえなくても。)
ただ,場所代1500円は高すぎます。
年々高くなっています。
場所代が高くなると,
参加の敬遠や売り値の高騰につながると思います。
もっと気軽に参加できる場所代にしていただき(それこそ“フリー”に。)
中古ゲームを媒体とした
同好の士のコミュニケーションが活性化することを願っています。
それと「ドイツゲームでしょう!」の値段についても“ナッツさん”が触れていましたが,
他のゲーム関連書籍も高すぎると思います。
「ゲーム・リンク」は,
第1号を購入したところ値段に対してあまりにも頁数が少なかったので
第2号からは購入していません。
「シュピール」も同様です。
いずれも内容はすばらしいと思いますが,残念です。
何やかや考えているうちに返事が遅れました。申し訳ありません。
エッセン国際ゲーム祭の最低ブースが10万円、ゲームマーケットの入場者数がその100分の1ですから、単純計算で1000円ぐらい。エッセンは首都ではありませんから、首都で行う分割り増しというところでしょうか。主催関係者の話を伺うと、これでもぎりぎりで、儲けなど考えられないようです。
関連書籍は1000部前後しか作っていませんから、単価はなかなか下げられないようです。買う側としてはマイナーな趣味を下支えするため、一般には高いと思ってもお金を出すというのは私も意識することがありますが、ものを提供する側に立ったら、そんな厚意があることに感謝し、甘えすぎないようにやっていきたいと思います。