戦略的に死ぬ
昨年のエッセン国際ゲーム祭で、印刷が間に合わずサンプル展示となってしまった作品。ブースを訪れたとき、担当のヴォルフさんが「戦略的に死ぬ(strategisch sterben)」ゲームだと、目を輝かせて説明してくれた。もっとも、死の要素をもつゲームということで、私はプレビューの段階から注目していた。
舞台は小さな村。自分の一族を職人や議員や旅人にして、名声を競う。修行にも昇進にも時間がかかり、一定時間経つごとに一族だ亡くなってしまう。しかし時間を節約しすぎてはいけない。必要なものには時間を惜しんではいけないだけでなく、亡くなった順に入れる「村の歴史」には定員があるからだ。
自分の番には、7つのアクションスペースから1つを選び、そこにある「影響力コマ」を1個取ってからアクションを行う。「影響力コマ」には限りがあり、なくなるとそのアクションが選べなくなる。ほかの人が選びそうなアクションは先に取っておく必要があるので一種のワーカープレイスメントと言えるだろう。得点パターンはアクションスペースの分だけあるが、ほかの人と競合するのであまり偏った選択はできない。
アクションを選んだら、自分の一族コマをそこに送る。農夫として小麦を収穫し、職人として馬車を作ったり馬を飼育したりし、旅人として遠方の土地に出かけ、議員として特権を手に入れ、修道士として教会で出世する。市場の日が開かれれば小麦や馬車を売って得点をもらう。そのほかに、次の世代の家族を投入する「子孫」がある。
面白いのは修道士。出家させても、すぐに教会に入れるとは限らない。まず黒い袋に入れて、中立の修道士と混ぜてランダムに引き、見事当たれば教会に入れる。お金を払えば袋の中を見て引けるのだが、そうでないといつまでも出てこないことも。教会に入りさえすれば、あとは小麦で昇進できるが、そこまでの道のりが険しい。
これらのアクションには、時間を消費するものが多い。馬車職人だったら修行して一人前になるまで3年、馬車1つ作るのに3年といった具合だ。時間はマイボードのコマを進め、9年経つごとに1人亡くなってしまう。人生のなんと短いことか。
家族コマには世代番号がついており、はじめは第一世代(4人)のいずれかが死去する。何の仕事に就いていても関係ないが、亡くなったときの職業によって、死去した家族は村の歴史に刻まれる。農夫として、職人として、議員として一生を終えていくわけだが、残念ながら村の歴史には定員がある。職人なら3人、旅人なら2人までで、それ以降は共同墓地に埋められる。これが、時間をどんどん進めて早く死去するべき理由である。
村の歴史か共同墓地が埋まったら最終ラウンドでゲーム終了。市場で商品を売ったお客さん、議会や教会で生き残っている家族の地位、旅行の行き先数、村の歴史に刻まれた家族の数などの合計で名声の多い人が勝ち。なお、これらの点数はほとんどゲーム終了時に入るので、誰が勝つかは終わってみてのお楽しみ。
初プレイ4人で2時間。旅行に注力して、あとはどんどん亡くなって村の歴史に刻まれる作戦でくさのまさんが1位。この2つに特化してはいたが、ほどほどにものを売り、教会にも人を送ってほかの得点も疎かにしなかった。私はというと議員の特権で影響力コマを集めていたが、活用する前にゲームが終わったのと、時間が進まなかったので村の歴史に名を残せず3位。2位だった鴉さんも早死に作戦だったので、時間を惜しまずどんどん使うほうが勝利に近づくようだ。
どのアクションスペースをどの順で選べば得点効率がよいか。ほかの人はどのアクションを狙っていそうか。ランダムに出てくる影響力コマのうちどれを取ってどれに使うか。考えればきりがないほど要素が多い。運の要素といえば、教会に入るときだけ。非常に頭を使う。
「もう死んだほうがいいかな」「修道士が何を言うんですか!」「旅の準備はしたけど、旅行するのは命がもたない。もう孫に任せた」……ゲームに入り込んだ会話が楽しかった。それだけ世界観とシステムがマッチしているということだろう。
Village
I.ブラント、M.ブラント/エッガートシュピーレ(2011年)
2〜4人用/12歳以上/60〜90分