ドイツゲーム賞2022に『アーク・ノヴァ』
ボードゲームメッセ「シュピール」を主催するフリードヘルム・メルツ社(ドイツ)は本日、33回目となるドイツゲーム賞(Deutscher Spiele Preis)を発表した。一般愛好者の投票により、『アーク・ノヴァ(Arche Nova)』が1位に選ばれた。ドイツ年間エキスパートゲーム大賞では推薦リスト止まりだったが、ゴールデンギーク賞で大賞、国際ゲーマーズ賞にノミネートされており、今年のゲーマーズゲームの最注目作となっている。
ドイツゲーム賞は、前年の秋から当年の春までに発売された新作を対象として、はがき、インターネット、用紙による一般投票で選ばれている。5タイトルまで記入する方式で、毎年フリーク向けの作品が選ばれる傾向にある。昨年は『アルナックの失われし遺跡』、一昨年は『ザ・クルー』が受賞した。
今年1位となった『アーク・ノヴァ』は、動物園を整備して動物を飼育し魅力を上げるとともに、環境保全にも力を入れるタイル配置&カードプレイゲーム。フォイヤーラントから昨秋発売され、日本語版はテンデイズゲームズが取り扱っている。
2位にはドイツ年間ゲーム賞の『カスカディア』、3位にはエキスパートゲーム賞ノミネート作品の『デューン』が入った。日本発の作品でドイツ年間ゲーム大賞にノミネートされた『スカウト』が8位。日本人作品の入賞は、『ラブレター』(2014年、4位)、『街コロ』(2015年、8位)に続いて7年ぶり3回目。日本語版が発売されている作品は今回初めて、10位内全作品となった。
同じく投票で選ばれるドイツキッズゲーム賞には『クアックスと仲間たち』が選ばれた。授賞式は、エッセン・シュピール会期中に行われる見込み。
【ドイツゲーム賞2022】
1位:アーク・ノヴァ
(Arche Nova / M.ヴィッゲ / フォイヤーラント)
2位:カスカディア
(Cascadia / R.フリン / フラットアウトゲームズ+AEG+コスモス出版)
3位:デューン 砂の惑星:インペリウム
(Dune: Imperium / P.デネン / ダイヤウルフ+アスモデ)
4位:リビング・フォレスト
(Living Forest / A.クリスチャンセン / ペガズスシュピーレ)
5位:赤の大聖堂
(Die Rote Kathedrale / S.サントス&I.センドレロ / コスモス出版+デヴィルゲームズ)
6位:ウィッチストーン
(Witchstone / M.キアッキエラ&R.クニツィア / R&Rゲームズ+フッフ!)
7位:ビヨンド・ザ・サン
(Beyond the Sun / D.K.チャン / ストローマンゲームズ)
8位:スカウト
(Scout / 梶野桂 / オインクゲームズ)
9位:ゴーレム
(Golem / F.ブラシーニ&V.ジッリ&S.ルチアーニ / クラニオ・クリエーションズ+アスモデ)
10位:テラフォーミング・マーズ・カードゲーム:アレス・エクスペディション
(Terraforming Mars: Ares Expedition / J.フリクセリウス&N.リトル&S.エンゲルステーン / シュヴェアクラフト出版)
【ドイツキッズゲーム賞2022】
クアックスと仲間たち
(Mit Quacks & Co. nach Quedlinburg / W.ヴァルシュ / シュミットシュピーレ)
第1回ボードゲーム大祭2022静岡御殿場レポート
9月3日(土)と4日(日)、静岡・御殿場高原の複合リゾート施設「時之栖(ときのすみか)」内にあるホテルのロビーにて、「第1回ボードゲーム大祭2022」が開催された。日本語版ボードゲームを扱う輸入代理店や同人ボードゲームサークルなど60団体がブース出展し、2日間でのべ587名(主催者発表)が来場した。
会場へはJR三島駅から無料シャトルバスで約30分。天気が良ければ富士山が見えるリゾート施設は、ホテルなど宿泊施設のほかに温泉、レストラン、カフェ、スポーツ施設、金魚水族館などがあり、日帰りの家族連れからスポーツ合宿の学生までさまざまな人で賑わっていた。
ボードゲーム大祭は「御殿場高原ホテル」2階の2つのホールと、2つのホールの間にあるエントランスを使って開かれた。富士山に面する「FUJIの間」とエントランスは企業ブース、反対側の「さくらの間」は一般ブースとプレイスペースになっている。ゲームマーケットと比べると混み合っておらず(といって閑散ともしていない)、出展者同士が行き来してお話できるくらいの余裕がある。
同人ゲームサークルなどの一般ブースとプレイスペースが設けられた「さくらの間」
輸入代理店などの企業ブースが入る「FUJIの間」
エントランスではJELLY JELLY GAMES、ジーピー、クレーブラットが出展
客層はボードゲーム愛好者以上に、子供連れが目立つ。近隣から参加している人が多かったようだ。各ブースではバランスゲームやアクションゲームなど子供向きのゲームの試遊や、ビー玉迷路を自作するワークショップが人気。プレイスペースは最初こそ閑散としていたが、テンデイズゲームズのタナカマ氏などがゲームを持ち込んでルール説明をするようになってからは親子連れも遊んでいくようになった。「子どもがこんなに来るならもっとキッズゲームを用意しておけばよかった」とクレーブラットの畑氏。
Youtube動画配信でおなじみの「よしもとボードゲームブ!」は2タイトルを用意。MCのわだ氏はフワちゃんコスプレ
ゲムマにも登場したテリヤキゲームズ(ブシロード)のテリテリマンの決めポーズ
コノスは木製のキノコ置物やサイコロスコーンを販売
同人サークルの中には新作を持ち込むところもあった。RMBCの『セミファイナル』はセミたちが7日間でカラスに食べられないようにして生き残るバッティング系カードゲーム。バックストーリー小説『変身』もついてくる。
ボードゲーム大祭を企画した時之栖の露木氏にお話を伺った。昨年のゲームマーケットにもいらしていて、そのときに一度、このイベントの構想を伺っている。
このイベントは、地元の愛好者がリゾート施設を借りて開催しているのではなく、リゾート施設が自ら企画しているところが大きな特徴だ。ボードゲーム以外にもさまざまな新事業を企画している中でボードゲームに着目し、昨年10月には園内のコテージにボードゲーム専用客室「ボドゲの棲(すみか)」をオープン。さらに誰でも楽しめる宿泊型ボードゲームイベントを企画した。
宿泊型アナログゲームイベントといえばJGC(ジャパンゲームコンベンション、1996-2016)が有名だがTRPGがメインであり、一般参加が可能な大規模宿泊型ボードゲームイベントは筆者の知る限り、国内では過去に例がないのではないかと思う(ドイツでは「プフェファークーヘル」が毎年イースターの連休に行われている)。時之栖は施設全体で500部屋で1200人が宿泊可能。サッカー合宿などもあって全てがボードゲーム客ではないが、専用宿泊プランは数日で完売となった(満室の場合は三島駅前の東横インなどに泊まってきても全然遠くはない)。
地元の三島にあるボードゲームショップ「バトン」の協力により、時之栖では他のボードゲームイベントや出展者候補をリサーチ。夏休みが明け、大きなボードゲームイベントがない9月に時期を設定した。時之栖では毎週のようにイベントを開催しており、関係団体との調整や来場者の管理については専門のスタッフもいるのが強みだ。言われてみると受付や会場スタッフは皆、時之栖のユニフォームを着ていた。
会場のあちこちに看板が立っており、フルカラーで16ページの豪華なパンフレットが用意されている。それなのに出展料は無料、一般入場料もワンドリンク付きで500円。宿泊者は出展・参加者問わず深夜までロビーを開放する。これでは到底ペイしないが、参加者が泊まって食べて温泉に入って、トータルで利益を出すという施設主催ならではの考え方だ。
園内のあちこちに建てられている看板。親子連れが多かったのも、この看板を見てかもしれない
ということで、ボードゲーム大祭もそこそこに園内を満喫。1日目のお昼はお好み焼きを食べ、午後からは展望フィンランドサウナで汗を流し、夜は地ビールレストランでグリルにヴァイツェン。別の温泉に行っていろんなお風呂を試す。2日目は朝風呂と朝食バイキングの後、部屋でまったりしてから金魚水族館で圧倒的な種類の金魚を眺めて過ごし、カフェで軽食を取り、お土産をじっくり吟味。ボードゲーム大祭にいたのは2~3時間くらい。もう1日あればフィットネスかプールに行ったかもしれない(美味しいものがありすぎるので、サウナでもスポーツでもしてお腹を空かせることが重要だ)。宿泊費が安く、これだけ堪能して、さらにボードゲームを少々買っても総額で2万円に収まった。
地ビールレストランではソーセージ、ムール貝、御殿場高原生ビールでドイツ気分
「第1回」を銘打っているが、第2回が行われるかは出展者・参加者からのフィードバックを検討して決めるという。しかしTwitterでの評判は上々で、早くも第2回を期待する声が大きい。