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フォルミカ(Formica)

捕まえられるか五分五分
磁石を使ったボードゲームは多い。くっつくという性質を利用したもの(『ベッポ』『カヤナック』『オバケだぞ〜』)が多いが、反発する性質を使ったもの(『おしゃれパーティー』)も少しある。このゲームでも、くっつくか反発するかは、合わせてみてのお楽しみである。
このゲームのオリジナルはイギリスで1987年に発売された『アンティシペーション(Anticipation)』。やがてデンマーク、ドイツ、オーストリア、ノルウェー、ハンガリーで発売。90年にデンマークのゲーム賞を受賞、91年にはドイツ年間ゲーム大賞にノミネートされている。ドイツ語版を扱った日独の共同会社バンダイ・フキはこのゲームの発売から5年間ほどしか存在しなかったが、その間に『さまよえるオランダ人(Der Fliegende Holländer)』など10タイトルほどをリリースした。

アリの一族が、ほかのアリを捕まえて巣に連れ帰り、7匹集めて女王アリを作るゲーム。サイコロを2つ振ってアリを移動し、同じマスに止まったアリの上に重ねてくっつけば連れ帰れる。
アリのコマには磁石が内蔵されているが、どちらの極が上かはくっつけてみないと分からない。反発すると、逆にそのアリに捕まってしまう(裏返しにして、下にくっつける)。ほかのアリを巣まで連れ帰る(ちょうどのマスで止まる)と、裏の模様を見て、女王アリのマスに並べる。
女王アリは7種類のアリのコマでできあがり、その7種類を最初に全部集めた人が勝ち。先行して何匹か集めている人は、集めるべき残りの種類が限られ、上がりにくくなる。一方、後れをとっても一度に集められるので逆転可能だ。
連れ帰った自分のアリは再利用でき、いらない絵柄のほかのアリは中央の牢屋に入れる。中央の牢屋にたまったアリは、そこまで行けば一度にまた連れ帰ることができるのだ。
重なっているアリでも、くっつきさえすればたった1匹で捕まえられる。一度にたくさん連れ帰れば、後れても逆転できるだろう。こうしてみんなが狙うアリのタワーはどんどん高くなる。「返り討ちにしてくれるわ!」誰が最後に連れ帰れるかで盛り上がった。
ゾロ目が出ると、バリケードを置くことができる。これでタワーになっているアリを封鎖し、その間に自分の巣から刺客を送るという方法もある。バリケードを解除して、見事逃げ帰るまでドキドキしっぱなし。
序盤は1〜2匹で安全に連れ帰る展開。だが中盤になると、アリのタワーがどんどん高くなっていく。1つ目のタワーは、全く取れていなかった私が獲得してみんなに追いつく。そのまま2つ目のタワーも取って一気に逆転といきたかったところだが、遠くから取りに来た鴉さんが執念で持ち帰り優勝。最後のアリのタワーは見ていて圧巻だった。
Formica
M.ローリガン、S.レイ/バンダイ・フキ(1987年)
2〜4人用、8歳以上、60分
絶版・入手難

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カラヤのスルタン(Sultans of Karaya)

寝返って間一髪
正体隠蔽系というジャンルがある。プレイヤーが自分の正体を隠し、相手の正体を推理によって暴いていくゲームで、『アンダーカバー』『汝は人狼なりや?』『お邪魔者』『シャドウハンターズ』『レジスタンス』など、傑作は枚挙に暇がない。お互いの顔色を伺いながら、嘘か本当か分からないことをしゃべりつつ、相手の正体を見極めるのは、アナログならではの楽しさがある。
『カラヤのスルタン』も正体隠蔽系だが、最大の特徴は、はじめに配られた自分のキャラクターを、ほかのキャラクターと交換できるところにある。キャラクターがめまぐるしく変わる中、自分の持っているキャラクターが有利か不利か、絶えず情勢を見極めなければならない。
メーカーはカナダのMJゲームズ。このところホビージャパンが、何かを見失ったかのようにおかしなゲームを発売するなあと思っていたら、ほとんどがここだった(『目には目を(Eye for an Eye)』や『ガラパ・ゴー!(Galapa Go!)』など)。リスクの高い未知のメーカーを扱ってくれるのは嬉しい。

カラヤのスルタン
キャラクターは8種類あり、スルタン側と反乱側の2陣営に分かれている。状況によってどちらでも勝てるキャラクターもいる。これを全員に1枚ずつ配り、テーブル中央に1枚だけ置いてスタート。自分の番にできることは、誰かのキャラクターを見るか交換するか。キャラクターを公開して、特殊能力を使えるものもある。
スルタンと守衛だったらスルタン側。たった1人しかいないスルタンは、公開中の反乱側を処刑でき、守衛は誰でも勾留(1回休み)できる。スルタンを公開して1周のうちに暗殺されないか、反乱を不可能にすれば勝つ。
暗殺者と奴隷だったら反乱側。暗殺者は誰でも殺害でき、奴隷は反乱を起こせる。見事スルタンを暗殺するか、反乱を成功(奴隷が3人以上隣り合う)させれば勝ちとなる。ただし、スルタンのとなりに守衛がいると、暗殺者は返り討ちにあって殺されてしまう。
このほか、裏向きで終われば反乱側、表で終わればスルタン側になる「奴隷監督」、その逆の「踊り娘」、隣の人が勝てば勝つ「役人」、予想を宣言して当たれば勝つ「占い師」がいる。それぞれ公開したときに、奴隷を捕まえたり、守衛をたぶらかしたり、誰かの特殊能力を強制的に発動したり、裏になっているカードを覗いたりといった特殊能力があり、思わぬ展開を生む。
キャラクターの種類は多くないが、特殊効果に絡みがあってちょっとややこしい。だが、何ラウンドかすれば、それぞれのキャラクターの振る舞い方が分かってくるだろう。ラウンドが終わったら、買った陣営に属するプレイヤーは得点をもらい、キャラクターを新たに配り直して次のラウンドを始める。45〜75分という所要時間は5ラウンド分で、1ラウンドは10分くらいで終わる。時間がないときは、2〜3ラウンドでも楽しめるだろう(そのつもりでいても、もう1ラウンド遊びたくなるものだが)。
9人でプレイ。となりに座ったdjさんのキャラクターを見たらスルタン。私は暗殺者だったので、殺す気満々でいたら殺気を感じたのか交換されてしまう。交換の直後、お互いに顔を見合わせて大爆笑。これを怪しんだ人から付け狙われることになった。それからも、何度か交換して爆笑ということがあり、楽しかった。最終ラウンドは、成功率が低い奴隷の反乱を成功させたが、それまでにコンスタントに得点してきたcarlさんとaveさんの勝利。あまりに楽しくて、帰宅後ポチってしまったdjさんのレポートはこちら
公開しているキャラクターが潜伏(皆が目をとじている間に裏にして交換)するまで、自分がもっていたカードを誰が取ったか分かる。そこで今、自分のキャラクターに勝ち目があるかどうかを推理する。そういった考える場面もありつつ、特殊効果の意外な展開に大慌てして、非常に盛り上がった。
Sultans of Karaya
A.ウェルドン作/MJゲームズ(2011年)
5〜15人用/12歳以上/45〜75分