お蜜柑様(Mr. Orange)
蜜柑を重ねて、踊って
分裂してしまった「大蜜柑教」の信者セクトとなって、ほかのセクトの教義を当てあうアクションゲーム。メインは、テーブル中央の「おざぶ」の上に乗せられた本物の蜜柑だ。これをどうするか、注意深く観察する。
1~3人でチームを編成し、それぞれ「教義カード」を引いてスタート。「教義カード」には、「お蜜柑様を3つ以上隣接して並べる」「お蜜柑様に手の甲で触れる」「お蜜柑様をおざぶの外に置く」といったテーブル中央の蜜柑をめぐる指示のほか、「鼻をつまむ」「人差し指で1秒以上×を作る」「『何』という」などといった盤外のアクションもある。
はじめはデモンストレーション。各セクト(チーム)の代表が、20秒の時間を与えられ、その間に自分たちの教義をさりげなく織り交ぜる。ほかのチームは注意深く観察して、出てくるアクションを頭に叩き込む。
これを全チーム行ったらいよいよ「祈祷」だ。再び20秒が与えられ、その間にほかのセクトの教義だと思われるものをどんどん盛り込む。このときも、自分たちの教義をきちんと入れなくてはならない。ほかのセクトの教義を入れていればお布施(得点)、自分のセクトの教義を入れ忘れたら失点。得失点は紙コップに入ったチップをやりとりする。順番を変えて2周するので、2周目は少し分かってくるかもしれない。3回戦でお布施の多いチームが勝利する。
フリーゼの『三戒(Die 3 Gebote)』では、全く何も分からないまま手探りでアクションを行っていたが、こちらでは少なくとも自分の教義は入れなければならず、制限時間が決まっているところでやることが限られ、当てやすくなっている。それでいて同じアクションをやっているつもりなのに片やOKで片やNGだったり、全く得点にならないアクションが何も分からないまま強調されていったりして笑える。
2人×3チームで30分ほど。蜜柑に向かって変なジェスチャーをしたり、大声で笑ったり、踊ったりと超怪しげ。その中でデモンストレーションを極力小出しにして、祈祷で相談しながらアクションを取り入れたぽちょむきんすたーさんと私のペアが勝利。激しく動くアクションゲームだが、冷静な観察力と判断力が求められるのだった。
お蜜柑様
かk/トロヴィ工房(2014年)
4~13人/16歳以上/40~60分
シークレットムーン(Secret Moon)
嘘もおしゃべりもない人狼
『ラブレター』のカナイセイジ氏が取り組んだ人狼系ゲーム。その特徴は、嘘をつかないだけではなく、基本的に喋ってはいけないという推理ゲームとなった。テーマは『ラブレター』を受け継ぎ、旅人と姫の逢瀬を、大臣と兵士が正体をつきとめて阻止するという内容だ。切れ味の鋭さは『ラブレター』そのままに、人狼系ゲームに新しい次元を開いている。
役職は、姫陣営として「姫」と「旅人」と「僧侶」が1人ずつ。大臣陣営として「大臣」が1人と「兵士」4人。これらをシャッフルして配る。姫陣営の目的は最後まで正体がばれないこと、大臣陣営は「姫」と「旅人」の正体をつきとめることである。最初に全員が目を閉じて、「姫」と「旅人」がお互いを確認したらスタート。
毎ラウンド、行動順カードが配られ、その番号に従ってコールされた人が手番を行う。手番には、誰かの人物カードを見るか、誰かに何者か質問するか、誰かの人物カードを当てに行くか、カードをタップして指名されないようにするか、誰かを一回休みにさせるか、正体が当てられて表になっているカードを攻撃するか、パスして次のラウンドの早い手番を取るかの7択。結構多いが、その選択肢は全て行動順カードに記されている。
ゲームは3ラウンドしかなく、最後までいけば姫陣営の勝利となる。その前に、「姫」と「旅人」の両方が当てられて公開されるか、「姫」が公開された上に攻撃されるかすれば大臣陣営の勝利。また、その前でも逆に「大臣」が公開された上に攻撃されれば姫陣営が勝つ。
第1ラウンドは、カードを見るか質問するかしてお互いに正体を探りあう。質問では、「姫」と「旅人」が無言で答え、「大臣」は「馬鹿もん!ワシは大臣じゃ!」と答え、「僧侶」と「兵士」が「やあ、ご同輩」と答えることになっている。つまり質問では大臣以外、完全に特定できない。特に敵陣営に紛れ込んでいる「僧侶」がポイント。
第2ラウンドくらいから人物カードを当てに行ってゲームが動く。当てに行って外れると自分の人物カードを公開しなければならないが、「兵士」は正体がバレても痛くないので当てずっぽうでいく。当てずっぽうなので味方の大臣を指名してしまって「馬鹿もん!ワシは大臣じゃ!」と怒られることも。早ければ第2ラウンドで正体がバレて攻撃され、ゲームが終了する。
第3ラウンドまでもつれこんだときは、やるかやられるか、手番順が重要になる。そのため第2ラウンドでパスしたり、カードをタップして防御したり、一回休みにさせたりといったそのほかのアクションが取られることになる。勝敗は一手差であることも多く、その悔しさについ「もう1ゲーム!」と言いたくなる。
7人プレイで6ゲーム。1ゲーム10分もかからないので、ついつい何度も遊んでしまった。7人だと人物カードの1枚が誰にも配られないので、「姫」か「旅人」のどちらかがいなかったりして展開が大きく変わる(最初の確認で相棒がいないことが分かったときの寂しさ!)。当てずっぽうで行くときの運の要素もあるが、誰がどれを見ているかという情報(チップで示す)に基づく推理や、手分けして敵をあぶり出す無言の協力の妙もあって楽しめた。喋ってはいけないというルールだが、その分ゲームが終わった後の会話が盛り上がった。
Secret Moon
カナイセイジ/カナイ製作所(2014年)
5~8人用/10歳以上/10分
すごろくや:Secret Moon