卓上ゲーム専門店ジョイフルハイパー

ジョイフルハイパーは秋葉原のパソコンショップ「サウスウィンド」の1コーナーで営まれている卓上ゲーム専門店だ。昨年9月にオープンしたばかりだが、豊富な品揃えと在庫管理・決済システムが整った通販、そして値引きとキャンペーン攻勢で多くの愛好者を獲得しつつある。そこでボードゲーム担当の望月さんと長谷川さんに躍進を続けるお店の秘密をインタビューした。

個人の趣味から出発

中央にあるパソコンの周囲で確実に増え続けているボードゲーム群

まず誰でも疑問に思うことがある。パソコンのお店がどうしてボードゲームを?
それは会社の経営戦略でも何でもなく、担当者・長谷川さんの1ユーザーからの出発だった。

長谷川:すごくお恥ずかしいお話なんですけれども……去年の4月頃に、家でバンカーズとか億万長者ゲームが発掘されたんです。子どもの頃遊んでいたのが引越しの片付けで出てきて、ああ懐かしいなと。それを見て、昔はこういうのいっぱいあったな、今でも買えるのかなと思って、ネットのオークションで「パーティージョイ」とか「ボードゲーム」なんかを検索しました。するとドイツのボードゲームがいろいろ出てくるじゃないですか。で、何だこれは?ということになりまして。最初は毛嫌いしたんですよ。ドイツ?日本語じゃないの?っていうような。それで最初は読み飛ばしていたんですけど、どこいってもドイツドイツドイツって言われているのを見まして、何だこれすごい流行ってるのかな?知らないところでこんな流行ってるゲームがあるのかな?って調べ始めたのがきっかけです。

ウェブで見ていて、おしゃれだな、こういうのって日本じゃ作れないよなというのがまず最初の印象でした。どちらかというとキャラクターものになっちゃうじゃないですか、日本って。そんな中でああいったものは新鮮だったんです。

それからいろいろ調べているうちに、どこで買えるんだろう?っていうことになったんです。そのときメビウスゲームズさんとか、バネストさんとか知らなかったものですから、まずヤフーオークションとかで調べて、若干出てくるかなぐらいですよね。タイトルを見て、そのまま検索していたものですから、調べ方にも問題がありました。じゃあ楽天は、あそこなら何でもあるはずと思っても何もないんです。

じゃあどこで買えるんだろうって調べて、メビウスゲームズさんやバネストさんは知ることができたんですが、自分が働いている秋葉原だったら買えないのかなあと思って絞って探し始めたんですよ。すごいいろんなところを見て回って、まあ隣にあるんですけど、全然気づかないでいろんなところ見て回ったんです。「ホビー」とか書いてあるようなところは片っ端から入ったりとか。ネットでも見たんですけど、情報ありませんし。隣以外のあらゆるところ行ったんですよ。それであきらめて帰ってきたときに、あれ隣にイエローサブマリンあるじゃんって(笑)。そんな苦労してようやく買って、仲間内でやってみたら面白かったんです。それで趣味としてだんだんはまって、3本4本買うようになって、それが4月の頃です。

6月ぐらいに、最初自分は買うの苦労したっていうのがありまして、そのときもうはまっちゃってますから、これは絶対ウケるんじゃないかという考えになりまして、自分の店で扱って、自分が探した楽天とかに出したらどれぐらい売れるんだろうと思い始めて、そのまま突っ走って9月にオープンというわけです。

スタッフの理解をとりつける

しかしパソコンとボードゲームでは業種があまりにも異なる。他のスタッフは反対しなかったのだろうか?
長谷川さんは同じフロアで働くスタッフにボードゲームを遊んでもらいながら、理解をとりつけていく。ボードゲームというだけで拒絶反応を起こす人もいることを考えれば、そういう文化発信の地である秋葉原の地の利も手伝った。

長谷川:……(苦笑)。まあ最初は、ボードゲームって聞いても出てくるものってモノポリーとかそんなものじゃないですか。そんなのは売れるのっていう反応がやっぱりほとんどですね。同じ店舗のスタッフは事前にこんなのがあるんだよ、一緒にやろうって仕事終わってからやったりしてたんで、理解は結構得られてはいました。面白いというのもそうですが、最初手に入らないで苦労したっていうのを周りも知っていましたから。全くみんな分からない新しいジャンルっていうことで、あと秋葉原っていう場所柄もありますし、こういうの、まァウケるんじゃないのかなと。ですんで全く未知数だったんですけど、やれることはやろうみたいな。そこでムリヤリ企画書を出して、正直ストップかなり食らったんですけど、でもやってみてダメならやめればいいみたいな軽いノリでスタートはしましたね、何とかムリヤリですけど。

もともと通販はパソコン関係でやってますし、材料は揃っていたんです。ホームページとかも持ってますし。あとはそれに商品の知識と在庫があればいいだけですから。そういった意味では0からのスタートではないんです。もともとパソコン屋として動いているところに別の商品を追加しただけですから、言ってしまえば。

でも取扱商品はPDAとかパソコン関係だけでして、パソコンから全くかけ離れているっていうのは自分の知る限りでは初めてじゃないでしょうか。理解は全然得られなかったというか、まだ得られてないです、正直申し上げると。けっこう肩身が狭いです(笑)。

直接の担当は私と望月の2人ですが、ブログやネタコンテンツ、やたらガイスター登場するアレですね、そういったものはスタッフがそれぞれ手伝ってくれてます。店舗スタッフの理解はそれなりにはあるんですが、どうしてもやはり事業性とか、数字ばっかり見られてしまいますと……300個、400個売れたとしても、パソコンと比べれば単価が低いですから、ボードゲームに5時間使うなら、同じ5時間をパソコンに使った方がいいんじゃないかってどうしても言われます。それはしょうがないです。一生言われるでしょう。同時にやっている限り。

それはさておき、完全に趣味から始まったんです。お恥ずかしい話。まるでほんとうに計画性がないんですね。スタートから、やってみようよっていう軽いノリで始めましたから。

マーケティング

思い付きで始めたとはいえ、ジョイフルハイパーの営業は決していい加減なものではない。開業にあたってはマーケティングを行い、事業として成り立つかを調べている。もっとも、その原動力はボードゲームへの情熱だった。

望月:企画書を出すにあたって、会社に説得の資料を出す必要があるわけです。尻すぼみの業界だと明らかにわかっているものに対してはやはり投資できませんので、多少なりともお金を使う限りは。いろいろ調べたんですが、まず流通ルートですね。輸入ゲームがどういうルートで流れてきてどうやってユーザーのところにいくのか。下から調べていく方法もありますし上から調べていく方法もあります。下というのは実際のお客様の立場からどこに行ったら買えるのか、例えば東急ハンズならそれはどういうルートで仕入れているのか。そこが二次店なら一次店はどこかと。でも元はあまり広くないというのが正直なところで、一部のところに集約されていました。個人で若干輸入されている方がいてもそれは自分の分と友達の分ぐらいで、卸で輸入されているのは数店に絞られるということはだんだん分かってきました。

市場規模に関してはほんとうに難しくて玩具業界からも情報の提供はしてもらったんですけれども、トレーディングカードゲームが大きいものですから、別に資料ってないんですよ。だから実地資料として何店舗を調べて、どれぐらいの数が出るのか教えてもらったりとか、動きを見て1ヶ月あたりにどれぐらい売れているかを推計したりして作りました。まあ、もともと動機が不純なものですから情報操作になってしまったかもしれません(笑)。いわゆるマーケティングというと、面はゆい感じです。規模が小さいんで見えやすいところもあるのですが。大手玩具メーカーさんならもっと潜在ユーザーとか調べているでしょう。

一人二役で

そしてオープン。しかし担当者はボードゲーム専門ではなく、パソコンの本業の上でボードゲーム販売をするという一人二役をこなさなければならない。しかし長谷川さんは何のその、ボードゲームへの情熱が後押しする。

長谷川:ホームページのコンテンツもだんだん増やしてきましたが、仕事の時間内だけでは無理ですね。今自分の思い入れが強いんで、ボードゲームに比重をかけちゃうんですよ。そうなると今までやって来たパソコンの業務がおろそかに……そこら辺がつつかれますけど、こちらを見ていないと、正直言って自分以外に見れる人がいないんですよ。そこら辺のバランスが難しいですね。ボードゲームのほうが片手間です。日によってばらつきがあるんですけども、本業とボードゲーム販売の割合は7:3か6:4ぐらいですかね。こっちばっかりやっちゃうと、言われてしまうんで。

仕事を家に持ち帰るのはボードゲームだけですね。パソコンは持ち帰んないです(笑)。家では、この世界を知ったのが去年の4月で圧倒的に知識が足りないんで情報収集とか、あとは他店さんの情報をチェックしたりとか、発注の指示を家から出したりとか。家にいると何が売れたか休みの日とか不安になんですよ。1個1個の商品のページを開けて、在庫が少なくなってる、これ発注しなきゃダメだなんて。

安く、多く

この夏のキャンペーンは10%の買い物券だった

ジョイフルハイパーの品揃えは、メビウス、バネスト、アークライトなど、国内のボードゲーム流通ルートを広くカバーしているだけでなく、ゲーム好きがニンマリするような組み合わせになっている。それに加えて価格も他店より数百円安く、魅力的だ。これは後発の新規店の販売戦略である。

長谷川:何をどれぐらい入荷しようっていう方針はないんですよ。ただ気にするのは前評判、メビウスさんのところであれば頒布会で事前に出ますから、そこの情報が出ていればそれを参考に。あとはだいたいがカッコよくいうと直感。まあテキトーですよね。タイトルを見て、案内を読んで、自分で見て面白そうだと思うかどうか。あといろいろな場面を想像してこれはファミリー向けで子どもとやるところとか、ワイワイ10人ぐらいで集まれるようなところとか、そうやってイメージが湧くようなものはわりと厚めに取るようにしています。これってどうなのかな、どんなときにやればいいのかなと、自分でも分からないようなものは怖いんで抑えてはいますけど、結構ハズします(笑)。5本発注してすぐなくなったどうしようみたいな。

でも、一応手当たり次第は手当たり次第です。アイテム数をとりあえず増やすのを目的としていますから、今は。自分も知識があまりないというのと、新しくできたショップで、しかも直接輸入して和訳をつけて売っているわけではないですから、目新しさが全くないんですよ。ですので、あるものをできる限り集めて、ここに来れば買えるというようにしたいと。

価格を下げるのも先ほどのお話なんですが、後発の店舗ですので知名度がほしいんですよ。ボードゲームが買えるところはどこ?っていうときにジョイフルハイパーも入れてもらいたいなと。ですので、どうやって印象づけるかっていうときに、アイテム数を増やすというのがありますが、それは最初からできませんから、それなら価格に差をつければっていう考えなんですけれども。それでほんと若干なんですが割引をさせてもらっています。割引については仕入元には承諾をもらってます。

セールやキャンペーンも苦し紛れのところもありますが、売り上げを伸ばすにはどうすればよいか、来て見てもらうにはどうすればよいかというのでやっています。正直苦しいところではありますが、薄利多売です。ボードゲーム単体ではお店はやっていけませんよ。

望月:最初に認知度を上げてしまおうということで。どれぐらいパイがあるかといったとき、ひとつには層を増やすこと、お客様が広がることが商売をやっていく上では大事なことですが、パソコンなどと比べるとボードゲームの層は決して大きくないわけですから、こちらから提供できるものをどんどん提供して、まずは知っていただかないとということです。少ないお客様を取り合うようなことはあまりしたくないんですが、できるだけいい条件で買って頂くようにするのが、思い上がった言い方になりますが業界のためにもなるのかなと(笑)。

キャンペーンに関してはボードゲームが趣味のもので、パソコンのようにお仕事にどうしても必要などということは決してないですから、のんべんだらりとやっていても何かきっかけがないと買うかっていう気持ちになかなかならないだろうなと思いまして、そういったニーズを拾いたいっていうか探して取り上げたいというイメージです。

ずっと長いことやってこられた方がずいぶんいらっしゃると思うんですよ。ぽっと出の新参者がいろいろなことをしてもコアなユーザーさんからどう思われているのかって、気にならないわけではないです(笑)。何とかこっちを振り向いてはもらえないものかと考えまして、まだまだお客さんの方が詳しいですけどね。

秋葉原を生かす

ボードゲームの購買層はここでも他店とあまり変わらない。だが通販よりも直接立ち寄って買っていく人が多いのは秋葉原のメリットだろう。

望月:お客様は20~30代の男性、可処分所得がそれなりにある方、一言でいうとオタク層とだいたい重なるかと思いますが。あと意外にお子さん連れのご家族がいらっしゃいます。潜在ユーザーとしてはそちらなのかなという気がしています。小さいときから親しんでいけば層が広がるでしょうから。

ただ単価の高い商品となると、ある程度年齢層の高いものとか、コンポーネントにお金がかかっているものになりますので、購買層もある程度遊んできて、投資する金額が多い方になるでしょう。そういう方向けの商材がどうしても多くなる傾向にあるかもしれませんね。我々が仕入れているのではないので、日本に入ってくるものがそうなのかもしれませんが。

通販と店舗の割合は、半々ぐらいです。買った個数で言うと通販のほうが多いかもしれませんが、受注件数でデータを取ると半分は店頭の方です。秋葉原という場所柄でしょうか。

細かな配慮

(写真上)ひとつひとつ付けられたラベルには細かいデータが記されている。
(写真下)ノリで作ったというお買い物カゴ。こういう細かいネタも楽しい。

ゲームを売るための工夫として、ボードゲームに1つずつ簡単な紹介をつけたタグを貼っている。これで未知のゲームでも手に取りやすい。こういう細かい配慮も、愛好者には嬉しいところだ。しかし次々と新作が発売され、古いものはなくなっていくという回転の早さが今のボードゲームの趨勢。それに対応するのは容易なことではない。

長谷川:ラベルつけているのは、他のスタッフが全然わからないんで、名前がついていないと伝票打てないんです(笑)。それが一次的にはありますが、プレイ人数と時間っていうのをどうしても出したかったんです。買うとき絶対見ると思うんですよ。いちいち箱の裏とかマニュアルを見るよりも、ぱっとみて2人用、2人用、2人用って探せるほうがいいなと。

望月:ウェブに五十音順・年令順に乗っけて、それに即している状態なんで、だったらそれをそのまま使ったほうがよかろうというのもあります。

長谷川:作るのは流れ作業です、その辺は。新しいのができて、追加して、印刷してラミって切ってと。

望月:流れ作業と言っても2人でやってるんですけどね(笑)。最近はほかのスタッフにも少しずつ。我々もそればっかりやっていますと、本業が別にあるといったらファンの方に申し訳ないんですが。

商売は楽じゃない

たいへんなことは在庫管理だという。都内の一等地にあるためスペースが限られている中で売り切れを出さないように気を付けつつ、かつ余剰もないような状態にキープするのは一番気を使うところだ。またゲームの知識がないことや、本業とバランスを取ることもやっていく上でたいへんなことだという。

長谷川:ボードゲームって、スペースけっこう食いますからね。本来パソコンがあったスペースに、ボードゲームがどんどんどんどん積まれていって、パソコンの置くところがなくなるとほかの部署からクレームが……。

望月:当然、社内営業という意味においても我々だけでやってるわけじゃないので、スペースって坪単価いくらというものですから、在庫圧縮が必要なんです。どこの業界もそうだと思うんですけど、最低限以上の在庫はもたないで、お金でもっているほうがよいわけで、商品にかえちゃうとあまりよろしくない。ボードゲームは細かいものですし、ジャンルが登録されている商品ではないですからたいへんですね。

たいへんなこととしては最初に覚悟はしていましたが、ボロ儲けでは全然なかったですね。知識が後手にまわっているものもあるので、昔のバージョンはこれで今のバージョンはこれとか。我々が新参者のためにですけれど、総合的な情報がよく分かっていないときがありますかね。でもお客様のほうからご指摘いただいて、同じ商品でも違うメーカーがあるなんて知らなかったものですから、「どちらですか?」なんていうときに「どちらって何?」(笑)。最初は知らないものですから、社内で勝手に型番つけると拡張セット1が2になって、2が3になってと一個ずつずれたり。そういう分かっていないために生じているロスがあるのかなと。本国ではどういう流通のさせ方をしているのかとか、あと他店はどういう棚卸・在庫管理をしているのかと、私は非常に興味があります。
あとは本業との兼ね合いですね。余力でやらなくてはいけないんですけど、余力でやるにはエネルギーも頭も使うというか、集中力が要りますね。まあでも好きでやっているというのがあって苦にならないというのはあると思います。

趣味と貢献と

原則として1タイトル1個だけを展示し、残りはかげにしまってある。

担当者のお二人とも趣味が嵩じてボードゲーム販売をするようになったというが、しかし趣味だけでは商売にならない。商売としてやっていくためには、したたかな戦略と絶え間ない努力が必要だ。それは社内のことでもあり、社外のことでもある。
今の売り上げは会社としてまだまだ満足できるものではない。望月さんはボードゲームの世界一般への貢献を自分に言い聞かせて自分を奮い立たせ、長谷川さんは自分の趣味を生かす道を探る。

長谷川:スタッフで遊ぶのは週1まではないですね。仕事終わってから終電まで。プライベートでは月1で、サークルに参加とか。情報収集もありますが、趣味ですね。

望月:趣味です。私はサークルに参加していないので、知っている人に声かけて集まったりとか。あまり難しいものはやりません。できないから。自分が勝てるやつ(笑)。ただ意見は参考になります。私が思っていたよりも面白がってもらえるとか、子どもには無理だろうと思っていてもできるとか、日本語かいてないけど楽しめるとか、そういうのはやってみて初めてわかります。だいぶ敷居は下がりますね。

在庫管理で社内でもめなくてもいいようにはなりたいと思うんですけど。会社の方針によって業態を大きくするか小さくしていけるかを判断しなくてはいけないので、我々がやりたいからというだけでは続けていけないのは正直事実です。お客さまあっての商売なので、折角買ってくださるお客様のためにもできるだけ継続してやっていくには効率化もはからなければいけないし、個人で好きでやらないとやっていけないのは今のところ仕方ないんですが、事業体として成立するような規模にはしていきたいなと。最低でももっと売れないと継続できないと思っています。

今後は我々のもってるソリューション、といったら大げさですけども、例えばコンピュータの話なんですがうちは大きく商売を行って、個別に対応していくというところが得意なんですけれども、そういう風なやり方を入れていくとか。ひとりひとりのお客様のニーズってそれぞれ別だと思うんですけど、それに対応しつつ、しかも事業として成立するようにやっていきたいなと。そうしないとうちも薄々見えてきているんですが、仕事終わった時間にやってるような店なんで、事業として継続性がないんですよ。長谷川は7:3と言いましたが、本来10やる仕事を10をやった上でプラス・オンでやらなきゃいけないんです。そうじゃないと社内で認められないです。でも、それだと事業として成り立たないと思うんですよ。

私たちがこれをやって取扱高を増やしていって、ユーザーさんがそれによってどんどん増えていくことが社会貢献だと私は思っています。だから我々の規模がもっとどんどん大きくなることが社会にとって必要なことだ、と自分に言い聞かせて(笑)。

長谷川:自分はそんな大きいこと全然考えてないです。そういうのはお任せします(笑)。

望月:でも始めたからには責任があるので続けたいと思うんですが、続けさせてもらうためには、もうちょっと規模を大きくしないとまずいなと。だから裏切るようなかたちにならないよう、できるだけ続けるように努力はしますが、いかんせん勤め人の悲しさで(笑)、わかりました私がこれを独立して始めますというまでは会社におんぶにだっこするところもありますので。

希望としては、大きくやって大きく儲けたいというのがありますから、1フロア全部とか、プレイスペースとか置きたいです。ただ並べとくだけじゃなくて、人が集まって、情報提供もしたいですし。

まずは目先の売り上げを上げていかないと事業性を問われるってことですね。うまくまとまりませんが。

採算や事業性を考え、全体を見て行動しようとする上司の望月さん。ボードゲームへの情熱を惜しげもなく注ぎこむ部下の長谷川さん。自転車の両輪のようにうまくかみ合って、楽しいお店ができていた。
まだまだ趣味として一般的でないボードゲーム。ジョイフルハイパーがどう立ち向かっていくのか、これからの動きも注目される。そして今後、ジョイフルハイパーをひとつのモデルとして、本業の片手間としてでも地方の都市にもこうした専門店開店の動きが出てくることを期待して止まない。

2005/8/25 (C)Table Games in the World

※ジョイフルハイパーは2006年10月末日をもって営業終了となった。理由は明らかにされていないが、ジョイフルハイパー店員の本業でPC関連機器を販売するハイパーファクトリーのJASDAQ上場に伴って、会社全体で経営の見直しが図られたのではないかと推測されている。残念なことであるが、ボードゲームを全国に供給した功績は愛好者の胸に刻まれるだろう。