ドミニオン的なカタン
昨年15周年を迎え、ボードゲームの古典となりつつある『カタンの開拓者たち』。作者のトイバーと、メーカーのコスモス出版(ドイツ)は、新版や記念版を製作する一方で、トレンドに合わせたカードゲーム版を作り直している。昨年の秋に発売した2人用の『カタンの領主たち(Die Fürsten von Catan)』と、今春発売予定の『新カードゲーム(Das schnelle Kartenspiel、スピーディなカードゲーム)』である。
スピーディといっても、作りはタイルやコマのないスタンダード版といった趣で、30分は優にかかる。資源を交換して、建物を作り、勝利点が合計10点になったら勝ちという路線はそのままに、『ドミニオン』的な要素を取り入れてトレンドに呼応し、遊びごたえ十分。2〜4人と幅広い人数に対応しているのも嬉しい。
手番には、手札の資源カードを、場札・山札・ほかのプレイヤーの手札のいずれかと交換する。交渉はなく、ほかのプレイヤーと交換する場合は、ランダムに1枚引いて1枚返すので気楽である。
コストカードに示された資源が集まったら建設。建設できるのは街道、騎士、開拓地、都市、都市の拡張の5種類で、それぞれカードを自分の前に並べるという仕組みである。都市は開拓地を裏にし、都市の拡張は都市の上に置くので、開拓地→都市→都市の拡張という順序で成長させなければならない。
建設が終わったら、山札から資源を補充して終了。建設したものには勝利点マークがあり、これを最初に10ポイント集まったら勝利となる。
建設すると勝利点だけでなく、特殊効果も得られる。街道は交換の枚数を増やし、騎士は補充の枚数を増やす。都市にすると、手札制限がかかったり、場札が全交換になったりする。都市の拡張は何種類かあり、資源を1つジョーカーにできる大学、ほかのプレイヤーと交換するときオープンにして引ける図書館、自分より勝利点の高いプレイヤーから資源を奪うギルドなど、ゲームを有利に進められるようになる。
街道と騎士は効果だけでなく勝利点にもなるが、枚数が少なめで、ストックが切れてから建設すると、となりの人から奪うことができる。奪う対象は「運命カード」の矢印で決められているので迷わない。
このように、2〜4人というプレイ人数の幅広さ、選択自由で持続的なカードの効果といったドミニオン的な要素を取り入れ、交渉や直接攻撃をなくしてマイルドにしたカタン。ゲームの準備も容易で、カードゲームプレイヤーにもウケそう。カタンファンには、スタンダード版と変わらぬセットコレクションの楽しみを味わわせてくれ、小箱サイズなのでコストパフォーマンスも抜群。シリーズナンバーワンといえるくらいの見事な出来栄えである。
Die Siedler von Catan – Das schnelle Kartenspiel
K.トイバー/コスモス出版(2011)
2〜4人用/8歳以上/30分
ジーピーから日本語版が発売予定