1票の相場は5億円
吉田茂から石破茂まで、9つの時代(ラウンド)にわたって自分に割り当てられた人物に票を集めて総裁を目指す。社会派ボードゲームデザイナー、北条投了先生の昨秋の新作。票の売り買いは億円単位、交渉自由、特殊能力や政局カードによる逆転(またはお金を払っての阻止)もあり、3時間かかったけれど最高に楽しめる。
毎ラウンド異なる登場人物の山札から1枚ずつ引き、自分の担当する人物が割り当てられる。人物によって力の差があるため、気に入らない場合は他プレイヤーに押し付けてもよい。とはいえ、総裁になるには実力以上にカネが必要で、総裁にならなくてもキャスティングボードを握ることによって十分に戦える。
幹事長役のプレイヤーが順番に名前を読み上げるので、担当している人物が読み上げられたら人物を公開して手番を行う。手番には、人物カード効果・イベントを発動させ、いずれかの総裁候補に投票する。このとき、自由に交渉して金銭を授受できるところが面白いところで、告発などの効果を使わないための口止め料だったり、1票を買いつける競りになったりする。「これで私を首相に!」「そんなはした金、受け取れませんな」みたいなやりとりが楽しすぎる。票を集めても、「浜田幸一」「五人衆の会合」などの政局カードによるどんでん返しも起こるので安心できない。
こうして全員の手番が終わったら得票数を合計して総裁を決める(同数なら名声値、それも同じなら後手番を優先)。総理になると大きな名声が加わる。これを9ラウンド行ない、人物の名声、派閥を多く集めるともらえる派閥ボーナス、お金1億円につき1点を加えて勝敗を決める。
交渉ゲームのため、9ラウンドが公称60分で終わるはずもなく、しかも終わってからも興奮の感想戦が続いた。私は吉田茂・田中角栄・中曽根康弘を引いたが生かせず、総裁になれたのは小泉純一郎で1回のみ。しかし2大対立候補のキャスティングボードになって、総裁の名声に匹敵する大金をせしめたり、趨勢を見て鞍替えすることで票を2回売ったりできた。第9ラウンド「時代は誰を求めるか」では、親子3代パワーをもつ河野太郎に小林鷹之が票を売り、その票を石破茂がまとめて買い取ろうとしたが一票及ばず、高市早苗が薄氷の勝利を収めたが、一番儲けたのは高市を担ぎ出した岸田文雄だったという、本当にありそうな(?)展開となった。ボックスパッケージでの再版希望。
ヒストリーオブ自民 シゲル疾風編
ゲームデザイン:北条投了/芸無工房(2024年)
2~6人用/60分
通販:ディスカバリーゲームズ