ビールを配達するまでの長い道のり
1850年頃のドイツで、アルトビアしか作れないビール醸造所を発展させ、さまざまな注文に応じて出荷し、名声を競うワーカープレイスメントゲーム。2018年に設立されたドイツのボードゲーム出版社の作品で、今年ドイツ年間エキスパート大賞の推薦リストに選ばれた。
メインアクションを行う経験値付きワーカー、メインアクションに付随してボーナスアクションを行うミニワーカー、次ラウンドの手番順を決めるワーカー、自社内で工場管理を行うワーカー、配達などを担当するトラックと、ワーカーが5種類いて、それぞれ置けるアクションスペースが異なるのがこのゲームの特徴。これによって優先順位の整理がしやすくなっている。
最初はアルトビアしか作れない。それ以外の5種類(ピルス、エクスポート、ラガー、ストロング、ヴァイツェン)の製造ラインをアンロックすると醸造できるようになる。醸造アクションでダイヤルが製造ラインに置かれ、回転アクションでダイヤルを回転させ「0」になるとビールが完成する。完成したビールは地下貯蔵庫に置かれ、樽アクションで用意した樽に詰める。手札の注文カードに指示されたビールが揃ったらトラックで出荷アクション。これでようやく勝利点が入る。他にも細かく点数を稼ぐ方法があり、誰かが20勝利点になったラウンドでゲーム終了となり、最終的な勝利点で勝敗を決める。
最初の注文を満たすまでが長く、数ラウンドはほとんど得点が入らないが、中盤から工場の改良が進み、より早く醸造し、より多くの樽を用意できるようになるので、どんどん得点できるようになっていくのが気持ち良い。
ワーカーについている経験値と、アクションスペースの数字を足して「6」以上だとボーナスアクションができる。ワーカーの経験値とボーナスアクションはそれぞれアップグレードできるので、1ラウンドでできることが増えていく仕組みだ(ワーカーの経験値をアップグレードするのは、正確には有能なワーカーを雇用し、それまでのワーカーを退職させることを指す。それまでのワーカーには地下貯蔵庫の整理をさせる。世知辛い)。
次ラウンドの手番順を決めるワーカーにもアクションがあり、効果が強いものほど次ラウンドでの手番順が下がる。カード1枚をもらうだけなら必ず次のラウンドで1番手になれるが、中立のワーカーを取って追加アクションをすると最後手になってしまう。
手札から出すカードはマルチユースになっていて、ダイヤルの回転数や樽の調達数を累積的に増やす緑エリア、注文で使う紫エリア、特殊能力で使う白エリアがある。どれとして使ってもよいが、3エリアのうちいずれか1つでしか使うことができない。紫としても白としても使いたいカードが来ると悩ましい。
「同じ種類のビールを3つ醸造する」「4種類のビールを醸造する」など、早取りで勝利点が入るボーナスでは競争があるが、ワーカーの種別が設けられていることで、ワーカープレイスメント特有のブロッキングは緩めで、ほぼ計画的に醸造を進めることができる。それゆえ無駄を排した効率性が問われ、フリーク好みの作品となっている。そしてゲームが終わるとドイツビールが飲みたくなっているのは、暑さのせいだけではないだろう。
Bier Pioniere
ゲームデザイン:T.シュピッツァー/イラスト:H.リースケ
シュピールファイブル(2023年)
2~4人用/12歳以上/75~100分