ゲームマーケット2025春レポート(会場編)

5月17日(土)と18日(日)の2日間にわたって、千葉・幕張メッセにてゲームマーケット2025春が開催された。出展団体1187、来場者のべ27000人はどちらも歴代2位の記録である(出展団体は2024秋の1219団体、来場者は2019秋の29300人が1位)。会場を東京ビッグサイトから幕張メッセに移して2回目、27000平方メートルの会場が愛好者の熱気に包まれた。

幕張メッセは千葉市美浜区にあり、東京駅から京葉線で直通で行ける。ただし東京駅の京葉線ホームまで他の電車のホームから10分、さらに最寄り駅である海浜幕張駅から15分歩くので、ボードゲームを買い込むと移動がきつい。しかも1日目の午前は雨で、2日目は気温が上がって蒸し暑い。2600部の早期入場チケットを購入した来場者の多くは傘をさして開場を待った。

会場までは屋根などがあってほとんど傘なしで行ける
開場を待つ早期入場チケットの来場者

午前11時、開場のアナウンスとともに、来場者が入場スタート。会場となった5・6番ホールと7・8番ホールを隔てる通路からの入場のため、早期入場の来場者は左右に分かれ、10分もかからずに全員が入場できた。会場限定、先行販売、少部数制作などのところに長い行列ができる。

約1200という出展団体数は、エッセン・シュピールの950団体を軽く超える。ブースは細かくジャンル分けされていないため、2日間で全部のブースで出展物を見て回るのは事実上不可能だ。そのため来場者は(特に早期入場の場合は)、事前にカタログやウェブで情報を集めてくる。出展者も(特に初出場の場合は)、事前告知が売上を大きく左右する。

左側の7・8番ホール、右側の5・6番ホールにわかれて入場する来場者
5・6番ホール(日曜の開場直後)。アークライト周辺や、人気サークルに長い行列ができた
7・8番ホール(土曜の午後)。5・6番ホールと照明の色が違って明るい。こちらのほうが涼しかったという話も

ブースは長テーブルだけで出展するインディーズメインの一般ブースと、一定の広さで出展する企業メインのエリアブースがある。5・6番ブースも7・8番ブースも、一般ブースを囲むようにエリアブースが配置されており、通路も広く、(壁に面してしまったチャック横丁の外側を除いて)導線がよく考えられていた。

独自の飾りつけで目立ったエリアブースから見ていこう。

Engamesは大阪万博風のドームを設営。実は段ボール箱でできている
親会社の動向が心配されるCMONジャパン。大変な時期だからこそお客様ファーストでいきたいという
街コロ 新装版』を拡張込みでリリースしたグランディング
ittenは15分で遊べる野球ゲーム『ヒット&アウト』をリリース
海外への展開を進めるSaashi & SaashiのSaashi氏。新作は『祝宴の夜に』
オインクゲームズの佐々木氏。フェデュッティと一緒にデザインした『ウナギかヘビか』などを先行販売
アメリカから出展したallplayはゲームマーケットに合わせて6タイトルの日本語版を発表
タンサンが企画した「着るボドゲ展」。謎解きアパレルブランド「トキキル」のブース内で、布片を貼り付けたり、書き込んだりしてゲームが遊べるTシャツが販売されていた
海外の出版社のボードゲームをいち早く輸入して販売するゲームストア・バネスト
サニーバードは各トリックのリードカラーがわかっている中で順位を予想するトリックテイキング『七つの予言』を先行販売
ジーピーは昨年のエッセンの話題作『ギャングポーカー』日本語版をポーカーテーブルでデモプレイ
JELLY JELLY GAMESは韓国の協力パズルゲーム『クワイエットハウス』を先行販売
ボードゲーム関連グッズのクリエイターが共同出展する「十華祭」。今年の目玉はボードゲームをモチーフニしたカンザシ
箱無しでチャック袋に入れたゲームを少部数販売する「チャック横丁」。通路側と壁側の格差を感じる

一般ブースも注目のブースが目白押し。なお出展されたゲームのレポートは「ゲーム編」として後日公開する予定。

カワサキファクトリーは『カルタゴの貿易商』をリメイク
名古屋での高い評価を受けて大箱に挑戦したごみ国際(広島)
シンキングファクトリーは人気ゲームのゲームを遊びやすくするオーバーレイや、収納しやすくするインサートケースを出展
海外ゲームの日本語版と思えるようなグラフィック・コンポーネントのロンデルゲーム『Sprit Path 魂の通り道』を出展したレイクインザゲームズ
陽岳寺不二の会は20人までプレイできる仏教テーマのマダミス『涅槃に入る』をリリース

7・8番ホールの4分の1はステージ、フリープレイスペース、フードコーナーになっている。フードコーナーではキッチンカーが入り、行列ができていた。メッセ内のコンビニでも食料は調達できたが、キッチンカーも値段はそれほど高くなく、熱々で美味しい。

ずらっと並ぶキッチンカー。1日目は長崎角煮バーガー、2日目は肉巻きおにぎりを食す

スペシャルステージのゲストはポルトガルからV.ラセルダ氏。『蒸気の時代』のポルトガルマップをBGGにアップロードしたのがデザインの始まりで、『ヴィニョス』でデビュー。超重量級のボードゲームを発表しているが、複雑にすることを意図しているのではなく、無意味なアクションがないゲーム、手番が次につながるゲームを目指しているという。『カンバンEV』に登場する工場長サンドラは奥様の名前。好きなデザイナーは歴史とゲームデザインを結びつけるウォレスと、ダイスの使い方が奇跡的なフェルト。自分が好きなテーマをじっくり調べ、流行を追いかけず、テストプレイをたくさん行い、2~3年かけて作るのがよいという。会場からは、個々の作品に関する質問が次々と寄せられ、ラセルダも饒舌になっていた。

スペシャルステージのインタビューに応じるラセルダ

元ゲームマーケット主宰の草場氏が企画運営した2日目の郷土ゲームコーナーでは投扇興が見られた。ほかにもごいた(能登)、ゴニンカン(青森)、カロム(滋賀)、ウンスンカルタ(熊本)、板かるた(北海道)、東八拳(東京)、安来拳(島根)、盤双六(京都)などずらり。一方、今回のひとつの目玉だった中古フリーバザールコーナーは申込者が少なく閑散。初期のゲームマーケットは中古ゲームのリサイクルをテーマにしていたことを考えると、時代の移り変わりを感じさせる。

郷土ゲームコーナーでは行われていた投扇興。達人の腕前を見ることができた

「本当に面白いユーロゲームの世界」ブースでは、無料・インスト付きで有名どころを遊ぶことができ、6テーブルがほぼ常時満卓となっていた。筆者は2日目の午後からここでずっと『スカイチーム』をインスト。すごろくやが出展していないのがつくづく残念である。

『本当に面白いインディーボードゲームの世界 vol.1』は来月発売予定。予約特典の付録が配布されていた

ボードゲームYoutubeチャンネル「The Dice Tower」のマーク・ディリシオ氏が招待ゲストとして初来日。『ito』の英語版や、日本発クラウドファンディングの宣伝に一役買っている。見せてくれたウィッシュリストは頼まれものではなく、全て自分がほしいもの。翻訳サイトを駆使して情報を集め、予約購入した戦利品はXで写真が載っている。ラセルダ氏も言っていたが、トリックテイキングには特に注目しており、カードテキストに言語依存がなければ英語ルールはだいたい誰かがアップロードしてくれるそう。インディーズの少部数販売がゲームマーケットの魅力で、制作者の愛情が感じられて素晴らしいという。

ディリシオ氏とパーソナル・ウィッシュリスト。「会場から海外発送できたらいいね」

次回のゲームマーケット2025秋は11月22日(土)と23日(日)、次々回のゲームマーケット2026春は来年5月23日(土)と24日(日)であることが事務局から発表されている。

幕張メッセを後にする。また11月!

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