西フランク王国の建築家(Architects of the West Kingdom)

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ワーカーが帰ってこない
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843年、カロリング朝フランク王国がヴェルダン条約によって中・東・西に3分割され、ルートヴィヒ1世の3人の息子たちが相続することになった。そのうち西フランク王国を統治した禿頭王シャルル2世(823-877)のもと、大聖堂とさまざまな建物を建築するゲームである。『レイダーズ・オブ・ザ・ノースシー:北海の略奪者』に続くS.フィリップス(ニュージーランド)の作品で、骨太のドイツゲームに新しい要素が加える手法はますます洗練されている。
手元にはたくさんのワーカーがおり、毎ターン、ボード上のアクションスペースに置いてさまざまなアクションを行う(ワーカープレイスメント)。粘土、木材、石材、金、大理石という5種類の資源を集め、指定された組み合わせが揃ったら建物や大聖堂を建築し、その勝利点を競う(セットコレクション)。お金を支払って弟子を雇うと、資源を手に入れやすくなったり、特定の建物が建築できるようになったりといった効果が得られる(特殊能力)。現代の代表的なゲーマーズゲームのシステムを盛り込んでいる。
新機軸として、第1にワーカーが累積するところ。『アグリコラ』のように自動的に帰宅せず、アクションスペースにとどまり続ける。その間、2人目を置けば資源が2個、3人目を置けば3個もらえるというように、増えれば増えるほどアクションが強力になっていく。溜めて溜めて、一気にたくさんの資源を受け取ったときは気持ちいい。
しかし調子に乗ってもいられない。新機軸の第2として、累積した他のプレイヤーのワーカーを拘束するというアクションがある。1色全部拘束でき、その後に刑務所に送ることで収入が入る。1つのアクションスペースに3~4人溜まってきたら覚悟したほうがよいだろう。
この2つのシステムが面白いインタラクションを生む。拘束はされたくないけれども、ワーカーはどんどん減っていき、刑務所に行って回収しなければいけなくなる。これでほかのプレイヤーのワーカー数をコントロールでき、逆にうまく拘束してもらうことでワーカーを潤沢に循環できるようにもできる。拘束は単に邪魔をするアクションではないところがいい。
そして新機軸の3番目が「美徳トラック」である。闇市場を利用したり、賭博場などを建築したり、詐欺師などを弟子に雇ったりすると美徳が下がり、王室倉庫に資源を納めたり、礼拝堂を建設したりすると上がる。美徳が規定数以上だと大聖堂の建設に参加でき、規定数以下だと税金を踏み倒したり、闇市場を利用したりできる。美徳が低いと最後に勝利点が引かれるので終盤は善行を積みたいところだが、前半は善人を貫くか、闇落ちして改心するか、戦略がある。
バリアントルールではプレイヤーにそれぞれ異なる特殊能力があり、美徳や所持金も最初から異なる。それぞれの特性を活かしたプレイが求められるだろう。
5人プレイで90分ほど。私は建設のコストがちょっと安くなるキャラクターだったので、序盤に闇市場を使って資源を確保した後は、美徳を一生懸命上げて、大聖堂の建設に注力することにした。大聖堂を建設するともらえるボーナスもなかなか魅力だが、ワーカーがもう帰ってこない(刑務所にも行かない人柱)。その結果、通常の建物まで手が回らず。ほかにも回し方が面白いキャラクターがたくさんおり、組み合わせによっても流れが変わるので、プレイするたびにさまざまな戦略を試せそうだ。
Architects of the West Kingdom
ゲームデザイン・S.フィリップス&S.J.マクドナルド/イラスト・M.ドミトリエフスキ
ガーフィルゲームズ(2018年)/日本語版・ケンビル
1~5人用/12歳以上/60~80分

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