運命背負い今とび立つ
宇宙船に乗って広い宇宙を航海し、惑星を開拓するボードゲーム。1999年に発売された初版を昨年、作者がセルフリメイクして発売した。1999年当時は珍しいビッグサイズのボードゲームだったが(国内価格は8500円)、10000円超えのボードゲームがどんどん発売されている今、十分売れるという判断があったのだろう。カタンファンにとって幻のボードゲームでもあり、日本語版の売れ行きも上々だ。
ゲームは一番手前の「カタンコロニー」から始まる。2個のダイスを振って産出される資源で宇宙船を作り、未知の宇宙へと飛び出していく。宇宙船の移動力は、母船を振って出てくるボールの色で決まり、惑星や異星人の基地に到着したら、コロニーや宇宙ステーションを設置して資源を産出したり、特殊能力を授かったりする。こうして拠点を増やして奥地を目指し、15点を先に取ることを目指す。
プレイ時間は120分とされているが、だいたい3時間は見ておいたほうがよさそうである。旧版からの変更点としてスタート時のコロニーが1つ増え、序盤に補給される資源も増え、7が出て資源を奪われても全員に補給があるため、資源がふんだんになった。何もせず手番終了ということが少なく、交渉も活発になる。
さらに宇宙船をどこに向けて移動するか考えどころがあり、黒いボールが出たときに起こる遭遇はイエス・ノー式で答えて進めるイベントがある。このようにして一手番一手番がじっくり進められることで時間は延びやすいが、交渉や遭遇の読み上げもあるのでダウンタイムはほとんどない。
『カタン』も資源の産出はダイス運だが、さらに宇宙船の移動や、宇宙海賊との戦闘などで振る母船のボールも運である。あと一歩で狙った惑星に到達できず、ほかのプレイヤーに先を越されることもある。しかしながら、運の要素の高さがガチな先読みをなくし、ある程度の指針をもっていればあとは臨機応変にプレイできるところが良い。大逆転とまではいかないが、ドラマチックな展開はあちこちで生まれるのも運の要素があってこそだ。
今回、後手番でスタートした私はほかの宇宙船の後塵を拝することになった。交易品が多く産出されたので交易船を作れたのだが、交易品をほかの資源に交換して移民船で追いかけたのが失敗。遭遇で足止めされている間に良さげな惑星の先を越され、奥の奥を目指すしかなくなってしまう。ようやくコロニーを建設し、そこを宇宙港にして拠点を築いたころにはゲーム終盤となっていた。3番手の鴉さんがほかのプレイヤーと違うルートで奥に進み、宇宙ステーションで異星人2種族と友好親善を結び一気に追い上げて勝利。
運の要素は高いが、手番数が多いことで薄められ、代わって指針と戦術がじわじわと勝敗に結びつくようになっている。ドイツゲームの重量化が進んだ90年代に発売された作品特有の、運と戦略のバランスの取り方である。テキストいっぱいカードにほとんど依存しない、リソースマネージメントと盤上の位置取りは、今遊んでも、古臭いどころかむしろ新鮮に感じられる。数字チップは裏返しておいて接触したら表になる、冒険心をくすぐるルールがオススメ。
Catan: Sternenfahrer
ゲームデザイン・K.トイバー/イラスト・F.フォーヴィンケル
コスモス+ジーピー(2019年)
3~4人用/12歳以上/120分