ドイツのボードゲームサイト「Reich der Spiele(ボードゲーム王国)」は、新作『ポルタ・ニグラ』について作者のW.クラマー氏にインタビューしている。その中で、ここ30年間の業界について語った部分があったので訳出。
Q:あなたはこの業界に長くいらっしゃいます。もしひとつだけ答えを決めるとしたら、あなた個人にとってボードゲーム業界でこの30年に最も変わったことは何でしょうか? 何があなたの仕事に最も影響しましたか?
A:この30年でボードゲーム業界は根本的に変わりました。これほどの変化があった30年はかつてないでしょう。変わったところはたくさんありますが、1つ選ばせて頂くならば、「ボードゲーム市場の二極化」を挙げたいと思います。つまり難易度が高くて複雑なボードゲームの国際市場と、たまに遊ぶ人の市場です。この二極化はいろいろあって、毎年1,000タイトル以上の新作と、世界中でたくさんの小さな出版社を生み出しました。その全てを見渡すことは容易ではありません。以前私はファミリーゲーム、大人向けのゲームを全て1回はプレイしていました。今日それは私にとって不可能です。
難易度の高いボードゲームの市場はゆっくり成長しています。この市場の問題は、成功を収めるものが、1年に3タイトルぐらいしかないことです。このジャンルのほかのゲームは、外国の提携パートナーが販売した場合のみ、10,000セットぐらい売ることができます。1つの国だけで出版されたボードゲームは、せいぜい3,000セットぐらいに留まるでしょう。たくさん遊ぶプレイヤーは、深く関わって経験のあるプレイヤーです。彼らは何よりも新作に関心があります。ですから古いエキスパートゲームはほとんど買いません。一方たまに遊ぶ人の市場、いわゆるマスマーケットでは、新作を売るのがどんどん難しくなっています。たまに遊ぶ人は新作のことを知りません。ですから古典的なゲームだけを買います。このためまたしても、出版社が古典に注力することになるわけです。新作で成功したければ、それを手厚く育てていかなければなりません。しかし新作が生き残るチャンスはほとんどないように見えます。でも、新作が広いターゲット層に知られれば、何年も売れ続け、出版社のプログラムに残り、10万セット以上に達するでしょう。
以前、ドロッセルマイヤーズの渡辺氏から、テレビゲームでもファミリー向け・キッズ向けのほうが当たり外れが大きいという話を聞いたことがある。フリークゲームは、確かに大成功を収めるものは1年に3タイトルぐらいしかないだろうが、そのほかのゲームでもそこそこ売れているわけで、固定ファンをつかめば次の作品を出していけるだろう。しかしファミリーゲームは、フリークからは見向きもされず、ファミリーはそのゲームの存在を知らないということで、話題にならないと全く売れない恐れがある。ドイツの出版社はファミリーゲームを作り続けているが、それも年々厳しくなっているようだ。
日本のゲームマーケットと同様、世界のボードゲーム市場も確実に成長している。その結果生み出されているものが、おびただしい数のリリースと、わずか数タイトルの成功だとしたら、デザイナーや出版社にはタフさが要求され、プレイヤーには自分にピッタリのゲームを見つける情報収集能力が問われる時代が来ているといえるだろう。
・Reich der Spiele:Wolfgang Kramer über Porta Nigra und den Spielemarkt