大きなサイコロに乗った江戸の子供たちのカバー絵、帯には「勝負に勝たないと、双六のマスに閉じこめられちゃう―!?」、カバー裏は「つくもがみすごろく」。そんなボードゲームの香りに惹かれて購入した小説。
この小説の世界は、百年を超えた古い品物が「付喪神(つくもがみ)」と化して、やんちゃな子供たちとさまざまな謎や怪異に挑むお江戸妖怪ファンタジーである。その第1話に出てくるのが、絵双六が付喪神となった「そう六」。名のある絵師に描いてもらったおかげで、観賞用として楽しまれたため、無事に齢100年を超えられたという。ものを大事にしないやんちゃな子供たちを戒めるため、双六の世界に引き込んで勝負を挑む。ところが1マス目から「そう六」も予期しなかった事態に・・・・・・というお話。
ボードゲームの世界に引きこまれる話は『ジュマンジ』や『ザスーラ』でも見られたものだが、ただ双六で勝負しているだけではなく、現実世界とリンクして謎を解いていく筋書きが面白い。
もうひとつ面白いのが、古い品物が百年経つと喋ったり、影の中に入ったり、小さな人形の姿になって歩いたりできるという設定。万物に魂が宿っているというアニミズム(汎霊説)は、日本人にもなじみのある感覚である。
深夜のボードゲーム棚で、ボードゲームたちがあれこれ喋っている様子を想像してしまった。「最近、遊んでくれないよね」「なんか忙しいみたいだよ」「俺なんか、もう10年くらい遊んでもらってない」「えー、そんなに!」「また新しいの買ってきちゃったし」「今の主人の代には、もう遊んでもらえないかもな」「ヒマだし、ドイツ語教えてやろうか?」
つくもがみ、遊ぼうよ
畠中恵/角川書店(2013年)