エリアを生成しながら陣取り
1999年に『ティカル』、2000年に『トーレス』がドイツ年間ゲーム大賞を受賞した。どちらもアクションポイントというシステムを使った重量級ゲームで、選択肢が多く、1手番1手番にたっぷりと時間をかけて悩み、結果としてプレイ時間が長い。この後、ドイツ年間ゲーム大賞はファミリー・カジュアル路線にターゲットを移し、こうした作品群はトレンドから外れてしまったが(『ティカル』がよりライトな『ティカル2』になったのは示唆的である)、この時期の作品は永久保存する価値があると思う。
『ティカル』の受賞により発売された「コワい顔三部作」、すなわち『ティカル(1999)』、『ジャワ(2000)』、『メキシカ(2002)』はいずれもアクションポイント制だが、プレイ時間がそれぞれ90分、90〜150分、60〜75分とだいぶ異なる。最後に出た『メキシカ』は、比較的ライトな作品といえるだろう。土地を運河で区切り、建物を建てて陣取りする。
毎手番与えられる6アクションポイン(AP)トを自由に割り振って手番を行う。運河タイルを置くなら1AP、自分のコマを移動するのに1マス1AP、建物を作るときは高さに応じて1〜4AP。
予め8つのエリアの大きさが定められており、運河で陸地が囲まれてその大きさのエリアができると、完成させた人と、そのエリアにコマを置いている人に得点が入る。しかしこれで終わりではない。エリアの中で、建物の建築合戦が始まる。より高く、より多く。
8つのエリアが完成し、誰かが手持ちの建物を使い切ると前半戦が終了。そのエリアに建てられた建物の合計で、トップから得点が入る。広いエリアほど得点が高いが、競争率も激しい。
続いて後半戦。空き地に新たに7つのエリアを作っていくが、前半戦で得点計算が終わったエリアも再び建物競争の対象になる。マスが空いている限り、さらに高い建物が作られるだろう。全エリアが完成して、得点計算を行い、合計の多い人が勝ち。勝つためには一極集中ではなく、できるだけ広く浅く、いろいろなところで得点できたほうがよい。
ゲームのポイントは2つあって、1つは運河で区切る前から建物を建てられる点。先行して建てておけば、その周りにエリアができたときにイニシアチブを取りやすい。しかしその一方で、ほかの人がその建物を狭く囲んで邪魔してくる恐れもある。ほかの人と利害が一致しそうなポイントを探して、絶妙のロケーションを探りたい。
もう1つは、運河に橋をかけてコマがワープできる点。建物を建てるには、そのエリアにコマが移動する必要がある。しかしコマの移動に手間取っていると建物を建てるAPが残らない。運河が続いていれば、橋から橋へはどんなに離れていても1APで移動できるのでAPを節約する。相手にはそうさせないよう、橋の出口を建物で塞いだりして対抗したい。
序盤からどんどんエリアを完成させてボーナスをもらう作戦だったが、その分建物に力を入れられず、広いエリアが取れない。狭いエリアでちまちまと稼ぐ作戦に出たが、これも点数が低かった。終盤はどこでエリアが完成するか分からない混戦模様となったが、大きいエリアの激戦を制したcarlさんが1位。アクションポイントを節約して貯金する作戦のくさのまさんは、絶好のタイミングが回って来ないまま終わった。
運の要素はないので、『囲碁』のヨセのようなシビアなプレイが要求される。特に終盤は少しのミスも許されない(マルチプレイなので、あえて沈むことでトップ叩きを回避するという戦略もあるわけだが)局面が多く、時間が短めでもがっつりとしたプレイ感がある。
Mexica
W.クラマー&M.キースリング/ラベンスバーガー(2002年)
2〜4人用/10歳以上/60〜75分
絶版・入手難