出し渋ったんじゃない、金がないんだ
先月、TBSテレビ『世界ふしぎ発見』の「ドイツメルヘンミステリー おとぎ話の真実」という回を興味深く見た。ネズミ退治をした男が街の子供を連れ去ってしまう『ハーメルンの笛吹き男』は、民間伝承に基づくメルヘンで、気候変動や十字軍などの史実的な要素もあるらしい。
彩色されたフィギュアが美しいフラゴーゲームズ(スコットランド)がエッセン国際ゲーム祭で発表したこの作品には、ふてぶてしいネズミと、何を考えているかわからない笛吹き、そしてネコが登場する。子供を作って結婚させ、一族を増やして儲けるゲーム。もちろん、ネズミが邪魔をする。
建物には夫婦のコマがある。自分の番になったら、自分の色の夫か妻をはたらかせる。夫なら生産でパン、チーズ、ビール、肉が手に入り、妻なら子供が生まれる。
面白いのは、同じ建物にいる配偶者も同時に活動するところ。配偶者は常に他のプレイヤーのコマである。自分が生産すれば誰かが子供をもうけ、自分が子供を設ければ誰かが生産することになる。夫婦とは血の繋がっていないものだが、力を合わせて生活している感じがあっていい。
子供が生まれるとき、袋からキューブを引いて、青なら男、ピンクなら女ということになる。実世界と同様、どちらかに偏ることも。「うちの一族、男しか生まれねー」
生まれた子供は教会に置かれているが、ほかのプレイヤーの異性と組み合わせて、新しい建物に所帯をもつことができる。ただし、新しい建物に入るには資金が必要で、それは男性側が払わなければならない。「一生ついていきますって、金出すのオレ?」
新居を構えた夫婦は、新たに生産と子作りを行い、こうして一族が盤面に増えていくことになる。しかし、その幸せも長くは続かないのであった。
夫婦が活動するたびに、建物の周りにはネズミコマが置かれ、建物の周りがネズミで全部うめつくされると、王様ネズミがやってくる。そうなった建物は、ネズミがいなくなるまで使えなくなってしまう。ネコを買って追い払えるのは1匹だけ。隣の建物のネズミも影響するので、3回使えれば御の字である。
そこでいよいよ笛吹き男の登場となる。街は4つの区画に分けられ、一番多くお金を積んだところに笛吹き男がやってくる。王様ネズミが一定数置かれてラウンドが終わると、その区画だけネズミを前除去してくれる。これがないと、次のラウンドは身動きが取れないから献金も必死。
ついでに笛吹き男は、教会にいる子供たちも連れ去ってしまう。そうされたくなかったらお金を払うことだ。もっとも手持ちのお金が残っていればの話だが……。
ラウンドが終わりに近づくと、商品を売って献金を積み増したり、さっさと子供たちを結婚させたりと慌ただしくなる。ラウンドが終わるタイミングによっては、ネズミは除去できないわ、子供は連れ去られるわと最悪の状態に。終わり間際の駆け引きが熱い。
3ラウンドでゲーム終了。所持金、ゲーム中に購入した影響力、ゲーム中には全く役に立たないネズミ捕りなどが得点になり、合計点の多い人が勝ち。連れ去られた子供はマイナス点となる。
皆と満遍なく縁組したくさのまさんが、見事な利害関係で1位。笛吹き男は子供を大量につれていくわけではないので、そのインパクトよりも結婚と出産がリアルで面白かった。
Hameln
ラモントブラザーズ/フラゴーゲームズ(2006年)
3〜5人用/12歳以上/60分
絶版・入手難