ゲームマーケット大阪をネタに嗤う桜川マキシムが大きな反響を呼んだのは、愛好者がボードゲームを通してどんな「交流」をしたいのかという問題をつきつけられたからではなかったかと思う。NPC的な存在なのか、同好の士なのか、はたまた心の友なのか。
誰とでもいいのでボードゲームを楽しみたいという態度はひとつあるだろう。あまりなじみのないボードゲームサークルではそうせざるを得ない。家に帰って、ハンドルネームと成績しか思い出すことはできないなんてよくある話。それだって十分ボードゲームは楽しめるものだし、中には困ったちゃんもいるから、それ以上お近づきにならないのが賢明ということだってある。
だがそればかりというのも少し寂しい。一緒にプレイしていると、お互いの好みや癖が分かったり、次第に連帯感が生まれてきたりしてくる。軽口も出てくるだろう。こうしてボードゲームという文脈で打ち解けるという間柄になる。
さらに気が合えば、ボードゲーム以外でも親交を結ぶようになる。お茶や食事を一緒にするあたりから始まって、ほかの趣味や仕事の話にまで及ぶこともあるだろう。飲みに行ったり、カラオケに行ったり、旅行したりと親交を深めていく。
当然のことながらこうした関係は人によって変わる。一緒に遊びたくない人、遊んでもいいけどあまり話したくない人、ボードゲームの最中なら話せる人、ボードゲームなしでもいろいろ話せる人など、付き合いの長さや相性で変わってくるものだ。ボードゲームは初対面の人を急速に近づける効果があるが、必ずボードゲーム外の交流まで及ぶとは限らない。
それでも私は、ボードゲーム以外でも親交を結ぶ人の割合を増やしたいと思っている。この頃、自宅ゲーム会にいらっしゃるメンバーが休憩中に妻とよく話すようになった。ボードゲームの話題ではなくて、仕事のこと、震災のこと、ほかの趣味のことなどである。妻も楽しそうだし、私も聞いていて興味深い。
昨日はゲームマーケット前日で、知り合いに声をかけてドイツレストランで食事をした。ボードゲームの話題が多かったが、全国から集まる中でそれぞれの地域のことや、お酒や煙草などの嗜好、知られざる過去などの話がちらほら出てきてとても楽しかった。そういう話を私は聞きたかったのだと思う。
誰でも彼でも同じように親交を結べるわけではない。自分と相手の両方が認め合えないと、単になれなれしいだけになってしまう。そうならないためには時間をかけて信頼関係を築き、手探りしながら距離を近づけていくことが必要だが、そうした「ゲーム」もまた、楽しいものである。
今日はゲームマーケット。旧交を温め、新しい知り合いを作る絶好の機会である。坊主姿で会場をうろついているので、見かけたら声をかけてください。