(写真と文:石川 久)
すでに11月26日には到着していた今回のメビウス便だが、仕事の関係で機会が作れずに、ようやく12月8日の「水曜日の会」でプレイすることができた。幸運にもメビウスの能勢さんにルール説明をしてもらった。
11月28日に開催されたテーブルゲーム・フェスティバルでも先行販売され、いずれも安定した面白さだ。
●ランキング(ハンス イム グリュック)8歳以上/3〜5人/30〜45分 (8点)
シュテファン・ドラとラルフ・ツァ・リンデの共作によるパーティゲームで、今年のエッセン・シュピールで発表され、個人的にも期待していた新作。
両デザイナーはとても仲良く、エッセン・シュピールの会場を一緒に回っているところを偶然にも発見。ドラ・ファンの私は思わず舞い上がって写真を撮らせてもらった。
シュテファン・ドラ(左)とラルフ・ツァ・リンデ(右)
「最も大きな愛の証となるプレゼントは?」
ランダムにめくられた質問タイルに対して、全員が自分の6枚の手札タイルの中から、ふさわしいと思うイラスト1枚をチョイスして裏向きに出し、それらを集めて、合計枚数が7枚になるように山札から補充してシャッフルする。誰がどのタイルを出したか判らないようにした後で、全てのタイルを表にして塔の3階の所に並べる。
手番プレイヤーは同じ階にあるタイル2枚を選んで、1枚を上段に、もう一方を下段に移動させる。こうしてタイルに順位がつけられていく。タイルは上階に行くほど得点が多く得られるようになっている。
このゲームを楽しむ重要なポイントは、なぜそのようにしたかを短くてもいいので語ること。その言動で他のプレイヤーたちは誰がどのタイルを出したかを推測していくからだ。
手番プレイヤーがタイルを移動させた後、他のプレイヤーたちは、そのプレイヤーが出したタイルを推理して、怪しいと思うタイルの上にチップを乗せることができる。当たればそのプレイヤーの得点が減点される。
自分のタイルを上位に持って行こうとすると、他のプレイヤーたちに簡単に読まれ、無理矢理こじつけても怪しまれる。饒舌になりすぎてもいけない。だからといって自分のタイルが下位になるのは避けたい。このジレンマが実に面白いところだ。時にノンプレイヤーのタイルが絶妙に質問とマッチしていたりして可笑しい。
ボックスアート
塔のてっぺんには、質問タイルが置かれる
ラウンドの最初は、全てのタイルが3階に集結
怪しいと思うタイルにはそのプレイヤー色のチップが!
「質問に合致したタイルが全然ないや!」
「このタイル、何?」
自分の出したタイルに、他のプレイヤーのタイルだと敢えてチップを賭けてみたり、ブラフ要素満載の正体隠匿系の推理ゲームの要素もある。「アンダーカバー」と「私の世界の見方」を組合わせたような、ドラらしい捻りの効いたパーティゲームになっている。
◎Ranking for BoardGameGeek
http://www.boardgamegeek.com/boardgame/80942/ranking
●ディスカバー・インディア(クイーン)8歳以上/2〜5人/30〜45分 (6点)
バンブスからゲームを発表しているギュンター・コルネットとペール・ジルヴェスターの共作による、インドを舞台にしたタイル獲得ゲーム。クイーン・ゲームズの社長がインド人ということもあって、特別な思い入れでリリースしたゲームでもある。それだけにコンポーネント・デザインが美しい。
プレイヤーたちは、インドを旅行する団体客となってタイルを獲得する。そのタイルを自分専用のプレイヤーボードの上に配置して、コーラムと呼ばれる模様を描くのが目的。同じ色のタイルが隣接することでより高得点になる。
手順はシンプルで、ゲームボードにある自分のコマを直前のプレイヤーがコマを置いた都市から隣接する空いた都市に移動させ、そこにあるタイルを獲得する。そして、そのタイルを自分のプレイヤーボードに配置する。
ゲームボード
プレイヤーボード
都市カード
祭マーカーのある都市に自分のコマを移動されたプレイヤーは、都市カードを受け取り、これが1枚1点になる。カードにはインドの建築物や名所、物産などが美しい写真とドイツ語による解説が書かれていて、ちょっとした観光気分を味わうことができる。またカード左下のアイコンを使うバリエーション・ルールも用意されている。
他のプレイヤーの得点状況が把握しづらいところが難点で、ソロプレイ感が強いゲームではあるが、どのタイルを自分のプレイヤーボードのどこに置くか、ウンウンと悩みながら配置していくのが楽しい。
◎Discover India for BoardGameGeek
http://www.boardgamegeek.com/boardgame/86270/discover-india
●ぴっぐテン(ツォッホ)6歳以上/2〜8人/15〜30分 (5点)
カウントアップ系で、ありそうでなかったカードゲーム。
カードの数字には0から10まであって、場にカードを出すことで、その数を足していく。ちょうど10にできれば、場札を得点として獲得する。
手札は3枚だけなので、もしも10をオーバーする場合には、直前のカードを出したプレイヤーが場札を獲得してしまう。これを繰り返して、補充用の山札がなくなり、全てのプレイヤーの手札がなくなったらゲーム終了だ。
最もカードを集めたプレイヤーが勝者という、単純なルールで幅広い人数でテンポ良く遊べるのがいい。
数字が0のカードは山を0にする。5のカードはプラスにもマイナスにもできる特殊なカード。直前のプレイヤーが出したカードと同じ、もしくは山の数と同じ数字のカードを出した場合には、出したカードの数字のままにできる。子供に楽しく遊びながら足し算を学ばせるには良いゲームだ。
ゲームデザインをしたアイエレット・プヌーリと、メルヘンなアートワークが印象的なイラストレーターのクラウディア・ステッケルは、このゲームが共にデビュー作である。
カード構成を知りたがるゲーマーのために‥‥0が7枚、5が5枚、10が4枚、それ以外は8枚ずつ、合計80枚。
ボックスアート
◎メビウスおやじ「ぴっぐテン」の紹介
http://mobiusoyaji.cocolog-nifty.com/blog/2010/11/post-d729.html
◎Pig 10 for BoardGameGeek
http://www.boardgamegeek.com/boardgame/83196/pig-10
●ミレ・グラツィエ(ツォッホ)8歳以上/2〜4人/30〜45分 (7点)
手番プレイヤーは、貴族となってイタリアの都市から都市へと旅をする。タイルを目的地まで無事に届けることができたら得点が入る。
他のプレイヤーたちは盗賊となって、手番プレイヤーが通るであろう街道を予測して待ち伏せする。手番プレイヤーは1つの街道だけに護衛をつけることができるが、もしも護衛のない街道で盗賊に襲われると、せっかく持っていたタイルを捨てなければならない。
ボックスアート
ゲームボード
目的タイルと待ち伏せコンパス
手番プレイヤー以外の他のプレイヤーは、手番プレイヤーの行動を読んで、待ち伏せをプロットする。これにより、緊張感が持続してダウンタイムを感じない。
盗賊どうしは相談もできるので、待ち伏せコンパスを見せ合って、互いのプロットの確認することも可能だ。待ち伏せに成功したプレイヤーには3点が入り、これによりゲームに勝利するための到達点である30点を超える場合もある。
3人でプレイしてみたところ難易度も丁度良かった。4人でプレイすると人数が増える分、待ち伏せする街道も増えるから難易度も上がるだろう。そういう意味では3人がベスト人数のようにも思える。きっと2人でプレイしても面白いだろう。
目論みがバレて盗賊に襲われると、持っていたタイルを失うことになる。向かっていた目的地のタイルを失ったら最悪だ。読まれまくると全く得点できずにゲームから脱落する可能性もあるため、バランスが決して良いとは言えない。
けれども、他のプレイヤーの読みをかわすことがてきたときの爽快感は格別で、精査されたシンプルなコンポーネントとルールで、プレイヤー間の読み合いが楽しめるところは評価できる。
「ミレ・グラッツェ」とはイタリア語で「どうも、ありがとう!」という強く感謝を表す言葉である。待ち伏せに成功したときに言うのを忘れずに。
このゲームのデザイナーのディルク・ヒレブレヒトも新人のようである。
◎Mille Grazie for BoardGameGeek
http://www.boardgamegeek.com/boardgame/83199/mille-grazie
(写真をクリックすると別ウィンドウで拡大します)