今年は『レース・フォー・ザ・ギャラクシー』、『パンデミック』、『ドミニオン』の3タイトルが突出した人気を誇った。メーカーの品切れが続き、その間に遊んだわずかの人の評価から期待がさらに高まるという現象も起こっている。
これらはアメリカゲームである。アメリカには戦争シミュレーションゲームやロールプレイングゲームで長い歴史があるが、ボードゲームに関してはドイツに後れを取り、派手な特殊効果を打ち合う大味な展開がアメリカゲームの代名詞のようになっていた時期もあった。ところが近年、本家本元であるトレーディングカードゲームとドイツゲームのエッセンスを融合し、世界のゲーム愛好者を唸らせる作品を生んでいる。
一方、ドイツゲームでは『アグリコラ』が高い評価を得た。ボードゲームギークで発売以来首位の座を守っていた『プエルトリコ』を抜いて1位なったほか、わずか1年で11ヶ国語版が発売され、ドイツ、フランス、スペイン、オーストリアなどのゲーム賞を受賞している。この陰に隠れてしまった感もあるが『ストーンエイジ』も人気を集めた。
この2作に共通するのは、「ワーカープレイスメント」(コマを置いて行動を選択するシステム)である。フランスゲームの『ケイラス』(2005年)がその嚆矢で、ほかにも『大聖堂』や『護民官』など、今では人気ゲームの共通プラットフォームとさえいえる。
これに『アグリコラ』はこれに300枚を超える豊富なカードを加え、『ストーンエイジ』はダイスという一見相容れなさそうなものと融合させることで独自性を獲得した。ただし、このシステムはゲーム時間が長くなるのでファミリー層に訴えないという問題があるほか、フリークにも飽きられ始めており、新しいシステムの登場が待たれる。
ほかにもチェコゲームズ(『ギャラクシートラッカー』)やフランスのイスタリゲームズ(『メトロポリィス』)、イギリスのウォー(ツリー)フロッグ(『ブラス』)が人気で、対するドイツの大手メーカーは攻め手を欠く。ドイツ人デザイナーも、大賞作の続編や焼き直しばかり作っていて、アイデアが鈍っているのではないか。今、ドイツゲーム市場は外国からアイデアを集めることで成り立っているとさえ言える。
国産では『パレード』、『お先に失礼します』、『エガッタ』、『ブロックス3D』、『クイズ!いいセン行きまSHOW!(同人)』などライトな佳作が発売された。このうち3作はもともと海外で発売された作品で、国産メーカーやデザイナーの発信力はまだ足りない。受け入れる市場も小さいというのが実情だが、もっと育ってもよさそうなものだ。
00年代後半の傾向としてファミリーとフリークの二極化がある。大賞作の『ケルト』はドイツゲーム賞で8位というワースト記録で、ノミネートされた『ズライカ』や『ブロエックス』は圏外である。しかし、どちらにも支持される深みのある作品が不可能ではないことをアメリカゲームが示した。グローバル化の中で新しい道を開くのは、各国がもつ地域性なのかもしれない。