食い荒らしではなく食い合い

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2002年のゲームマーケット向けに制作した『トイプラス』という同人誌で、メビウスの能勢店長さんがこんなことを仰っている。
「ただこれから先、何となくでわからないですけど、たかだか私のような個人が食べていけるくらいの小さい市場な訳ですが、よそから見るとおいしく見えるのか、エポックさんとか、カプコンさんとかが参入するという話があって、それが市場の活性化につながればいいんですけど、食い荒らしにならないきゃいいなという気はしますね。」
結局、エポック(NDSGの5タイトル)もカプコン(『カタン』)も参入は一時的で、大きな影響を与えるには至らなかった。バンダイ(『チケットトゥライド』)もそうである。毎月のように新作が出ては消えるという情勢では、少ないタイトルを大々的に扱う大企業よりも、フットワークの軽い中小ショップのほうに利があるのは目に見えている。
だが昨年あたりから、大企業による食い荒らしではなくて、中小ショップ同士の食い合いの様相が散見されるようになってきた。
同じタイトルを複数のショップが輸入し、それぞれ別々に訳を作って売り出す。発売は1日でも早いことを競う。結局同じくらいの時期に売り出すが、ユーザーが分散するため、どこもあまり多くは売れない。さらに、ユーザーの評価が今ひとつだったりすると目も当てられないような状況に……そんな事態が起こっている。
例えばフランスのイスタリ社が昨秋に発売した『シラ(スッラ)』はバネスト、アークライト、広島の3社が別々に扱っており、売れ行きはあまりよろしくないようである。これが1社だけの取り扱いだったら、売れ切れになってもおかしくない出来なのに。
搬送にも翻訳にもコストがかかるから、同時並行で同じことをやるのは全体で見れば大きな損失である。競争原理がはたらいて価格が下がったり、翻訳の質が上がったりするならばよいのだが、実際は売れなくて価格を上げることになったり、翻訳に手間をかけられなくて質が落ちたりする恐れのほうが大きい。
韓国ではコリアン・ボードゲームズがどんどん権利を買って韓国語版を出してしまい、市場を独占しようとしているが、そういうスタイルがいつまでももつはずもないし、国内は占められたとしても、数多ある外国の輸入先を独占するのは難しい。
こういうことは当然、当のショップも考えているようで、B2Fゲームズのブログでは、国内の流通や販売に関して、建設的で前向きな枠組み作りを儲け抜きで考えていることを知った(リンク)。具体的にどういうことかまでは触れられていないが、緊急の課題なのではないだろうか。
ユーザーとして協力できることはないのかもしれないが、現在の状況はとても見ちゃいられない。このままでは一店、また一店とつぶれるかボードゲームから撤退しかねないというところまで来ている気がする(気のせいならばよいが)。もっとお互い手を握る道を模索してほしい。

食い荒らしではなく食い合い」に3件のコメント;

  1. >売れ行きについて
    発言として気になる点がありましたのでご意見いただければ幸いです。
    シッラは実際に広島、アークライト、バネストの合計で
    いくつ売れていることになるでしょうか?その数字はご存知ですか?
    例えば3社合わせて15ぐらいは売れていることになっているのでしたら、
    目安として1社で売り切れというシチュエーションになるのでしょう。
    (広島は入荷は分かりませんが、アークライト、バネストはそれぐらい
     入荷をしているのを見かけました。)
    一方で宇宙大競争も3社で取り扱っていたようですが、
    3社とも売れ行きは好調だったために
    おの氏が考えておられる問題は発生しなかったように思います。
    この件について、おの氏がおっしゃられていることは矛盾しているように
    思えるのですがいかがでしょうか?
    シッラが単純につまらないゲームだから売れないのでしょうか?
    アグリコラやドミニオン、宇宙大競争はシッラより面白いのでしょうか?
    次にB2Fのことですが、B2Fがドミニオンを売るという行為は
    前向きに何かを考えているようには思えません。
    そもそもハンスイングラックの商品を優先的に仕入れていたのは
    メビウスではなかったでしょうか?
    ブログで見ている限りB2Fではドミニオンを100は販売していたように
    読み取れます。
    無駄な競争をすることがダメだという持論をおの氏はお持ちのようですが
    その発言とB2Fの行為は矛盾しているように思えます。
    好きに仕入れることは市場経済の理に適っているのでしょうか?
    ご意見をいただければ幸いです。

  2. ご質問の回答にならないかもしれません、私見を述べたいと思います。
    ひとつのメーカーの商品はひとつのお店で独占的に扱うべきということではないんですよ。ひとつのお店が一括で仕入れて、ほかのお店に融通することでコスト削減につなげ、ほかのお店はまた別のメーカーの商品を一括で仕入れて融通して、相互にメリットになる関係ができないかなと思った次第です。『ドミニオン』や『レースフォーザギャラクシー』のように、米独双方のメーカーが扱っているゲームは一概には言えませんが。
    また輸入の一元化が非現実的ならば、翻訳を共同で制作して融通しあうとか、連盟のようなものを作って広報するなども考えられます。ドイツではGamemobやFachgruppe Spielなど、メーカーが共同で利用できる仕組みを作っていますが、メーカーではなくショップ(輸入代理店)が主導的立場にいる日本では、ショップが手をつなぐのが大事だと思います。
    以上の点を踏まえて、それでもまだ矛盾が解決されていないとお考えならば、ご教示ください。

  3. 回答ありがとうございました。
    貴重な時間を頂き、ご意見を拝読させていただきました。
    お話いただいたことについては納得いたしました。
    ショップの方々の努力に期待したいと思います。

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