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宮城・柴田で「第2回仙南ボードゲームフリーマーケット」8月6日開催

bgdflm-sennan宮城・柴田のカフェ&コワーキング Kitai(船岡駅徒歩5分/駐車場柴田町図書館)にて8月6日、「第2回仙南ボードゲームフリーマーケット」が開催される。10:00~15:30、入場無料。

2019年12月の開催以来、4年ぶりとなる宮城・仙南地区でのボードゲームフリーマーケット。前回はイオンタウン内の多目的スペースで行われれ、約120名が参加した。

今回は同人創作ゲーム、輸入ゲームを含む8団体がブースをかまえ、待機スペースを兼ねた休憩スペースも設けられる。各ブースの出展内容などは下記リンクを参照。

Twitter:宮城ボドゲフリマ準備会

 

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ボードゲーム作家逝く

(月報司法書士2023年6月号掲載)

代表的なドイツのボードゲーム『カタン』の作者であるクラウス・トイバー氏が4月1日、70歳で逝去した。日本のボードゲーム愛好者は、「『カタン』がなければ今の人生はなかった」などと哀悼と感謝の言葉を次々と表明している。

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ボードゲーム展示会でサインに応じるクラウス・トイバー氏(Wikipedia)

代表的なドイツボードゲーム

『カタン』は架空の無人島を開拓するボードゲームで、1995年にドイツで発売された。ショッピングモールや量販店でも販売されているので、ご存知の方もいらっしゃるだろう。サイコロを振って資源を手に入れ、資源を組み合わせて自分の開拓地を広げていく。余った資源は他の人と交渉して、足りない資源と交換することもできる。サイコロ運、資源の組み合わせ、交渉、陣取りとボードゲームの楽しさが詰まった作品で、70カ国で4000万セット以上を売り上げた。筆者も『カタン』からボードゲームにのめり込んだ口である。

当時、面白いボードゲームを探して都内のお店を歩き回っていた頃、お店で『カタン』を遊んでいる人たちを何度か見かけた。簡単なカードゲームばかり遊んでいた私にとって、六角形のタイルを何枚も並べた盤面は難しそうというのが第一印象。価格も結構高くてためらっていたが、あまりにいろいろなところで見かけるので勇気を振り絞って買ってみたところ、これまでにない楽しさで繰り返し繰り返し遊んだ。やがて拡張セットも加え、ドイツのウェブサイトで最新情報を手に入れてドイツ語のトレーニングも兼ねて翻訳するようになった。現行の『カタン』日本語版は拡張セットも含め、私が日本語訳したルールが同封されている。

ドイツでは『カタン』のヒットにより、遊びごたえのあるボードゲームがその後次々と発売された。このムーブメントはドイツ国外からも注目され、趣味として定期的にボードゲームを遊ぶ「ホビーゲーマー」を生み出すと共に、ドイツスタイルのボードゲームが各国で作られるようになっていった。『カタン』こそ、ドイツを中心としたボードゲーム黄金時代を築いたボードゲームなのである。

ボードゲーム作家の存在と著作権

ボードゲームに個人の「作者」がいるということは、馴染みのない考えかもしれない。確かに囲碁や将棋などの伝統ゲームは作者が不明であるし、『人生ゲーム』など、会社の制作チームが作ってはいるが記載されていないものもある。しかしドイツでは1980年代から、ボードゲーム作家にも書籍のような作家性の認知を求める運動が起こり、1988年、13名のボードゲーム作家が「箱の上部に作者名を記載しない出版社にはアイデアを提供しない」という宣言を行った。以来、ドイツのボードゲームでは箱に作家名が記載されることが一般的になり、トイバー氏のような売れっ子作家が次々と誕生した。ドイツのボードゲームが世界で人気を博したのは、ボードゲーム作家の存在によるところが大きい。

『カタン』も歯科技工士(当時)だったトイバー氏がアイデアを考案し、いくつかの出版社に持ち込んだものである。このくらい時間がかかるボードゲームはまだ一般的ではなく、大手出版社に断られたり、テーマ変更を要求されたりした結果、それほど有名ではなかった出版社から発売されたという経緯がある。『カタン』のヒットによってこの出版社は大きな成長を遂げた。

専業のボードゲーム作家にとって出版社から受け取る印税が収入源であり、ルールの著作権には関心が高い。ドイツには「独自の知的活動に帰せられる思考様式が十分に認められる限り、ボードゲームのルールは文書として保護される」という連邦裁判所の判例(1961年)があるが、ボードゲームは既存のルールを改良して発展している面もあり、一部類似しているだけで権利侵害を訴えていたら新しいボードゲームはどんどん作りにくくなってしまう。海賊版のような完全コピー商品は別として、多かれ少なかれ類似点があるボードゲームのルールをどこまで保護するべきかという線引きは法的に難しい。道義的にも、どこからが剽窃にあたるか、その都度、愛好家の中で意見が分かれる。

とはいえ、時間をかけて練り上げたルールに対価が支払われなければ、ボードゲーム作家という職業は成り立たない。そのため、ドイツでは1991年に「ボードゲーム作家ギルド(Spielautorenzunft)」が結成され、ボードゲーム出版社に対する権利の保護、ボードゲームを書籍、映画、演劇、音楽などのように著作物として扱うことなどを訴えてきた。ボードゲーム出版社とライセンス契約を交渉したり、議員ロビー活動を行って連邦司法消費者保護省大臣に「ボードゲームのルールは著作権保護対象になりうる」という答弁を引き出したりしてきた。現在ドイツ国内外で600名が加盟しているこの団体で、トイバー氏は初代副会長を務めていた。

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『カタン』の箱の上部にはトイバー氏の名前が記載されている

人と関わって豊かな人生を

トイバー氏は『カタン』シリーズを始め生涯で200タイトル以上のボードゲームを生み出してきた。粘土で何を作ったか当ててもらう『バルバロッサ』、タイルを並べて未知の島への航路をつなげる『エントデッカー』、盤上に境界線を置いて自分の領地を作る『レーベンヘルツ』などは名作として名高い。これらの作品に通底する精神は、「ボードゲームにおいては過程こそが目的である。確かに勝つのはいいことだが、それはもちろん主目的ではない」「対戦相手が『また明日あなたと遊びたい』と思うようなプレイをしよう」という名言が表すように、人々がボードゲームを通してお互い関わり合い、楽しい時間を過ごすことにある。さらには、ボードゲームにヒントを得て、豊かな人生を送ってほしいという願いも込められている。この精神と願いは、トイバー氏亡き後も世界のボードゲーム作家に受け継がれていくだろう。
「ボードゲームは小さな人生のようである。運が重要な役割を果たす。人生が面白いのは、偶然があるからにほかならない。」