おっぱい・おしり・サンシャイン(Titten Ärsche Sonnenschein)
ギャランドゥ!
ドイツのボードゲームイベント「シュピール」には時折、こういった作品が見つかる。試遊卓で目に止まったこのカードゲーム、見かけによらずドイツ人が長考している。すぐさま売り場を探して買い求めたのは言うまでもない。日本に帰ってからしばらくすると、ゲームストア・バネストから翻訳依頼が届いた。さすが中野さん。
好事家にはこのイラストだけで十分だろうが、一応どんなゲームか説明しよう。海辺のバーでフィーバーするべく、サングリア(ワインのジュース割り)を出してお客を集める。同じ種類(おっぱい、おしり、イス、サンシャイン)か、同じ色(赤、青、黄、緑)をできるだけ多く集めよう。
手番には山札からカードを引いて、その後4つのアクション(山札から引く、場札から引く、ほかの人の列にカードを出してサングリアを盗む、場札と交換する)から1つを行う。こうして手札を整えたら、自分の前にサングリアカードが置いてあるので、そのわきにカードをプレイ。自分の前には最初2列あるが、1つの列には同じ種類か同じ色しか置けない。写真は、おっぱいの列とサンシャイン(マッチョ)の列。ま、まぶしい!
最後にプレイしたカードによって、次のプレイヤーは4つのアクションのいずれかが禁止される。サングリアカードを盗みたいのに盗めないことがままある。山札からサングリアカードが出てきたら、手札で競りをして終了。競り落としたサングリアカードは、自分の列に付けることができる。
得点計算は、多く集めるほど得点が高い。ただし『ロストシティー』と同じで、枚数が少ないと失点になるから注意。また、サングリアカードを奪われると得点が下がる。この合計点で勝敗を競う。
最後に最も重要なルール「おっぱいアラーム」。捨て札におっぱいカードが出たら、すかさず「おっぱい!」と叫ばなければならない。言うのが遅れた人、あるいは言えなかった人は捨て札を1枚捨てなければいけなくなる。ほかの人の手番でも油断してはいけないのだ(あとスタートプレイヤーは、一番大きな声で「おっぱい」と言えた人となっている)。
5人プレイで30分。初手番にbashiさんが同色コンプリートを達成したが、その後はサングリアカードの奪い合いが起こり列がなかなか完成しない。そんな攻防をかいくぐってtomokさんが同種コンプリート。終盤は奪い合いも封じ合う展開になり、結局tomokさんが1位となった。私は序盤にサングリアカードを盗んで3列体制にしたが、3枚まで出した2列から、サングリアカードをどちらも奪われてそのまま取り返せず最下位。「おっぱいアラーム」は、みんな集中していたのでほぼ同時(その場合は捨て札なし)ばかりだったが、だんだん耳も冴えてきて、誰が最後だったかコンマ1秒で判断できるというシビアさとなった(←バカ)。
見かけによらず考えるというのは、どの種類(または色)で列を作るかを、ほかの人が集めている列を見て決めたり、どの列なら盗めそうか考えたりして手札を調整するからである。ゲームが進むにつれて出せるカードが少なくなっていくが、みんなの列が増えるので考えることは減らない。そこにときたま訪れる「おっぱいアラーム」がいいアクセントになっている。少なくとも、イラストに見とれているひまはない。
Titten Ärsche Sonnenschein
W.シュランツ/ハイデルベルガー(2013年)
2~5人用/16歳以上/30分
ゲームストア・バネスト:おっぱい・おしり・サンシャイン
豆の女王シシィ(Sissi!: Die Bohnenkaiserin)
価値が乱高下する女王
ドイツのボードゲームイベント「シュピール’13」で発売された『ボーナンザ』シリーズ新作。出版はルックアウトでもアミーゴでもなく、ウィーンのオーストリアボードゲーム博物館である。タイトルになっているシシィとは、オーストリア皇后エリーザベト(1837-1898)の愛称。50豆になっていて、やたらたくさん出てくる。そのほかの豆は18豆と20豆がおらず、イラストがオーストリア風になっている。
手札の順序を変えずに豆を植えて、山札から引いたカードをトレードして植えるというところは『ボーナンザ』と同じ。同じ豆をたくさん植えれば植えるほどお金になるが、畑は2つしかないのに、いろいろな種類の豆が出てくるので、育つ前に収穫しなければいけないのが悩ましい。
『シシィ』の特別ルールは3つ。まずどの豆を植えるにも、50豆を1枚おきに挟み込まなければならないというルール。6豆だったら、6豆→50豆→6豆→50豆……というように重ねていかなければいけない。かさが増えてお金が増えるのではないかと思ったら大間違い。手札からも、山札からも、そう都合よく交互にカードは出てこないので、植え替えを余儀なくされることが多い。
それから、手番の最後に50豆が一番上にある畑は、強制的に収穫しなければいけないこと。50豆が一番上にあると、50豆のレート(かなり安い)にしかならない。6豆→50豆→6豆→50豆ときて、6豆が出せればもっと育てて3ターラーを目指せるが、6豆がないと1ターラーに終わってしまう。
そして手番の最後に、全員が1枚ずつ補充するというルール。このため手札はみるみるうちに膨れ上がり、交渉でどんどんほかのプレイヤーに放出しないとほしい豆が出せない。
この3つのルールによって、交渉は非常に活発になる。50豆の汎用性が高いので、高レートで取引されるのだが、みんなが50豆をもってしまうと一転して価値が下がるところが面白い。交換材料はよりダイナミックで、4枚、5枚と一気にカードが行き交うこともあった。「16豆2枚と50豆2枚あげますから、50豆下さい」もう訳分からん。
5人プレイで45分ほど。最初は50豆の価値をはかりかねていたが、ほかの人の手番中に植えてかさを増やしておくことの重要性が分かると価値が跳ね上がった。手札もふんだんにあるので贈与も派手。『ボーナンザ』はシビアな計算のいらない交渉ゲームだが、かといって相手が得しすぎるのもいけない。いくら手札が余っていても、絞るところは絞り、8豆と10豆を辛抱強く育てた私が僅差で1位。
Sissi!: Die Bohnenkaiserin
U.ローゼンベルク/オーストリアボードゲーム博物館(2013年)
3~5人用/12歳以上/45分
国内未発売