『卓上ゲームデザインのビルディング・ブロック』

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

今、ボードゲーム愛好者から注目されている洋書。サブタイトルは「メカニズムの百科事典」。13のカテゴリーについて184のメカニズムが解説され、そのメカニズムを用いた作品が挙げられている。新作のインスピレーションを見つけたり、各メカニズムを使うときに特有の問題を解決したりすることを目的として作られ、初心者ボードゲームデザイナーのガイドから、ベテランボードゲームデザイナーのリファレンスまで、幅広い用途が考えられる。
1.ゲームの構造:競争、協力、チーム戦、ソロ、半協力、一人負け、裏切り、シナリオ・ミッション・キャンペーン、得点とリセット、レガシー
2.手番順:固定制、状況制、ビッド制、交替制、獲得制、パス制、リアルタイム制、区分けリアルタイム制、同時アクション選択、役割制、ランダム制、アクションタイマー制、タイムトラック制、アクショントークン・パス制、中断と連続制、手番失効、中断
3.アクション:アクションポイント、ドラフト、回復、アクションとイベント、コマンドカード、順番、順番のシェア、フォロー、オーダーカウンター、ロンデル、選択制限、バリアブルパワー、1回きりの能力、アドバンテージ、解放、系統樹、イベント、ナラティブ
このような感じで網羅的に解説されている。各項目では、そのメカニズムの定義が簡潔に述べられ、解説ではその効果や利点、注意点などを実例をもとにして行う。一項目につき2~3ページなので、気になる項目に絞ればそれほど大変ではない。
既存の傑作を分析したものなので、これらをブロックのように積み上げるだけで面白いゲームができるものではないだろう。しかし、こういったメカニズムに全く無知では新しいボードゲームを生み出すことができないのも事実だ。著者はこの本の意図として、デザインを学び、デザインについて語り、既存のメカニズムを掘り起こしてよりよいゲームをデザインしやすくすることであり、そこから次世代のボードゲームが生まれることを期待している。
ボードゲームデザインだけでなく、面白かったゲームで何が面白かったのかとか、自分の好みは何なのかとか分析するのにも使える。ボードゲーム評論にも大いに役立つだろう。
巻末にはボードゲーム名からのインデックスが付いている。これで『カタン』や『アグリコラ』などは11の項目で登場していることが分かる。傑作ばかり並ぶ中で、『ラブレター』『エセ芸術家ニューヨークへ行く』『インサイダー』『トリック・オブ・ザ・レールズ』など日本の作品が入っているのが嬉しい。
Building Blocks of Tabletp Game Design: A Encyclopedia of Mechanisms
Geoffrey Engelstein, Isaac Shalev
2019 CRC Press

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


reCaptcha の認証期間が終了しました。ページを再読み込みしてください。