静かなる侵攻
バイキングが装備を整え、難攻不落の砦を目指し襲撃するボードゲーム。ニュージーランドのデザイナーが個人出版で発表し、2017年のドイツ年間エキスパートゲーム大賞で『テラフォーミング・マーズ』『脱出:ザ・ゲーム』と共にノミネートされた。変型ワーカープレイスメント、リソースマネージメントに、ちょっとだけダイスによる戦闘を組み合わせた比較的軽めの戦略ゲームである。
手番の進行はワーカープレイスメントの変型で進む。ボード上の空いているアクションスペースに自分のワーカーを置いて、そのアクションを行い、それからボード上のすでにワーカーが置いてあるアクションスペースからワーカーを取り除いて、そのアクションを行うという2アクションを行う。したがってワーカーはプレイヤー固有のものではなく、プレイヤー間を行ったり来たりする。
基本的には、襲撃に必要な兵糧を調達し、村人を雇い、集落をひとつ選んで襲撃するという流れ。集落は手前の「港」から一番奥の「砦」へと進むにつれて、必要な物資や村人が増え、高級なワーカーを使わなければいけなくなる。集落を攻め落とす度に資源が手に入るので、これを使って戦力を上げたり、貢物をして得点を稼いだりして、次の集落を狙う。
集落の襲撃は、必要な物資と村人が揃っていれば100%成功するが、そこから得られる勝利点は武力によって異なる。武力は雇っている村人の基礎戦力やボーナス、鉄を投じて上げた武装力に、ダイスを加えて算出し、その集落に書かれた武力を上回っていれば勝利点が入る。一番奥の「砦」は高い武力が求められ、しかも高ければ高いほど得点が増えるため、周到な準備が必要となる。
戦略上重要なのが村人の特殊能力だ。使い切りで捨て札になる即時効果と、雇っている間は有効な持続効果があり、コンボも可能だ。村人を雇うコストを下げる「リクルーター」と、食料を多く調達する「フォーリジャー」、お金を多く調達する「ジュウェラー」あたりで襲撃の準備を早め、集落の種類に応じて兵糧を下げたり勝利点を上げたりする村人でアドバンテージを付ける。
しかし雇った村人はずっといるわけではない。バイキングといえばヴァルハラ。オーディン神の宮殿で、戦死した村人はここに送られる。襲撃が終わるたび、その村にドクロのコマがあると、その分だけ村人を捨てなければならない。そうすると次の襲撃のために、新たに雇ってこなければならなくなるが、最後には戦死した村人の数に応じてボーナスポイントが入るようになっている。
村人の定数は1人5人まで。戦死してメンバーが入れ替わる中でいかに態勢を立て直し、より難しい集落の襲撃に備えていくかがゲームのポイントとなる。
4人プレイで90分。思っていたよりも襲撃が早く進み、最後の「砦」だけが残される状態に。アウトポストを攻め落とすとボーナスが入る「アーチャー」を複数雇って高得点を上げた鴉さんがトップで終盤を迎えた。その差は埋めきれないかと思われたが、ドクロがたくさんあったために敬遠されて最後まで残っていた集落を最後の最後に攻め落とすことができ、ヴァルハラのボーナスで逆転。
ダイスは侵略の成功判定ではなく得点判定に使うだけなので、運の要素は抑えられ、戦略的にゲームを進められるようになっている。ワーカーがあるスペースのアクションもできる分、通常のワーカープレイスメントよりも縛りがきつくないが、ほしい色のワーカーが前の人に取られていたりもする。ほかのプレイヤーの状況も見据えてアクションの組み合わせに悩む戦術的なボードゲームである。
Raiders of the North Sea
ゲームデザイン・S.フィリップス/イラスト・M.ディミトリエフスキ
ガーフィルゲームズ(2015年)
2~4人用/12歳以上/60~120分
ゲームストアバネスト:レイダーズ・オブ・ザ・ノースシー:北海の略奪者