水の切れ目が縁の切れ目
サンチアゴという地名は聖(セイント)ヤコブから来ていて、パナマ、ブラジル、ドミニカ、キューブ、メキシカ、ブラジル、コロンビア、アルゼンチン、スペイン、ポルトガルなど各地にある。ほとんどが中南米に集中する。
このゲームの舞台となっているのは、多数のサンチアゴから少し離れたサンチアゴである。アフリカの西沖合いにある諸島の国カーボベルデの首都プライアがある島。ここに国の人口の半分にあたる24万人ほどが暮らす。同じ緯度のアフリカと比べると湿潤で、サトウキビ、トウモロコシ、バナナなどが栽培されている。
湿潤とはいえステップ気候の降雨は少なく、8月〜10月に限られる。わずかな水をめぐって、農園の経営者たちがえげつない戦いを繰り広げる。2003年にアミーゴ社(ドイツ)が発売し、メビウスゲームズで扱われていたが、現在はズィーマンゲームズ社(アメリカ)の英語版がホビージャパン経由で流通している。
毎ラウンド、人数分のプランテーションタイルがめくられ、1周限りの競りを行う。ほかの人と同じ金額をつけることはできないが、パスは可能。高い金額をつけた人から好きなプランテーションを1枚取り、自分の労働者マーカーと共にゲームボードの好きな位置に置くことができる。
プランテーションの位置で一番大切なのは、運河に接していること。水が引かれなかったプランテーションはたちまち砂漠(裏返し)になってしまう。次に大切なのは、同じ作物のプランテーションと接していること。最後に、プランテーションの広さ×自分の労働者コマの数が収入になる。この2つを両立できる場所は、そうそう見つからない。
全員がプランテーションタイルを置いた後、競りで最低額をつけた人(または先にパスした人)が1本だけ、運河を引く。誠にいやらしいのは、引く前にほかの人が賄賂を提示して、運河を引く場所を提案できるところだ。2人の利害が一致すれば、共同で同じ場所を提案できる。「こっちに引くなら3エスクード払うよ」「じゃあ私は2エスクードだけど……」「オレが2エスクード足して、4エスクードで提案します!」
運河を引く人の権限は絶対である。自分の畑に都合のよいところに引いてもいいし、賄賂の額が安ければ誰の得にもならないところに引いてもかまわない。「中途半端な賄賂だったら、ぶっぱなすよ」…悪徳!
提案が認められなかったときのために、非常用の水路を各自1本だけ持っている。これが残っている限り、「いやなら自分で引くからいいよ」と言える。ところがこれを使ってしまうと、いよいよ足元を見られることに。「そんな賄賂でいいんですかー?」「くそったれが…」
高額賄賂で揺さぶりをかける鴉さんを尻目に、幅広く相乗りして賄賂をケチる作戦。運河を引く係は魅力的だったが、よいプランテーションの獲得を優先した。大きいパプリカエリアを作った鴉さんだったが、マークされて後退。賄賂の相場が低かったこともあって、いろいろなプランテーションに相乗りした私の1位。
終盤はいくらの賄賂でいくらの収入になるか計算できるためシビアな計算が求められるが、それまではできるだけ節約して自分の有利なポジションをとっていく強かな戦略が求められる。競りも賄賂も1周だけなので、終始緊張感のある値付けが求められ、会話も弾む。精神的にすりへらされる感じも含めて、熱中できるゲームである。
Santiago
C.ヘリー、R.ペレック/アミーゴ(2003年)
3〜5人用/10歳以上/60分