ドイツボードゲーム博物館のあるケムニッツから、国際ボードゲーム祭の開かれるエッセンまでは電車で6時間かかる。ケムニッツからライプツィヒまで1時間、ライプツィヒからハノーファーまで3時間、ハノーファーからエッセンまで2時間。電車賃はインターネットの早割で片道65ユーロ。
ライプツィヒからハノーファーに行く急行インターシティで、隣りに座った家族が、おもむろにダイスゲームの『シンシナティ』をプレイし始めたのには驚いた。コンポーネントが豪華で、決して持ち運びしやすいゲームではない。1時間くらい遊んで、そのあとおやつを食べて今度はトランプ。4人がけ席は中央にテーブルがついていて、ボードゲームを広げるのにもってこいである。
降りる駅が一緒だったので、お母さんにショートインタビューをしてきた。「いつもボードゲームを遊んでるんですか?」「そんないつもというわけじゃないですよ。今日は道中子供たちが退屈するからもってきたの。」「エッセンでシュピールのメッセがあるんですが知ってますか?」「シュピールのメッセ? 知らないわ。」
普段はあまり遊ばないのに『シンシナティ』をプレイ。でもそれなのにエッセン国際ゲーム祭は知らないという家族。これだけのサンプルからは結論付けられないが、ボードゲーム人口の広がりぶりを垣間見たように思う。エッセン国際ゲーム祭の参加者は15万人。このメッセを知っているけれど来ない人、知らないけれどボードゲームは遊ぶ人を含めればこの100倍いてもおかしくない。
かつて日本でも家族連れは旅行の道中、トランプなど遊んでいたはずが、いつの間にかめいめいがマンガや携帯電話やDSなどで会話せずに過ごすようになった。そんな過ごし方を日本人ができなくなっていることに一抹の寂しさを覚えた。
(写真撮影:神尾竜一郎)