(写真と文:石川 久)
10月末にドイツで開催されたエッセン国際ゲーム際でお披露目された新作が、これから続々と国内に入ってくる。
今回のメビウス便は、ツォッホ社のゲームが2タイトル、そしてハンス・イム・グリュック社のゲームが1つ。当初候補に上がっていた「ランキング」は先送りとなり、シュテファン・ドラのファンとしてはちょっと残念である。
11月7日の江戸川ボードゲームの会で、いずれもプレイする機会を得た。
●サフラニート(ツォッホ)10歳以上/2〜4人/30分 (6点)
「ラビリンス・パズル」や、セレクタ社の子供ゲームを得意とするマルコ・トイブナーのデザイン。
ボードに自分のチップを裏向きで投げ込み、最終的にそのチップのある場所の効果が適用されるアクションゲーム。スパイスが入った皿にチップが残っていればそのスパイスを購入できる。特殊アクションが実行できるマスもあったりして、投げたチップで他のプレイヤーのチップを弾いて邪魔することも可能だ。
ブレンドカードに指定された3種類のスパイスを集めたら、そのブレンドカードと交換できる。最初に3枚のブレンドカードを獲得したプレイヤーが勝者というシンプルなルールだ。
お金の要素もあって、時にはスパイスを売却しなければならないときもある。他プレイヤーとのバッティングを考慮すると、どのチップを投げるかが悩ましい。
ボックスアート
さまざまなスパイスが登場。
ところが‥‥、全員初プレイということもあってか、投げたチップを思うようにコントロールできない。私はあまりにヘタクソで、4ラウンド目までは何のスパイスも購入できず‥‥、これには思わず涙が零れそうになった。
毎ラウンド、場にはスパイスカードが6枚補充されるので、ダブつきぎみで、特殊アクションのマスにあまりチップが収まることもなく、やや地味な展開になってしまった。コツを掴むまでは、チップの投入枚数を1枚増やしてもいいかも知れない。
チップには穴が開いていて、上から見て皿にかかってないと無効。
◎Safranito for BoardGameGeek
http://www.boardgamegeek.com/boardgame/66849/safranito
●アロザ殺人事件(ツォッホ)10歳以上/2〜6人/30〜45分 (5点)
8階建てのアロザ・ホテル。ここで2つの殺人事件が発生した。プレイヤーはこの事件を捜査する立場でありながら、犯行現場に多くの証拠を残してしまうと犯人にされてしまうリスクがある。証拠を最も残さなかったプレイヤーが勝利する摩訶不可思議な設定のゲーム。これまでに「ルッカチッタ」や「ヴァルハラ」を発表してきたイタリア人のアレッサンドロ・ズッキーニのデザインしている。
立体的なコンポーネントが圧巻
ホテルの横に調査シート(ボード)が置かれる。
フロアを重ねたら、最上階のシャフトから赤色の被害者キューブ2個を1つずつ投入。その後、プレイヤーは順番に自分のキューブ2個を1つずつ投入して準備完了。どのフロアにどのキューブがあるかは、キューブを入れたときにする「カラコロ」と鳴る音に聞き耳を立てるしかない。
頭頂部シャフト(穴)からキューブを投入。
ゲームは2つのステージに大別され、第1ステージは2つの被害者の発見が目的。手番になったら、被害者がいそうなフロアの上を持ち上げて、そこに赤色のキューブが発見できれば、同じフロアにキューブのあるプレイヤーは調査シートのフロアに同じ数だけ手元のキューブを置くことになる。ただし手番プレイヤーのキューブは置かなくていいメリットがある。 こうして殺害現場が特定されていく。
最終的に被害者と同じフロアにあるキューブは−3点。それに隣接するフロアは−2点。それ以外のフロアのキューブは−1点になる。このマイナス点の合計が最も多いプレイヤーが犯人にされ、マイナス点の最も少ないプレイヤーが勝者となって警視に昇格する。
赤色の被害者キューブ2個が発見されると第2ステージへ移行する。第2ステージでは他のプレイヤーに容疑をかけ、指定したフロアを持ち上げ、そのプレイヤーのキューブがあれば、その数分だけ調査シートにそのプレイヤーの手元のキューブを置かせる。指定したプレイヤーのキューブがないとペナルティとして自分のキューブ1個をシャフトから投入しなければならない。
または「自分の容疑を晴らす」と宣言して、調査シートに置かれたキューブを取り除くこともできる。フロアの1つ選んで持ち上げて、そのフロアにある自分のキューブの数だけ、調査シートの同じフロアのキューブを手元も戻すことができる。ただし、自分のキューブがそのフロアになければ、これまたペナルティとして新たに自分のキューブ1個を投入しなければならない。
これを繰り返して、調査シートに誰かのキューブが10個以上置かれるか、誰か1人の手元のキューブが全てなくなるかしたらゲーム終了。
私のキューブは黄色で、容疑が濃厚に‥‥、そして最後は御用(犯人)となった。
あのコンポーネントがこんなにコンパクトに!
ボックスも小さめなのが嬉しい。
◎メビウスおやじ「アロザ殺人事件」の紹介
http://mobiusoyaji.cocolog-nifty.com/blog/2010/11/post-9c74.html
◎Mord im Arosa for BoardGameGeek
http://www.boardgamegeek.com/boardgame/80006/mord-im-arosa
●ネッシーを追え!(ハンス)8歳以上/2〜5人/30分 (4点)
1994年にドイツゲーム賞(DSP)第5位に入賞した「逃げろや逃げろ」(「ライフボート」にリメイク)から随分とブランクがあるものの、このゲームが多分2作目(?)のロナルド・ ヴェテリングがデザインしたゲーム。
プレイヤーたちは、スコットランドのネス湖にカメラマンを送り込み、怪獣ネッシーを写真に収めるのが目的。ネッシーはスタートプレイヤーを含めて3人のプレイヤーが裏向きに出したカードの数値の合計分、ネス湖を時計回りにぐるぐると回る。次にネッシーが浮かび上がるであろう場所を予測して、湖岸にカメラマンのコマを配置する。このカメラマンのコマには数値が書かれていて、ネッシーが現れれば、その数値が得点になる。
ぴったりとカメラマンの前にネッシーが来れば写真が撮れる。獲得した写真カードは基本1枚1点になり、頭、胴体、尻尾が集まれば10点のボーナス得点になるところが面白い。
ネッシーを3分割で撮影!
ボックスアート
ネッシーは湖をぐるぐると回っている。
ネッシーは湖を15マスかけてう1周する。3人のプレイヤーの出すカードの最大値(5×3枚)は15マス。これが特殊アクションで変更される可能性があるが、3人のプレイヤーが出したカードを読むという点では、「手本引き」のような心理戦の感覚に近く、ルーレットを当てるようなギャンブル性もある。
基本ルールでは運の要素が強いので、このゲームには2つのヴァリアント・ルールが予め用意されている。まるで「フレスコ」のように、拡張セット的なコンポーネントまでもが内包されている。これを導入すれば、より戦略的なゲームを遊べるよう工夫されている。
またルールブックには、「最近ネッシーを見たプレイヤーがスタートプレイヤー」「同点の場合、キルトを着たプレイヤーの勝ち。それも同じ場合その下に何も着ていない人の勝ち」というようなユニークな記述も見られる。
時期を同じくして、ゲームマスター社でもネッシーをテーマにした同名ゲームが発表されているので、これはネッシー・ブームの再来であろうか?
◎Loch Ness for BoardGameGeek
http://www.boardgamegeek.com/boardgame/85243/loch-ness