ドイツゲーム賞と日本語版

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ドイツゲーム賞が昨日発表された。国内の取り扱い状況を見ると、10位以内で日本語版が発売されているものが4タイトル(ただし『ルアーブル』は未発売)、しかも上位3位が全て含まれている。
ドイツゲーム賞を受賞したからといって売り上げが伸びるわけではないと、ハンスのブルンホファー社長は言っていたが、それはドイツでの話。コアなフリークによって小さい市場が成り立っている日本では、ドイツゲーム賞は売れ筋の大きい目安となる。わずか1年以内で人気を先取りしたホビージャパンの先見の明は素晴らしい。
現在、日本語版がブームを迎えている。ホビージャパン、アークライト、ニューゲームズオーダー、メビウスがこぞって日本語版や日本語箱を手がけ、普段あまりボードゲームを遊ばない層にも手に取りやすくなっている。一方のメーカーとしては、日本語版によって流通を押さえられるというメリットがある。
韓国のコリアゲームズが、『キューバ』とか『プエルトリコ』とか、大きなセールスが見込めないものまで韓国語版を制作したのは、流通を押さえる目的があったからだと言われている。英語版やドイツ語版ならばどのショップも仕入れられるが、一旦韓国語版を作ってしまえば流通を一本化でき、その元締めとなって事実上の独占ができる。
ただし相当なロット数を作るのは売れ残るリスクを伴う。事実コリアゲームズはボードゲームブームの下火と韓国経済の不況で韓国語版化をストップさせている。
しかし、日本語版が出るようなゲームが、ドイツでも人気だったというと少し語弊がある。非ドイツ圏のメーカー、リオグランデ、ファンタジーフライト、ズィーマン、デイズオブワンダー、アスモデ、イスタリ、チェコゲームズなどが勃興し、それに伴ってドイツ圏のメーカーの凋落しているという状況を見なければなるまい。
ドイツ圏のメーカーは、90年代の栄光にまだ浸っているのか、同工異曲の作品が少なくない。ヒットした作品は、フランスゲームの『ケイラス』がもたらしたワーカープレイスメントを取り入れたものばかり。ドイツゲームデザイナーのカサソラ氏が「デカダンス(頽廃)」と述べ、ドイツ年間ゲーム大賞審査員のバルチ氏が「ドイツに新しさは全くない」と嘆いていたように、ゲーム好きは非ドイツゲームにどんどん目を向け始めている。
ホビージャパンが日本語版を手がけたのは、実はこうした非ドイツ圏のゲームであった。それがドイツの状況とマッチしていたため、こうして上位独占となるに至ったと言える。同時に日本でも、非ドイツ圏のゲームの魅力が幅広く知られ始めているということだろう。
ホビージャパンはこれからも毎月か隔月に1タイトルくらいずつ、日本語版を検討しているという。そのメーカー選定に狂いがなければ(非ドイツ圏のメーカーは当たり外れが大きい)、上記のような情勢が手伝って、また来年のドイツゲーム賞も、ホビージャパンのゲームが上位を占めることになるのではないかと予想している。そのためにも、翻訳の質の向上は急務だ。

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