凶悪なウィルスに強力な助っ人
今年、本体と同時に日本語版が発売された拡張セット。3つのルールが入っていて、選択的に導入できるのと、ウィルスのコマを入れられるシャーレが入っているのが売りだ。今回は5人。3つのうち「バイオテロリスト」は3〜4人プレイで入れることが推奨されているので、「猛毒株」と「変異種発見」を加えた。
これだけならば、ただでさえ人類の敗北に終わりやすいのが一層厳しくなるわけだが、対抗するほうも強力な特殊能力カードが加えられている。強力なウィルスVS強力な特殊能力、世界を制するのは誰か。
猛毒株のルールは、エピデミックカードを差し替える。最初にエピデミックカードが出たとき、盤面に最も多いウィルスが猛毒株となり、薬を作るのに必要な都市カードが1枚増えたり、移動する都市の除去が必須になったりとかなりてこずるようになっている。効果は1回きりではなくてずっと続き、しかもそれが重なっていくのがつらい。
変異種発見では、変異種出現のカードを加え、このカードをめくると紫のウィルスが登場する。以降、変異種のイベントでじわじわと増えていく。コマの数がたった12個しかなく、盤面に全部出たら負けであるから、プレッシャーが大きい。治療薬は、どの色の組み合わせでも5枚あればよいが、そのうち1枚は紫のウィルスがある都市でなければいけないというのも、地味にきつい。
今回大活躍だった特殊能力は「トラブルシューター」。自分の手番の最初に山札から何枚かとって自由に並べ替えられるのと、直行便で使ったカードが捨て札にならないという能力はどちらも超強力で、人類の勝利に大きく貢献した。
もっとも個人の力で勝てるものではなく、全員が細かいところで無駄のない行動を行い、治療薬のために都市カードを効率よく受け渡ししなければならない。知恵を出し合ったうえで、カードのめくり運にできるだけ左右されないように行動する。『パンデミック』は拡張なしでも何度も遊べる十分に面白い作品だが、この拡張が新しい次元を開いたことは間違いなさそうだ。
Pandemic: On the Brink
M.リーコック、T.リーマン/ズィーマンゲームズ―ホビージャパン(2009)
2〜5人用/10歳以上/45分