喝! 仏性ありやなしや?
師匠が決めた「仏性」を直感と推理で見つけ出すゲーム。以前『マスターマインド』という配列と色を推理するゲームがありましたが、それよりもより複雑に、そして多人数向けになっています。
師匠(=親)ははじめに公案(=規則)を設定し、それに従ってコマを並べます。写真の例では「緑が使われていない」というのが公案で、左側が公案に合っているもの、つまり「仏性アリ」、右側がそうでないもの、つまり「仏性ナシ」となります。
公案の要素として使えるものはいろいろあります。『マスターマインド』は8色と4つの順序だけでしたが、禅道で使うピラミッドのコマには4色、大中小、わきに刻まれたポッチ(穴)、直立・横・どちらでもないという向き、他のコマを指しているか否か、接地しているか否かという選択があり、さらに「〜でない」という否定的な規則や、奇数・偶数個あるなどの選択を入れていけば無限の可能性があります。実際に使われるのはそのうち1つか2つの要素の組み合わせで、それだけでも難易度は十分です。
弟子(=子)は1人1人、師匠の公案を予想しながらコマを並べます。そして師匠に仏性があるかないかを質問できます。仏性アリなら白い石、仏性ナシなら黒い石。しばらくこれを繰り返し、場にさまざまなオブジェが並ぶのを観察していると、次第に公案が分かってくるでしょう。
さて公案の予想がついてきたら、師匠にチャレンジします。当たっていればゲーム終了、外れていれば師匠は新しい反例を1つ作ってゲームを続行。したがって公案を見つけるのは早い者勝ちになるわけですが、チャレンジするためには、解答権を得なければなりません。それが「問答」です。
自分の番にコマを並べたら「問答」を宣言、そのオブジェに仏性があると思うならば白い石を、ないと思うならば黒い石を全員が握ります。一斉に公開してから、師匠が正解者全員に緑の石をプレゼント。これが解答権となります。他の人に解答権を取らせないようなうまいオブジェを作るのも腕の見せどころ。でもえてして、自分でもよくわかっていないのに見切り問答だったりするのですが……。
要素がたくさんあるため、いくつかの可能性を絞り込んでいくというよりは、直感的に思ったことを確かめていくという推理に近い感じがします。面白いことに、公案がまだまだはっきりしない状態でも、直感的に仏性があるかないか何となくわかります。これは言語化されていない前意識下で解答が形成されつつあるということかもしれません。「ありそう」「なさそう」という直感は解答を早く見つけだすために大切なのです。ただし、その直感が外れてしまうと、修正するのがたいへん。
相手を出し抜かなければならない焦りの中でじっくり推理をするという、静的かつ動的な頭の使い方が新鮮でした(相当疲れましたが)。アブストラクトな物体の中に隠された法則を探すというシステムが、参禅という雰囲気をよく出しています。ちなみに本物の禅問答では「片手で拍手する(仏性アリ)」に対して「花をかざしてニッコリする(仏性アリ)」が答えになるなど、仏性の有無は別の実例で答えることが多く、その論理は日常を超越しています。筆者も禅宗の僧侶として、禅問答の儀式をしたことがありますが、すべて台本通りでした(笑)。
Zendo
K.ヒース/ルーニーラボ(1997年)
3〜5人用/8歳以上/60分