ボードゲーム市場のトレンド

~いくつかの実例に基づく総合的考察~

―ヴォルフガング・クラマー氏のレポート―

ボードゲームマーケットの状況は常に変わり続けている。2000年にはまだ正しかったことが、2004年現在、全く間違っていることもある。どうしてそうかというと、市場に参加している人が皆、同じあるいは似通った行動をするからである。全てのメーカーが同じサイクルを繰り返している。以下に実例を示そう。

要求の多いボードゲーム

90年代半ばまで要求の多いボードゲームは商品価値がないとされていた。「エルグランデ」をどこかのメーカーから発表するのはたいへん困難があった。これが「カタンの開拓者たち」の成功で急激に変化する。「エルグランデ」もそのおかげで成功したのである。「カタン」以前、要求の多いボードゲームに関心をもつメーカーはほとんどなかったのに、その後突然全部のメーカーが要求の多いボードゲームに大きな関心を寄せ、どのメーカーも毎年1タイトルはその手のボードゲームを発売した。この結果、毎年20タイトル以上の要求の多いボードゲームが登場したが、「カタン」ほど高い需要をもつには至らなかった。1タイトルあたりの販売数はがっかりするものだった。たくさんのよいボードゲームが作られては消えていった。そのためメーカーは要求の多いボードゲームを見放すようになった。要求の多いボードゲームの数は2002年に明らかに落ち、2003年にはドイツ市場にほとんどなくなってしまう。現在は再びタイトル毎の売り上げが増えつつある。

※要求の多いボードゲーム(Anspruchvolle Spiele)……ルールが・手番にできることが多く、したがって重くて時間がかかるゲーム。

クイズゲーム

80年代終わりに「トリビアル・パースート」の潮流に乗ってたくさんのクイズゲームが市場に出た。しかし生き残ったのはほんの少ししかない。この手のボードゲームの種類が多すぎたからである。90年代半ばにこのトレンドはさらにしぼんだが、2001年ごろ「クイズ・ミリオネア」で再び盛り返している。

カードゲーム

90年代半ばにカードゲームのブームが起こった。突如として全メーカーがカードゲームのラインナップを増やした。主要メーカーでカードゲームをラインナップに加えなかったところはない。しかし売り上げはたいていの場合がっかりするものだった。カードゲームがそんなにたくさんあっても、それに見合う需要がなかったからである。結果として90年代終わりにこのブームは止み、メーカーの中にはカードゲームをやめたところもあった(ジャンボ、クイーンなど)。

コレクタブルカードゲーム

「マジック」は世界的な成功を収め、コレクタブルカードゲームのブームを起こした。市場では短期間のうちに20種類のコレクタブルカードゲームが出た。しかしその中で生き残ったのはわずかしかない。「マジック」はその間にピークを過ぎたが、依然として市場にうまく定着している。「ポケモン」は1999年から2001年までコレクタブルカードゲームとしては大成功を収めたが、それ以降は目立っていない。

人気テレビ番組・映画・書籍に基づくボードゲーム

人気テレビ番組から生まれたボードゲームを、ライセンス商品として市場に出す試みは後を絶たない。このようなボードゲームが全てボードゲーム市場でも成功するとは限らない。だが特にうまくいったのはクイズゲーム「クイズ・ミリオネア」で、2000年から2002年までベストセラーだった。その後、売り上げは急激に落ち込んでいる。同様に「指輪物語」からライセンスを取ったボードゲームが大成功を収めたが、それも最初に出た何点かだけである。映画三部作によって3年間ホットなテーマだったにも関わらず、本当に成功したのは最初の何点かだけで、しかも比較的短期間だった。それに対して「ハリーポッター」をテーマにしたボードゲームはほとんど成功していない。この手のライセンスものを開発するデザイナーにとって、この仕事はリスクになる。というのも、キャラクターのライセンス料でコストがもうかなりかかっており、デザイナー料が半減するからである。それで売れないとあっては、デザイナーの報酬はほとんどなくなってしまうだろう。この手の人気テレビ番組・映画・書籍に基づいて製作されるボードゲームは、寿命が短い。

2人ゲーム

コスモスが1997年に「2人用のボードゲーム」シリーズを始め、相当の成功を収めた。2003年には、同様にこの手のボードゲームをラインナップに入れるメーカーがたくさんできたため、これまでにないほどの2人用ゲームが出た。しかしこのトレンドは2004年に明らかに落ち込むことが予想される。

木製子どもゲーム

ハバ社が木製のゲームで成功を収めたため、2003年にはこれまでにないほどのメーカーが木製のゲームを出した。さらに発展することが確実である。

トレンドはどのように進行するか

過去にはこのようなトレンドがたくさんあり、どれも同じように進行した。
1.1~2タイトルの成功したボードゲームがトレンドを作る
2.全メーカーがトレンドに乗る
3.たくさんの後続が生まれる
4.市場が相当うんざりする
5.トレンドがしぼむ。メーカーはその種のボードゲームを手放す。生き残るのは1~2タイトル―たいていはトレンドを作ったゲームである

その他のトレンド

過去にあったトレンドは、例えば経済ゲーム(モノポリー)、アルファベットゲーム(スクラブル)、犯罪ゲーム(スコットランドヤード、アンダーカバー)、コミュニケーションゲーム(アクティビティ、タブー、ジェットコースターに乗ったカバ)など。

結論

1.過去の実例から、トレンドの後を追いかけるのはあまり意味がないことがわかる。トレンドに乗りたければ、トレンドが始まってすぐに乗らなければならない。
2.1つのトレンドで生き残るのはトップゲームだけである。
3.トレンドにあるボードゲームだけを製作するところは、トレンドが崩れたときにかなりの経済的問題に直面する。
4.同じサイクルで行動するところは、新しいトレンドを創出せず、ロングセラーをラインナップにもつことはない。サイクルから外れて行動するメーカーは少ない。
5.長期的に成功するのは、新しいトレンドを生み出す可能性を秘めた、新しくてオリジナルなボードゲームをいつも発売しているメーカーだけである。

この5点はメーカーだけでなくデザイナーにもあてはまる。

2004年3月14日
ヴォルフガング・クラマー


Kramer, Wolfgang. “Trends auf dem Spielemarkt“. Kramer-Spiele

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