コスプレ女性店員とゲームやカラオケができる大阪のアニメバーで、風営法違反の疑いで店長が逮捕された。女性店員に客の男子大学生とバーカウンター越しに談笑させるなどした疑いで情報提供を受けた警察署が捜査し、店内や事務所を家宅捜索。店長は「接客をさせないと売り上げが出なかった」と容疑を認めているという。警察署は店長が経営するコンセプトバーやメイド喫茶でも、違法な接客がなかったか調べている。
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この事件はアニメバーで起きたことだが、ボードゲームカフェ/バーも無縁ではない。一軒摘発されると、前例ができて全国に波及する可能性がある。ボードゲームカフェ/バーを起点としたボードゲームシーンのさらなる拡大のために、関係者とお客の双方に注意を喚起したいと思う。
知人が開いたボードゲームカフェが、地元の新聞に取り上げられた翌日、早速警察官が訪ねてきた。ボードゲームカフェという業態が珍しいため手探りだったが、司法書士とも連絡を取って協議した結果、次のような項目を遵守することで決着が付いたという。
- 店員はお客と一緒に遊ばないこと
- インストは最小限に留めること
- 午前0時までに営業を終了すること
- 店の前の屋外で営業しないこと
この指導には根拠がある。警察庁生活安全局長名で全国の警察に出されている「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準(PDF )」である(風俗営業というと性風俗を思い浮かべる方も多いと思うが、ネットカフェ、ゲームセンター、パチンコ店などを含む広い概念である)。このうち「接待」の項目がボードゲームカフェ/バーに大きく関係する。
【接待とは?】
接待とは「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」と定義される。「営業者、従業者等との会話やサービス等慰安や歓楽を期待して来店する客に対して、その気持ちに応えるため営業者側の積極的な行為として相手を特定して興趣を添える会話やサービス等を行うこと」「特定の客又は客のグループに対して単なる飲食行為に通常伴う役務の提供を超える程度の会話やサービス行為等を行うこと」と言い換えられている。
【接待の主体】
接待の主体は「営業者やその雇用している者」や「営業者との明示又は黙示の契約・了解の下に客を装った者」である。また「接待は、通常は異性によることが多いが、それに限られるものではない」とされる。
【接待の判断基準】
接待の判断基準はいくつかに分けられるが、そのうち談笑・お酌等「特定少数の客の近くにはべり、継続して、談笑の相手となったり、酒等の飲食物を提供したりする行為」、遊戯等「特定少数の客と共に、遊戯、ゲーム、競技等を行う行為」が接待に当たるとする。一方、「客の注文に応じて酒類等を提供するだけの行為及びこれらに付随して社交儀礼上の挨拶を交わしたり、若干の世間話をしたりする程度の行為」は接待に当たらず、「客一人で又は客同士で、遊戯、ゲーム、競技等を行わせる行為」は直ちに接待に当たるとはいえないとする。
これらを適用すると、店員がお客とボードゲームをすることは、「営業者やその雇用している者」が「特定少数の客と共に、遊戯、ゲーム、競技等を行う行為」となり、完全に接待である(接待プレイか、ガチプレイかという話ではもちろんない)。店員のインストについては「特定少数の客の近くにはべり、継続して、談笑の相手となったり、酒等の飲食物を提供したりする行為」が適用されないよう(「若干の世間話」程度に収まるよう)、短時間で事務的に行うことが必要となる。ルールが多くてインストに時間がかかるゲームや、実際にコマなどを動かしながらのインストは注意が必要だ。
接待を行うには、キャバレー・スナック・パブ・キャバクラなどと同様、警察署の公安委員会から「1号(社交飲食店・料理店)」の風俗営業許可を取らなければならない。無許可営業で接待をすれば風営法違反となり、「2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金、又はこれらの併科」が課せられることになる。件のアニメバーはこれに該当したものと見られる。
件のアニメバーでは女性店員がコスプレをして談笑していたが、接待の主体が異性に限られるものではなく、接待かどうかは服装から判断されるものではないため、男性店員が普段着で一緒にプレイしても、接待でないと言い逃れることはできない。
以上のように、店長や店員がお客とボードゲームをするのは接待に当たるので無許可でしてはいけないことと、インストは内容によって接待とみなされる恐れがあるので短時間で事務的に行うことを心がけるというのが本稿の結論である。
そんなに厳格にしなくても、ツイートなどしなければ警察に知られないだろうと思う方もいるかもしれない。しかし件のアニメバーでは情報提供から警察が動いている。警察に情報提供をするのは、お客さんかもしれないし、近隣のライバル店かもしれない。どこに目があるのか分からないのである。また、このような法律が新しい業態であるボードゲームカフェ/バーに適用されるのはおかしいという方もいるかもしれないが、その判断を行うのは我々ではなくて警察であることを忘れてはいけない。
なお以上のような接待行為の基準は飲食店に適用されるものなので、ショップやプレイスペースであれば、店員がお客とボードゲームをすることは全く問題はない。