アメリカのボードゲームニュースサイト「ボードゲームワイヤー」は、アメリカのボードゲーム業界で、トランプ関税による値上げ問題を報じている。世界中のボードゲームの多くが現在、中国で製造されているのは周知の事実だが、トランプ政権は2月4日、中国からアメリカに輸入されるすべての製品に10%の関税を課した。これにはボードゲームも含まれ、値上げは避けられない状況だ。
アルケインワンダーズのR.ゲーストリンジャー社長による試算によると、ファミリーゲームを製造コスト10ドルで1万セット製造すると輸送コストは1セットあたり1.5ドル。合計11.5ドルの約5倍がメーカー希望小売価格で59.99ドル。その60~65%でディストリビューターに販売するため、出版社の取り分は20.99ドル。製造・輸入コストを引いた利益は9.49ドルとなる。関税は製造コストをもとに計算されるが、希望小売価格はその約5倍なので5~10ドル(750~1500円)ほどの値上げになるという。
関税分まで5倍にしたら便乗値上げではないか?と思われるだろう。しかしもともとボードゲームは希望小売価格設定が低く設定されている上(原価の7倍という業界も)、近年は製造・輸送コスト自体の増加もあり、出版社は価格転嫁をせずに利益を減らして対応してきた現実がある。また関税は報復措置としてさらに上がる可能性があり、関税による値上げが消費者に受け入れられないとするとここまで値上げはできないかもしれない。「カミソリのように薄い」利益になり、新作の開発にも影響が出る。
影響はアメリカ国内にとどまらない。オランダのボードゲーム出版社スプロッター・スペレンは、長年のパートナーであったアメリカのディストリビューターから、関税の不確実性を理由に『インドネシア』の大量注文をキャンセルされたことを発表した。このため部数を大幅に少なくして製造することになるという。
トランプ大統領が中国製品に高い関税をかけるのは、国内産業を保護するためである。アメリカ国内にも印刷工場があるが、中国工場のような低コストと少部数製造に対応できておらず、新しい工場を作るにはコストも時間もかかる。その間に廃業やビジネスの国外移転が進めば、新しい工場の需要はなくなるだろう。アメリカ国内のボードゲーム産業の衰退を防ぐため、ボードゲーム業界団体GAMAは予算を付けてアドボカシー活動やロビー活動を行い、議員にはたらきかけるとしている。
・BoardGameWire: “Despair. Hopelessness. Frustration. Sadness”: board game professionals fear for industry’s future under “reckless” Trump tariffs – but GAMA plans to fight back
・BoardGameWire: “Board games are about to get more expensive”: Arcane Wonders president Robert Geistlinger on tariffs, razor-thin margins and the math of producing games
・BoardGameWire: Retailers step in to help Dutch publisher Splotter after US distributor GTS cancels ‘large order’ over tariff uncertainty