長くてドラマチックな物語
バッグビルディングの名を世に知らしめ、拡張が2タイトル出た『オルレアン』を、もっとじっくり楽しみたい人向けに今年発売されたビッグボックス(3kgある)。飢饉やペストを乗り越えてきたオルレアンの歴史に沿ってゲームを進める。
バックグラウンドストーリーが付いており、各自が小冊子をもってゲームを進める。ルールブックは24ページ、ストーリーブックは16ページと12ページあり、さらにストーリーカードがあってテキスト量は多い。ゲームストア・バネストがゲームマーケットに日本語訳付き輸入版を間に合わせたが、日本語ルールがどっさり付いていた。
2つのエピソード「最初の王国」「王様の恩恵」があるが、どちらも「時代」という要素が加わった。時代が変わると、バッグから引けるチップの枚数や、何かを建設したときにもらえる名声ポイントが変わる。上手に時代を渡り歩いて、勝利条件を達成する。
基本的な流れは『オルレアン』と同じで、袋から人物チップを引き、アクションスペースに配置して、揃ったアクションを実行する。アクションの中で新たな人物チップを手に入れたり、逆に人物チップを「慈善事業」に送りこんだり(廃棄)して、バッグの中の構成を整えていく。場所タイルがだんだん加わり、アクションの選択肢が増えるとともに、必要な人物チップも少しずつ変わる。
「最初の王国」では、条件を達成したプレイヤーから好きなタイミングで次の時代へ移ることができる。時代によって引ける枚数が減ったり、特定のアクションができなくなったりするので、条件を達成できても前の時代のほうが有利だと思えば留まっていてもよい。ただし先に進むと、他地域を整復できる騎士や、ジョーカーになる修道僧を入手できるようになる。
勝利条件は名声ポイントではなく、「井戸を1つ設置する」「洗礼室を1つ建設する」「人物の使節団を1つオルレアンに送り出す」「港を1つ建設する」「教会を1つ以上建設する」「市民を20人以上集める」「商品とお金を合計30金分以上集める」を全て(汗)、最初に達成することである。これを8つの時代にわたって少しずつ達成していく。
特に大変なのが「市民20人」。市民は「慈善事業」を完成させたとき、地域・村・教会を規定数支配したとき、「飢饉」または「ペスト」の時代に最初に入ったとき、名声トラックを進めたとき、場所タイル「議会」を使ったときに1人ずつ手に入る。いずれもゲーム中通して頻繁に手に入るものではないため、20人というのはかなり道程が長い。
そんなわけで4人プレイ・インスト抜きで5時間。市民に加えて、教会の建設のために必要な木材が品薄で苦労した。木材をはじめ商品は、時代ごとに供給されるが限りあるため、品切れになることが多い。特に木材は何を建設するにも必須のため、誰かが買い占めてすぐになくなってしまう。「浴場」を上手に使いこなした鴉さんが1位。私は「議会」で市民を安定供給できたものの、開拓者に支払う食料がなくて時代VIに進むのが遅れ、教会建設まで漕ぎ着けられなかった。それでも終盤は一手番を争う展開になったので、最後まで飽きることなく楽しめる。もうひとつのストーリー「王様の恩恵」はもっと短いようだ。
Orléans Stories
ゲームデザイン・R.シュトックハウゼン/イラスト・K.フランツ
dlpゲームズ(2019年)
2~4人用/12歳以上/60~180分