第3回ゲームデザイン討論会「アート&ゲーム:ゲームは”芸術”たりえるか!?」を終えて

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2月12日、朝日新聞社メディアラボ渋谷分室にて、第3回ゲームデザイン討論会が開かれ、パネリストとして参加してきた。テーマは「アート&ゲーム:ゲームは”芸術”たりえるか!?」デジタルゲームとアナログゲーム双方を、アートという観点で架け橋してみようという企画である。
セッションは3つに分かれた。第1部「映画性はビデオゲームに何をもたらしたか」では東京大学特任研究員の鈴木香織氏が2000年代前半に生まれた「映画的なゲーム(ゲーム中にムービーが入る)」の成功と失敗について語った。聞き手は数々のビデオゲームを手掛けてきた黒川文雄氏と渡辺範明氏。
当時、ムービーが流れている間は、ゲームを操作できなかった。ここからアートは鑑賞するものであって受け身であり、コントローラを操作して参加していくゲームと対立するということが浮かび上がった。それと同時に、ムービーによってゲームに物語性が加わったという。アートはゲームの物語性を高める作用があることが分かった。
第2部「花札―歴史あるアートワーク」ではゲーム研究家の草場純氏が、花札の絵柄が当時の文学をもとにしていると当時に、その絵柄が歌舞伎などでも用いられるという、ゲームと社会の相互影響について発表した。聞き手はAI研究者の三宅陽一郎氏と、当サイトの管理人である。
花札の絵師の名前がクレジットされることは現代までなかったが、現代においてはデジタルゲームもアナログゲームも、イラストレーターやグラフィックデザイナーがクレジットされ、作家性がクローズアップされるようになっている。アナログゲームでは、ドイツで優れたコンポーネントを顕彰する「グラフ・ルド(GrafLudo)」賞の存在や、機能性を兼ね備えたアートワークで評価されている長谷川登鯉氏が紹介された。
第3部「ゲームデザインと物語性―デジタル空間が開くゲームと芸術の素敵な関係」では東京電機大学の勝又洋子氏が、ドイツの古典文学をゲーム化する授業を紹介。聞き手は再び、渡辺範明氏と当サイトの管理人である。
どんな話でもゲームにするとバトルになってしまうという話から、ゲームデザイナーが物語を再構成するときに行う新たな意味づけに広がり、『ワンスアポンアタイム』が取り上げられた。また物語の構造とゲームの構造の不一致から、ゲームにも回収されない伏線や、フレーバーテキストや全部ユニークなイラストなどがあってよいという意見も出た。
デジタルゲームのアートは写実性を求めていくのに対し、アナログゲームのアートは抽象性を高めるという正反対の方向がある。写実性を高めれば物語性が浮き立ち、抽象性を高めれば想像力がかき立てられる。たびたび取り上げられた物語性や、ゲームの主体性と没入感など、今後につながる面白い話も出てきた。
参加者はデジタルゲームメイン・アナログゲームメイン両方で、テーブル上にあった『枯山水』を知らなかったという方も。「アート」の多義性もあって、実用的な話というよりは、概念的な話が多かったように思われるが、参加者の参考に少しでもなったとすれば幸いである。

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