朝日新聞の2月20日朝刊にて、北陸先端科学技術大学院大学の池田心准教授による「ヒトを「快勝」させる電脳」という記事が掲載された。「エンタテインメント・ゲーム情報学」という研究分野で、適度な手加減で気持ちよく勝たせてくれるコンピュータの開発をしているという。これまでの強いコンピュータの開発からの大きな転換である。
・朝日新聞:変わり種研究、地方大キラリ 国の「科研費」活用、さかんな2大学は
うまく負けてあげるという機能は、「あからさまな手加減と気づかれる手は打たず、シーソーゲームを演じた後に試練や好機を与えて「自分で勝った」と思わせる」もの。そのため、あらゆるパターンを記憶させ、その中から人間が選ぶ確率の高い自然な手を導き出す。また、勝率が高すぎると見込まれるとわざと不利になる手を打ち、逆に低すぎると見込まれれば良い手を選ぶ。コンピュータにとっては最善手を探す以上に難しい作業だろう。
拙著『ボードゲームワールド』の座談会で、ボードゲームに興味のなかったふうかさんをkarokuさんが夢中にさせた秘訣として「見せ場プレイ」を紹介している。手を抜かずに接戦で勝つ展開を、あくまで自然に作ること。これは相当の経験者でないと難しいことだが、初心者や子どもと遊ぶときは、ぜひ心がけたいものである。
先日9歳の長男と将棋を打った。小学生時代以来30年ぶりの将棋で下手くそだが、ボードゲーム経験を生かして2,3手先を読むくらいのことはできる。そこで、思いつきで打つ、取ったコマはできるだけ使わない、長男がうっかりした手を打ったら戻すなどの隠しハンデをつけて、そこそこの接戦を楽しむことができた。2枚の龍王に挟まれ、王将にくっついていた金銀がはがされ、裸で逃げたときは負けるかと思った。
ほかにも、次の手を打つまでの「間」を適度にするという機能もある。「すぐに打ち返すとおざなりになり、必要以上にじらすとストレスを与えてしまう。」長考もよくないが、早打ちも相手によくない印象を与えるということをよく踏まえたものだ。こういう研究を通して、ボードゲーム愛好者もどのようなプレイをすると楽しめるか見えてきて興味深い。