(写真と文:石川 久)
ゴールデンウィークはゲームサークル主催の合宿に参加されて、テーブルゲームに明け暮れた方もいらっしゃるのではないだろうか。
時期こそ異なるが、ドイツでも「プフェファークーヘル」というイベントが行われ、300名以上もがテューリンゲン州のホテルに集まり、新作ゲームを1週間遊び倒して、その人気投票を行っている。今回のメビウス便の「ランカスター」が3位、「パンテオン」が6位にランクインしている。
5月15日のボードゲームサークル「まんまる」にて、いずれもプレイすることができた。つい先月に旗揚げしたばかりのサークルではあるが、60名を超える参加者が集い盛会であった。
◎Pfeffersäcke 2011
http://www.pfeffersaecke.de/PK/PK2011/PK2011.htm
●パンテオン(ハンス・イム・グリュック)10歳以上/2〜4人/90分(8点)
ハンス・イム・グリュック社長のベルント・ブルンホファーが、「サンクトペテルブルク」「ストーンエイジ」に続いて発表した新作。クレジットされたミヒャエル・トゥメルホファーとは氏のペンネームである。
ブルンホファーは、1946年7月27日生まれの64歳。1983年に妻のマグレットと、「アラカルト」のデザイナーとして知られるカール・ハインツ・シュミールと共同してハンス・イム・グリュックを設立。これまでに数多くの名作をリリースしてきた。
風格漂う「幸せのハンス」社長
新たなゲーマーズゲームが誕生!
「パンテオン」とは、ギリシャ語で「全ての神々」を意味する言葉である。プレイヤーは神々の恩恵を受けつつ、地中海沿岸に勢力を広げ、モニュメントの柱を建設するのが目的。
ゲームは6つのエポックに区切られ、1つの民族が繁栄しては衰退する。「ヒストリー・オブ・ザ・ワールド」(「ヴィンチ」or 「スモールワールド」)の影響が大きく見て取れる。
それぞれのエポックでは、民族カードの1枚がめくられて、ひとつの民族がボードに登場する。獲得物タイルが袋から引かれ、その民族のマークが描かれたマスへと配置したら、それぞれの民族によって異なる特殊効果もここで発動する。
プレイヤーのコマは、共通のストックから一旦自分のストックへと持ってこないことにはボードに配置できない。「エルグランデ」などにも見られるシステムだ。
コマの配置には「移動」というアクションを選択すれば実行でき、足型の大きなコマを受け取り、これにより1マス分を移動できる。さらに移動カードを追加してプレイすれば、カード1枚につき2マス分の移動が行える。
エポックの民族のスタート地点には神殿が置かれ、プレイヤーはこれを起点に移動を行わなければならない。コマは神殿か自分のコマに隣接していなければならず、「ティタニア」とも同じドーン・ウォークが採用されている。さらに1つのマスには2つのコマしか置けない制限があり、後から置くプレイヤーには追加コストがかかる。早い者勝ちの競争原理が自然と生まれる。
手番プレイヤーが移動を終えたら、他のプレイヤーも時計回りの順番で移動アクションを行う。まるで「プエルトリコ」の役職選択のようだ。手番プレイヤーには、足型の大きなコマの1マス分の特典があるというわけだ。
ボードゲームによく登場する地中海沿岸
足跡を模したコマが配置されていく
各エポックが終了するごとに、ボードに配置した足型のコマは取り除かれてしまうが、柱のコマだけはそのままボードに残され、次のエポックでネットワークを伸ばすのにも利用できる。
神タイルを獲得しても恩恵と得点が入ってくるので、こちらも侮れない。神タイルの獲得には捧げ物が必要で、タイルによっても組み合わせや数が異なる。捧げ物カードは使うと捨て札になるが、捧げ物タイルはそのまま保持して、次の手番にも再利用できてしまう。だが、これはお金で購入するしかなく、さらにお金を積めば、その価値をグレードアップできる。地獄の沙汰も金次第である。
第3エポック終了時には中間決算が起こり、ゲーム終了時と同様にボードに配置した柱の合計数に応じて得点が入る。柱が多ければ多いほど1本あたりの得点が高くなる仕組みだ。
ルール量はメビウス訳で20ページ、そのルール説明には45分を要した。第1エポックだけで30分が経過したが、その後の収束性は悪くなかった。全体のプレイ時間は2時間程であった。
これまでの傑作ゲームの長所をうまく盛り込んで、ブルンホファー流にアレンジされた「シビライゼーション」とも言い換えることができるのではないだろうか。
この日、このゲームを2回続けて遊ぶこととなった。というのも、連続手番が行える神タイルの効果が使い捨てなのを何度も使用できると間違って説明したからだ。これによりゲームバランスが崩れてしまった。お付き合い下さった方には申し訳なく、この場を借りてお詫び申し上げたい。
◎スコア ※敬称略
道化師 59点, atog 73点, みずる 71点, 石川 54点
◎Pantheon for BoardGameGeek
http://www.boardgamegeek.com/boardgame/94480/pantheon
●ランカスター(クイーン)10歳以上/2〜5人/60分(7点)
アーレアの「グレンモア」で、鮮烈なデビューを飾ったマティアス・クラマーのデザインというこもあり、注目度の高いゲームである。ランカスターとは、イングランド朝のひとつで都市名でもある。現在でもエリザベス女王はランカスターに広大な領地を所有している。
ゲームの舞台は1413年のイングランド。若き国王ヘンリー5世は、国内平定とフランス遠征の野心に燃えていた。各プレイヤーの目的は、この時代の最も強力な領主として騎士団を形成し、国王の野望に貢献しつつ、ゲーム終了時に最も多くのポイントを獲得することである。
コンポーネントがぎっしりで箱が重い
今後は改心してコスモスサイズにするのか?
このゲームは5ラウンドにわたり、1つのラウンドは3つのフェイズで構成される。第1フェイズでは、自分の屋敷にある騎士コマ1個を地方、城、戦争の3つのエリアの中から選んで配置する。進行に伴ってコマ数に差が生じるため、コマがなくなったプレイヤーの手番は単に飛ばされることになる。
地方では、既にコマが置かれたマスにも置くことができる。ただし、相手のコマを追い出すには、相手より大きくなければならない。従者コマを併用することで強さが上昇する。追い出されたコマは、そのプレイヤーの手元に戻され、以降の手番にはまた配置できるが、従者コマはストックへと戻されてしまう。手番による綾が大きいので注意が必要だ。
プレイヤーボードの空いたマスに騎士コマを配置すれば、他のプレイヤーと争うことなく、確実に収益が得られる。
さらにプレイヤーはフランスとの戦争にも参加できる。コンスタントにポイントを獲得する重要な要素でもあるだけに、より強い騎士団を送り込めれば理想的だ。ひとつのマスにも複数の騎士コマが配置できるので、後の手番で戦力の増強も図れる。ただし、これに従者コマを使うことはできない。最初の6マスに騎士コマを置いたプレイヤーには、国王の恩恵タイルを1枚選んで、その収益が得られる。この効果は直ちに適用されるので、他のプレイヤーを出し抜くこともできたりする。
最後の騎士コマが置かれたら、第2フェイズの議会へと移行する。
ここでは、新たに提案される3つの法案について、1つずつ順番に投票を行って、各プレイヤーは賛成か反対かを表明する。投票コマを使って増票も可能だ。賛成と反対が同数ならば可決と見なされ、有効な法案として即適用(3つの投票が終わったら、使わなかった投票コマは全てストックに戻す)。
第3フェイズは、第1フェイズに地方、城、戦争について、配置したコマからの収益を受け取る。9つの地方については、そこにある貴族タイルを取るか、他の収益を得るか、3コインを支払ってその両方を得るかを選択する。
続いて自分の城ボードの貴族の数に応じて投票コマを受け取り、コマを置いているマスや、拡張タイルが置かれている収益が受け取れる。
戦争については、全員の騎士団の強さを合計して、それがフランス軍の数値と同数以上であればイングランド軍の勝利だ。貢献順位に応じてポイントを獲得する。ここで気をつけなければいけないのが、騎士の強さが同数の場合、後からマスに配置した方が貢献順位が上位と見なされることだ。
面白いのは、フランス軍に負けてもポイントが受け取れるところだ。ただし、ポイントは減って、コマも置かれたままとなり、次のラウンドでも戦争をしなければならなくなる。
ボード全体は見やすく判りやすい
5ラウンドが終了したら、最終決算を行ってゲーム終了。騎士団の合計数、城の改築タイル数をそれぞれに比べて、1位と2位にはポイントが与えられる。獲得した貴族の数に応じて、ボードに示されたポイントが得られる。全種類の貴族を集めることができれば、それだけで36ポイントにもなる。
ポイントの獲得方法もいろいろとあって、戦略性が高く感じられて、それほど複雑なゲームでもない。
◎スコア ※敬称略
石川 77点, なるお 31点, はん 49+点 どきゅん 49点
◎Lancaster for BoardGameGeek
http://www.boardgamegeek.com/boardgame/96913/lancaster
●ケツ爆弾(ツォッホ)8歳以上/2〜4人/15〜20分(4点)
「ブクステフーデ」で、2006年のアラカルト・カードゲーム賞の第1位に輝いたベンハート・ラフとウヴェ・ラップのコンビによる共作。
このゲームでは、灼熱の太陽に照らされた真夏のプールで高飛び込みを競う。暑くなるこれからの季節にピッタリのテーマだ。
「ケツ爆弾」とは意表をつく邦題だけれども、これはスイマーがお尻からプールへと飛び込んで、派手な水飛沫を上げるさまを表している。
「ぴっぐテン」に続く大論争の予感!?
まずはプールサイドのカードを並べて、四角い枠を作ったら、これで競技場(プール)の完成だ。プレイ人数によっても大きさが変化するように調整されている。各プレイヤーは6枚のスイマー・カードを受け取る。
手番が来たら、プレイヤーは立ち上がり、自分の目の高さから、カードを枠の中のプールをめがけてカードを落とすのだ。
スイマーカード
スイマーにも素人と玄人がいて、その得点形式も違ってくる。
素人スイマーの場合、左隣のプレイヤーが、すでにプールにある任意のカードをターゲットとして指定する。投げ入れたカードがターゲットのカードに触れて、さらに描かれたスイマーに重なっていなければ3点を獲得する。スイマーに一部でもかかっていたら2点。スイマーを全く隠していたら1点。ターゲットのカードに触れられなければ0点で得点できない。プールサイドのカードに触れたり、その枠外に出たら−1点を食らってしまう。
玄人スイマーの場合、プールの中にあるどのカードとも重なってはならない。少しでも触れると0点だから厳しい。もしも、他のカードに触れずに着水できれば、プレイヤー自身の最初のカードであれば1ポイント。2枚目なら2ポイント。最後の6枚目で成功すれば6ポイントとなる。プールには他のスイマーのカードが次々と投げ入れられるので、終盤ほどその難易度も上がるというわけだ。
プールサイドは得点フレームでもある
また投げ方についても、ノーマルジャンプとスペシャルジャンプの2種類があって、手番プレイヤーが選択できる。スペシャルが成功すると得点も2倍になる。
とまあ、実にバカバカしいアクション・ゲームだったりするわけで、細則がいろいろあったりして、レビューするこちらも疲れてくるが、意外なほどテクニカルで難しいゲームだったりする。
それでも、短時間でプレイできるので、同じメンバーで繰り返し遊んでみた。少しはスキルアップできたかも。みっちりやり込んで「投扇興」のような域にまで高めてくれるプレイヤーが現れることを密かに期待している。
◎スコア(1回戦→2回戦) ※敬称略
なるお 6点→-5点, はん 10点→10点, どきゅん -2点→13点, 石川 -4点→9点
◎Arschbombe for BoardGameGeek
http://www.boardgamegeek.com/boardgame/91655/arschbombe