アメリカの栄光を再び
アメリカ自動車産業が勃興した1930年代を描いたウォレスのボードゲーム。血を吐くような開発競争と、先の読めない需要、頭の痛い資金不足が待っている。
はじめは人物マスに駒を置いてプレイ順を決める。プレイ順が早ければ自動車を先に売れるが、後だとより新しい工場を建てられるから、状況によって良し悪しがある。さらに置く人物によって開発キューブをもらえたり、追加で工場を建てられたり、先に自動車を売れたりする特典がつくので、いきなり頭を使う。
次に、工場を建てる、販売員を雇う、自動車を作る、古い工場をたたむなどのアクションを3つ行う。工場は、先に進むほど最新のモデルが製造できるが、開発キューブも支払わないといけない。でも最新の工場ができるたびに、古いモデルを作っている工場は損失が増える。ここに血を吐くような開発競争が待っているのだ。
販売員は、需要に関係なく自動車を売ってくれるが、定数を超えたり、自動車が足りなかったりすると損失になる。多ければよいというわけではない。
そして自動車を何台作るかが、このゲームでもっとも悩むところだ。いくら売れるかは、工場の新しさ、販売員の数、ほかのプレイヤーが作った台数、そして最初に全員に分けて配られている需要マーカーによって変動する。作りすぎて余れば大損害だ。需要マーカーは運もあるし、ほかのプレイヤーの動向は先手番だと分からない。100%は分からないところで、だいたい何台と決め打ちしなければいけない難しさ。経営手腕に裏打ちされた勘が試される。
そして、工場の投資や自動車の製造のたびにお金がみるみる減っていく。ラウンドの最後に、自動車が売れれば利益が上がるが、それもすぐに次の工場に消えてしまう。借金は2回までで、しかもトイチという高利貸し。金がねぇ〜〜。
こうした資金不足の中で、重要なのが古い工場をいつたたむかである。工場を建てたままだと、最新の工場が建つたびに損失が膨らんでしまうし、車も売れなくなる。そこで工場をたたむと、損失を防げるだけでなく、建設資金がいくらか返ってくる。でもろくに自動車を作らずにたたんでしまうのはもったいない。古いモデルでも、営業努力でカバーできることもあるだろう。妙にリアルである。
さて3つのアクションが終わったら、いよいよ販売である。まず販売員が売って、残りを需要マーカーの合計だけ売る。供給が上回ったら、最新モデルから売れていき、売れ残ったのは損失。優先販売の権利もあるが、定価で売るには開発キューブが必要で、そうでなければダンピングしなければならない。工場の建設資金、自動車の製造資金、売れないリスクから考えると、利益はほんのわずかしか出ない。しかし勝つためには、そのわずかの利益を積み重ねるしかないのだ。
康さんと私が最新モデル競争を繰り広げてジリ貧。タカハシさんはリスクの高い高級車路線を行くが、需要がいつも最低ラインで売れない。1位は、大きな需要がきたときに古めの工場で大量生産したぽちょむきんすたーさん。いつもぎりぎりの資金繰りはウォレスのゲームの特徴だが、今回もみんなずっと悶えていた。
Automobile
M.ウォレス作/ツリーフロッグ(2009年) ※ファランクスから一般発売予定
3〜5人用/12歳以上/120分