気温がちょうどいい時期というのは1年を通してなかなかない。ついこの間までは寒いと思っていたら、もう汗ばむ季節である。もっとも、ルールを読んだり戦略を考えたりしていると頭を使うので余計暑く感じるのかもしれない。今回は庄内からnagaさんとPsy+をお迎えして、国内未紹介のゲームを遊んだ。子供ゲームも多めだったが、大人用のゲームと遜色ない。ドイツの子供ゲームは、子供だましのゲームがほとんどないのが素晴らしい。
ザ・スリー|ゴールドラッシュ|クレームポーカー|ヴォブバリー|ロック|キツネのフリドリン|友達がいて幸せ|カノッサ
ザ・スリー(Die Drei / A.ランドルフ / フランニョス, 1998)
IとLの戦い
ランドルフ作の2人用アブストラクトゲーム集。タイトルの通り、3つのゲームが収録されている。今回は1番目の『ヘプタ』。1974年にラベンスバーガーから発売され、後に『マジックセブン』というタイトルでリメイクもされた古典である。
まず先攻が7つの青いタイルを置く。ここはどちらもタイルを置くことができないデッドゾーン。その置き方を見て、後攻がI字タイルかL字タイルを選び、再び先攻は選ばれなかった方のタイルを取る。L字タイルを選んだらL字だけ、I字を選んだらI字だけを交互に置き続ける。より多く置いたほうが勝ち。
お互い相手のパターンを置けないようつぶし合うから、7マスのデッドゾーンを見て、I字とL字のどちらが多く置けそうかを見積もるのはなかなか難しく、そして面白い。I字を選んだ後攻のnagaさん、相当不利なことに気づいたのは終盤だったようだ。L字を取った私の勝ち。
ルールブックにはデッドゾーンのさまざまなパターンが載っており、ソリテアでも遊べる。
ゴールドラッシュ(Gold Rausch / F.シュターク / ニュルンベルガー・シュピールカルテン, 2008)
金塊かと思ったら金歯かよ
10枚並んだ川カードをめくって、金塊を探すゲーム。同じタイトルでクニツィアのカードゲーム(1990)があるが、こちらはライトなカードゲームを作るシュタークが去年発表した作品だ。缶入り。
10枚のカードから好きな1枚をめくる。金塊なら必要な道具が描いてあるので、それを探さなければならない。道具は、各プレイヤーのキャラクターカードの右側か左側のどちらか。全部当たれば金塊ゲットだ。はじめは当てずっぽうだが、あとは位置を憶える記憶ゲームである。それほど難しくないはずが、いざとなると迷う。
間違ったカードをめくったら、カードの位置が変わる。前に憶えていた位置とごちゃまぜになって紛らわしい。金塊でなくて金歯をめくったら、道具でなくてウィスキーを探す。歯が痛むのだろうか?
金塊も金歯もなかったらハズレで手番終了。ハズレのカードの位置も憶えておかなければならない。そのうち10枚のカードは全部ハズレだと思ったら、もうないよ宣言。当たれば(全部めくって本当に全部ハズレだったら)他の人からカードを奪える。金塊か金歯があったらほかの人に献上。
山札がなくなったときに、金塊を多く集めていた人が勝ち。同点なら金歯勝負である。
カードの位置は少し集中すれば十分憶えきれるレベルでちょっと物足りなかった。めくるカードに金塊の多かった私の勝ち。
クレームポーカー(Claim Poker / F.シュターク / ニュルンベルガー・シュピールカルテン, 2008)
邪魔したつもりが得をさせ
↑の『ゴールドラッシュ』に付録としてついているカードゲーム。同じカードは使わず、全く別のカードが一緒に入っている。付録なのに、こちらのほうが面白いとはどういうことなのか?
金鉱掘りに必要な道具が6種類、場札になっている。手番には好きな2枚を取って、1枚を自分で取り、もう1枚を誰かにあげる。これを場札が1種類になるまで続けるという、シンプルなルール。
ところが、得点計算の仕組みによってゲームがエキサイティングになる。それは種類別に、道具の合計数が偶数なら得点、奇数なら0点というルールだ。だから自分は偶数になるようにカードを取るし、相手は奇数になるようにプレゼントする。
カードをプレゼントして奇数にしたからといって喜んでばかりもいられない。さらにカードを引かれ、高得点になってしまうこともある。場札の残り枚数をよく見て、得点機を与えないようにしなければならない。中には合計数を増減する特殊カードも含まれているので、効果的に活用したい。
第2ラウンドは、奇数だと0点ではなくマイナス点になるという恐ろしいルール。同じ種類のカードを集めるのはリスクが大きいが、その分高得点が狙えるだろう。
カードは誰に上げてもいいので、序盤から高得点パターンを作って目立つようなことをしないのが鉄則。だが、ここぞという場面でいいカードを引けず詰めきれなくて最下位。嬉しくないカードをプレゼントして悶えあうのが楽しかった。
ヴォブバリー(WobBally / 作者不明 / シュピールシュパース, 2007)
ボールを落としてぐ~らぐら
ぐらぐら揺れるタワーを崩さないようにボールを落としていくバランスゲーム。何しろボールが支柱になっているのだから揺れに揺れる。
棒で落とすボールはレベル1ではどれでもよいが、レベル2、レベル3になると場所指定、色指定がある。大人だからといきなりレベル3からスタート。数字のダイスで何階から抜くか、色のダイスで何色を抜くか決める。上の階ほどぐらぐら度が高いので厳しい。
ボールは1つ1つ上から力がかかっており、棒で押すとタワーが斜めになる。諦めて別のボールを押そうとするが、どこでも同じこと。重心を見極めることはとてもできそうにない。というわけでわずか1周で私が倒して終了ー。
問題はこの後だった。「これ、どうやって元に戻すの?」ボールを並べて、皿を置いて、またボールを並べてという地道な作業が待っていた。その間も容赦なくぐらぐらするタワー。途中で1回崩れて仕切り直し。慎重に積んで、そっとカバーをかぶせて箱にしまった。
もう少し簡単にセットアップする方法があれば最高なのだが。
(後日談)カバーをさかさまにして入れるという方法がルールに書いてありました。これでセットアップはかなり楽です。
ロック(RØK / T.シャポー / ギガミック, 2009)
ルーン文字まぎらわし
アブストラクトで有名なギガミック社がリリースしたばかりの新作は、意外なことにパターン認識ゲームだった。ルーン文字のペアを、ほかの人よりすばやく見つける。
各自袋から4つずつ石(正確に言うと硬い樹脂材)を取って、一斉に中央に投げる。そして早い者勝ちでペア探し。裏になったものは表にしてはいけない。探し終わったら裏になったのをまた袋に戻して、また4つ引いて投げるという繰り返し。
ペアのほかに各自1個石を持っていて、同じパターンの石が出たら誰でも取ってよい。ほかの人に取られると、同じ色の石を全部持っていかれてしまうから要注意だ。
順調に集めていたが、うっかり自分の石をPsy+さんに取られごっそり持っていかれてしまう。そこから地道に挽回して何とか1位。ルーン文字が左右対称だったりして紛らわしい。
ギガミック社のルールブックは多言語が収録されているが、驚いたことに日本語も入っていた。さすが2007年から正規に日本上陸しただけのことがある。
キツネのフリドリン(Fridolin Fuchs / E.グラインベッチャー / ゴルトジーバー, 2003)
ブタかカエルかカモか?
めくったタイルに書かれた動物の鳴き声を探すゲーム。鳴き声というのは、ボタン電池が入った機械が6つ付属しており、押すとそれぞれ別の鳴き声を出すという電子ギミックである。「コケコッコー!」「ニャーオ!」「ワンワンワン!」(ドイツ語では「キキリキー!」、「ミアウミアウ!」、「ヴァウヴァウヴァウ!」)とものすごいけたたましい音がする。わきで遊んでいた子供も思わず覗き込んだ(そして子供ゲームに大人が没頭していることにも気づいた)。
押して鳴らした機械は、必ず空いているマスに移動しなければならない。そのためどの鳴き声がどこにあるかたちまち分からなくなる。しかもブタとカエルとカモの鳴き声が似ていてさらにややこしいことに。
もう1つ面白いのが、間違うまで何枚でもチャレンジでき、間違ってもそれまで正解した分は確保できるが、キツネのフリドリンのタイルをめくってしまうと、正解していたタイルを全部没収されてしまうところだ。どこで止めるかもスリルがあって楽しい。
今日一番頭を使った気がするが、フリドリンをあまりめくらなかったこともあって1位。どの鳴き声がどこにあるか憶えるのにはかなりの集中力が必要だ。
友達がいて幸せ(Zum Glück gibt’s Freunde / P.シュルツマン / シュピールシュパース,2006)
20枚なんて憶えきれるわけが
20枚の絵がどこにあるかをめくって当てて、コマを進める記憶ゲーム。子供ゲームには記憶ゲームが多いが、ここまで難しいと諦めもつく。
3つのルールがあるが、最も面白そうな1番目で遊んだ。ダイスを振って挑戦回数を決める。その回数だけタイルをめくって、中央のコマがあるイラストと同じタイルをめくることができれば自分のコマが1マス進み、ハズレれば左どなりの人のコマが1マス進む。20枚もあるため実際はほとんどハズレで、左どなりの人のコマが進み放題。6など出すと左どなりの人が喜ぶ。
さらにややこしいことに、似たようなイラストがいくつかある。もう無理ですって。
やってみるとnagaさんとPsy+さんが結構当たっていた。私はゲーム中を通じて1,2回しか当てられず。そのため左どなりのnagaさんがダントツのゴールを決めていた。
カノッサ(Canossa / W.カスターニョ / ローズ&ポイズン, 2006)
漁夫の利の利
外周から中央のカノッサ城までタイルを取ってルートを築くゲーム。イタリア製。肝心なところをきちんと書いていないのに、戦略なんかを記述するルールがイタリアらしい。
周囲から、自分の騎士を進める。1手番に1体進め、移動先のタイルを取る。タイルは森か木か敵兵。森や木はほかの人のルートを塞ぐのに使い、敵兵は得点になる。相手の騎士と同じマスに入ると、得点の低いほうが高いほうから敵兵のタイルを1枚奪える。中央の城が陥落すればゲーム終了だが、城は3点にしかならない。終了時に敵兵をたくさん取っていて得点の一番多い人が勝ち。
ここまででグダグダになりそうだと分かった方は鋭い。敵兵タイルを奪って、城に入る前に奪われて、また奪って、城に入る前にルートを塞がれて……という繰り返しである。千日手を嫌ったPsy+さんが2位でゲームを終わらせたが、みんな1位を狙ったら、あと1時間くらいかかったかもしれない。もっとも、お互いに動向をにらみ合う中盤は結構面白かった。