水曜日の会が会場都合でなくなったため、代わって自宅ゲーム会を開く。水曜日の会では、次々と人がやってきて頻繁に卓分けされるため、時間のかかるゲームはあまり相応しくない。というわけでプレイ機会の少ない60分超のゲームを中心に遊んだ。偶然88年のノミネート作が揃い、ドイツゲームでここ20年の間にどういう変化があったのかを知る機会にもなった。
参加者は米出さん、かゆかゆさん、ストーンRさん。昔のゲームは、ゲームバランスがプレイヤーに委ねられることが多く、まるでゲームにならないこともあるが、どんな展開になっても辛抱強くゲームの面白さを引き出そうとしてくださるのはありがたい。どんなゲームでも楽しめるというのは、そういう集中力によるところも大きいのではないだろうか。
ロジップ|トーテム|エガッタ|ターグイ|空中庭園|チョコレート会社|オントップ|トップシークレット
ロジップ(Logzip / 沙月みと / 学研, 2008)
それ当たり!
学研から久しぶりに発売された1500円のゲームシリーズは、『ソラシス』などの作者、沙月みと氏がデザインしたものである。ユーロ高、原油高のご時勢に、1500円という価格を堅持しているのは素晴らしい。国産ゲームとしては異例のヒットとなった『アルゴ』に続く推理ゲーム。
手番にはまず1枚カードを表にして出し、そこから±1までの差で裏向きに並べていく。ほかの人が表に出したカードが、裏になっているカードと同じだったらヒット。相手は失点になり、自分は得点になる。ルールはこれだけだ。
カードは並び方からある程度は推理できる。たとえば5-○-○-○と出ていれば、最大で5-6-7-8、最小で5-5-4-3、さらに5-6-5-4などの並びがあるので3~8が危険牌ということになる。あとは各数字1枚しかない赤いカードなどを手がかりに、ありえないパターンを消去し、安全牌を増やすというわけだ。自分以外がそれぞれカードを出して虎視眈々と狙っているので、ドキドキ。麻雀で自分以外の全員がリーチしているようなスリルがある。
勘で出したカードがことごとくヒットして即終了。あっけない幕切れだったが、もっと考えてヒリヒリとした苦しみを味わいながらじっくり遊ぶのもよいだろう。
トーテム(Totem / P.デ・パリエール、P.ピレー / クイーンゲームズ, 1995)
環境抵抗
種族を繁栄させてトーテムポールを作るボードゲーム。相手が沈めば自分が浮くという、直接攻撃をメインにしたゲームである。
3つの小屋にコマを置いてスタート。まずはじめに、女性が子どもを産む。部屋に1人でも男がいれば女性はみんな子どもを産むという一夫多妻制。しかも次の世代には息子が姉妹や母・おばに子どもを産ませるという、ものすごい近親婚。すごい世界だ。
さて人が増えたら狩りに行く。男が多いほど、たくさん食料を集められるが、食料の数は常に一定。はじめは人口が増えていくが、やがて食料が不足して餓死者が出る。
そして世代交代。子どもは若者に、若者は中年に、中年はお年寄りに、お年寄りはお亡くなりに。全ての世代にわたって人を満遍なく増やしておかないと、後から少子高齢化社会で苦しむことになる。お年寄りは、子どもを作れないし、狩りにもいけないが、いないとゲームの目標であるトーテムポールが作れない。
最後に、この時点での人口数が上位2名まで、トーテムポールを建てる。6つ建てたら勝利。
この流れにアクセントを加えるのが、毎ラウンドのはじめに裏向きで好きな小屋に置ける呪文タイルだ。子どもを2倍にするもの、全く産めなくするもの、男(女)ばかり産ませるもの、狩りをしやすくするもの、しにくくするもの、世代交代で年を取らないものなどがあるが、一番強烈なのが疫病。これを置かれると、小屋が全滅してしまう。治癒のタイルを置いて対抗しなければならない。
呪文タイルは、トーテムポール(+食料)の数だけ置ける。したがってトップほどたくさんの呪文を使えるわけで、当然のことながらそんな有利な状況はほかの人が許さない。みんながトップの小屋にいろいろな呪いをかけてくる。トップが潰されることでバランスがはじめて成り立つのである。
序盤に走り気味だった米出さんが叩かれて思いっきり失速。ストーンRさんも老人が消えてトーテムポールを失うという痛恨のダメージを受けた。私は目立たないようにしていたが、ラストスパートをかけようとしたあたりでまさかの疫病。結局、反撃の芽を未然に摘んだかゆかゆさんが最後の猛攻をかいくぐって1位。シビアな原始時代を体験できた。
エガッタ(Egatta! / A.ローワーズ / タカラトミー, 2008)
エガナカッタ
指定されたお題の絵をいち早く見つけるゲーム。オランダのA.ローワーズゲームが発売したものを、世界に販路をもつハズブローが手がけ、日本ではタカラトミーが先月発売したばかりである。
競技は3つあり、手番ごとにダイスで決める。
1.指定されたイラストをみんなで探すゲーム
2.対戦相手を指定して、制限時間内に相手より多く探すゲーム
3.1人で制限時間内に規定数探し出すゲーム
この3つが入り混じって進むので、ゲームが単調にならない。パターン認識ゲームにつきものである得意不得意の差も、2や3のゲームでカバーできるようになっている。
お題はそれぞれ別のカードを使うが、「飛ぶもの」や「うるさいもの」など、想像力をはたらかせながら探さないといけないものがあって面白い。なお判定が微妙な場合は、ジャンケンで決めることになっている。
ご覧の通りボードは上下左右関係なく、また大小も関係なく雑然と並んでおり、注意して観察しないと分からない。その分、見つけられたときの喜びは格別。「エガッタ!」(見つけたときは指差してこういうことになっている)
集中力がいまひとつ足りなかったせいか、難しいお題のカード(難易度の差が激しい)が多かったせいか最下位。『ウォーリーを探せ』が好きな方、特に子どもに。
ターグイ(Targui / B.ヴァン・ダイク、W.ダイクストラ / ジャンボ, 1988)
殴って殴られて
砂漠を舞台に過酷なサバイバルを繰り広げるゲーム。1988年のドイツ年間ゲーム大賞ノミネート作品。このゲームは、フルに遊ぶと一晩かかるとルールに書かれているが、当時の審査員はプレイ時間を気にしないでノミネートしていたようだ。
実はそれほど時間はかからないが、ドイツゲームにしては珍しく、1人生き残った人が勝ちという脱落ゲームである。そのため、ちょっと趨勢が悪くなるともう復活しにくいようになっている。砂漠の民の宿命か。
四隅の開拓地からそれぞれスタート。ダイスでアクション数を決めると、順番はランダムに決められる。同じ人の手番が連続することも少なくない。手番にはラクダを移動して陣地を広げ、お金でラクダを増やす。ほかの人の陣地に攻め込むときには地形ポイントとダイスの合計で相手のラクダを削りあう。先にラクダがなくなったほうが負けだ。
強烈なのが、毎ラウンドどこかのタイミングで出てくるイベントカード。これでお金やラクダをいきなり失ったり手に入れたりする。お金を失う場合、その前に多く手番を行っていた人はラクダを増やせるが、その後の手番では増やせないというように明暗が分かれる。相手が欠乏したタイミングで一気に攻めて、要所を奪うというわけだ。
初期配置から偏った展開。私とストーンRさんは近くにオアシスがあって収入が確保される。一方かゆかゆさんと米出さんは近くが砂漠だらけで、オアシスや製塩所まではるばる足を伸ばさなければならなくなった。米出さんとかゆかゆさんが開拓地をめぐって血みどろの争いを繰り広げている間に、背後からストーンRさんが襲いかかり、米出さんの部族が3ラウンド目で絶滅。そのあっけない幕切れに協議終了となった。
ボードに枠がついていてタイルが動かないようになっており、枠に穴が空いていて所有者のマーカーが入るようになっている。こういう工夫があってコンポーネントは素晴らしい出来である。ただゲームとしては、砂漠のシビアさをリアルにシミュレートしすぎていて、20年後の安全なボードゲームを遊びなれている人間にはきつい。
空中庭園(Die hängenden Gärten / D.リー / ハンス・イム・グリュック, 2008)
カード重ねパズル
カードを重ねながら絵をあわせてタイルを集めるゲーム。台湾のゲーム愛好者が発案したゲームが、現地にいたドイツ人の目に留まって、伝統あるハンス社から出版されることになった。アジアにも広がったドイツゲームが、アジア人に刺激を与え、さらに新しいアイデアを生み出している。
順番に1枚ずつカードを取って自分の前に並べ、同じ建物が3つ以上連続して揃ったらタイルをもらえる。タイルは同じ種類を集めれば集めるほど得点が高い。同じ建物がたくさん揃えばタイルの選択肢が増えるので、得点の高いタイルを狙えるというわけだ。
ただし建物は直に置けないという決まりがある。カードは6つのマスに分割されており、マスの上に置かなければならない。さらに建物が揃ってタイルをもらうたびに神殿を置き、この上にはカードを置けなくなる。パズル思考が要求される。
建物を3つ以上揃えても、もっと増えることを目指してタイルを取らない選択肢があるところがカギ。6つ以上つなげるとタイルが2枚もらえるので、そこまで我慢するか、それとも早くそろえて早く取ることを目指すか。
ストーンRさんが6つ揃いだけでなく、場合によっては早く集めるなどして、うまく高得点タイルを獲得し1位。私は1度も6つ以上がなく最下位で、獲得タイル数も最低だった。ハンス社にしてはルールを絞込み、ライトなゲームに仕上げた感がある。パズルもカードの選択肢が少ないのは、長考にならないようにしているものだと思う。どこか物足りない感じもあるが、さくっと遊べてグッド。
チョコレート会社(Schoko & Co. / G.モネ、Y.ヒルシュフェルト / シュミット, 1987)
チョコレートが食べたくなる
チョコレート会社の経営を描いたボードゲーム。1988年のドイツ年間ゲーム大賞ノミネート作品。入札あり、競りありの通好みなゲームだ。
はじめは社員の雇用から始まる。カカオからチョコレートを生産する労働者、契約を取ってくるセールスマン、契約を実行する秘書、収入を受け取る簿記の4種類を、好きなように雇って給料を支払う。私は最小人員でスタートしたが、おとなりのストーンRさんは思い切った人材投資を行った。
「社長、カカオの在庫がありません!」 さて次はカカオの仕入れ。5つの都市から入札で購入する。何マルクで何十トン買うかを用紙に記入。ここで思いっきりケチった私とストーンRさんは全然カカオを手に入れられなかった一方、米出さんとかゆかゆさんはスタートプレイヤーの権利と高値で買い占めた。
カカオを仕入れると、社員が1人につき30トンまでチョコレートにしてくれる。そして契約。次々と出てくるチョコレートの注文を競りで手に入れる。最安値からスタートして、少しずつ値をあげていき、最初に落とした人が受注するという仕組みだ。ここでカカオと買い占めた米出さんとかゆかゆさんが談合。「この契約は降りますから、次お願いします。」競る相手がいなくなると、自動的に最高値で受注できる。大儲けする2人を、指を加えて見ているストーンRさんと私。
この儲けで、次の月はカカオの値段も上がる。ストーンRさんは一か八かの借金をして大きく出たが、差を縮めることはできず、私は人件費が支払えず全員解雇してしまった。そんなわけで明治と森永に大きく差を広げられたまま4月で協議終了。カカオが来ないばかりに開店休業で、社員も自宅待機である。
プレイヤーにゲームバランスが委ねられるとはいえ、慣れないがゆえのミスもあった。1月のカカオ仕入れは、せめて1箇所くらいは高値をつけておくと安全である。2月以降は、負けている人がカカオをたくさん市場供給して、自分の取り分を確保する必要があった。また、相手を妨害する凶悪なカードがあるので、それを使うという手もある。慣れないがゆえにこんな結果になってしまったが、今度はもう少しうまくやれそうな気がする。
オントップ(On Top / G.ブルクハルト / コスモス, 2008)
たくさん置く作戦も
ゲーム内容はこちら。最後に残ったコマはマイナスになるので、今回はオン・トップでほかの人を置かせないよりも、2位でも絡んでコマを置く場面が目立った。となると、1位を目指してギリギリの争いを繰り広げることがなくなり、やや緩い感じになる。さらに最後に残るゴールデンゾーンが引き勝負でもあり、アブストラクトにしては高い運の要素に評価はいまひとつ。
前回同様にオン・トップを狙った私が、幅広く絡んだかゆかゆさんと得点で並び、残りコマで敗北。
このゲーム、今年発売された大箱では唯一、国内発売されていない。ノミネート入りまでしたのに人気にならなかった『ジャスト・フォ・ファン』と同様、アブストラクトはなかなか心を引かないようだ。
トップシークレット(Top Secret / A.ランドルフ / ジャンボ, 1985)
爆弾お持ち帰りドガーン
ランドルフ作のブラフ系スパイゲーム。かばんに機密書類や爆弾を隠し、奪ったり奪われたりしながらアジトに持ち帰る。持ち帰るのは自分のかばんでも、敵のかばんでもよいが、敵のかばんには爆弾が入っているかもしれない。
ダイスで好きなスパイを移動する。途中に落ちているカバンを拾ってアジトへ。途中で敵のコマとあったらカードを出して対決。ここで出すカードによって、そのカバンにどれくらい思い入れがあるかが分かる。コマの進み方とカードの出し方を手がかりに、敵の機密書類を狙う。
もっとも、ブラフの可能性も否定できない。意気揚々と進み、途中も強気のカードを出すので奪ってみたら爆弾だった、なんてことも。でもほっておけば、爆弾を持っているスパイはアジトの入り口で躊躇してしまうかもしれない。1つが爆弾だと分かれば、後の全部は機密書類。みんなが一斉に狙ってくることだろう。このあたり、4人用のガイスターというテイストだ。
ストーンRさんが持ち帰った私のかばんが爆弾。そのタイミングで残りのカバンをすばやく持ち帰ったかゆかゆさんの勝利。