5月末にドイツ年間ゲーム大賞がノミネートされたとき、5タイトルのノミネート作品中日本に入っていたのは3点だった。その残り2点をようやく遊ぶ機会がやってきた。この1ヵ月半、気になって仕方がなかっただけに、遊べた喜びはひとしお。これでやっとノミネート作品の全貌をつかむことができた。ルールが簡単で面白いゲームが年間ゲーム大賞のモットーだが、単調にならず繰り返し遊べるものとなるとハードルは高い。厳しい目で見れば5タイトルすら難しくなりそうだが、そこはドイツゲームの底力、今年も十二分にクリアした作品が揃う。ボードゲームギークの評価はあまり高くないが、それがまったく当てにならないものだと思った。
交易王|ニムト|ブロクス|ズライカ|ねこギャング|イラスト募集中
ブロクス(Blox / W.クラマーほか / ラベンスバーガー, 2008)
壊しては作り、作っては壊し
今年のドイツ年間ゲーム大賞ノミネート作品。作者はクラマーとその仲間たちである。ドイツゲームしては珍しいテーマがないゲームだが、遊んでみると想像が膨らんでくる。
はじめは1階建ての建物を壊すところから。自分のコマをそばにつけ、建物と同じ色のカードを出すとブロックを取り除ける。これで1点。こうしてブロックを集めたら、そのブロックで2階建ての建物を作る。2つのブロックに対応する色のカードを出して、自分のコマのところに建設。これで2点。なんか人柱みたい。
1階建ての建物が残り1つになったら、第2フェイズに移る。今度は2階建ての建物を壊して3階建ての建物を建設。さっき作ったばかりの建物も容赦なく壊す。同じく第3フェイズでは3階建てを壊して4階建てを壊し、最終フェイズは4階建てを壊して5階建てを作る。壊した階数、建てた階数だけが得点だ。手札は常に5枚で、1枚ジョーカーが使えるがだんだんブロックに対応する色を揃えるのが大変になってくるというわけだ。
カードは破壊と建設のほか、自分のコマの投入・移動や、ほかのコマを取るのにも使える。同じ建物を狙って一手を争う場面ではまずライバルのコマを除去してからということもある。
コマの位置取りも重要だが、手札を補充するときに、自分がほしい色を引けるかどうかが勝敗を左右する。でもほしい色がなかなか来なかったときに、どういう次善の策を取れるかも重要だ。順調にほしい色を引いた私は、後半急速に追い上げたFRTSさんに並ばれたものの、ブロックの差で1位。
テーマはないが、自分が建てた建物に愛着がわいたり、コマのにらみ合いがきいたりしてして感情移入ができた。
ズライカ(Suleika / D.エルハルト / ツォッホ, 2008)
じゅうたん踏んだらサヨウナラ
じゅうたんを敷いてほかの人が踏んでくれるのを待つゲーム。今年のドイツ年間ゲーム大賞ノミネート作品。もとはギガミック社の『マラケシュ』というゲームで、1年足らずのうちにリメイクされた。シックな感じだったギガミック社のコンポーネントをカラフルに作り直してある。私はこの作品が大賞を取ると予想していたが、予想を裏切らない深みのあるゲームだった。
使うコマはたったのひとつ。オマールさんという市場の見張りだ。方向を前・右・左のいずれかに決めてからサイコロを振る。オマールさんは直進し、端まで行ったらコースに沿ってぐるりと回る。移動先が空きマスか自分のじゅうたんだったらセーフ。ほかの人のじゅうたんだったら、広さに応じて持ち主にお金を払わないといけない。金額は連続してつながっているマス数。
移動が終わったら、オマールさんに隣接するように自分のじゅうたんを敷く。ほかの人のじゅうたんの上に敷くのもOK。こうしているうちに写真のようにボード中じゅうたんだらけ、どこを踏んでも相当の出費を覚悟しなければならない羽目に。
ほかの人の手番には自分のじゅうたんに止める目が出ることを祈る。しかしその前に、自分のじゅうたんを広くつなげすぎると敬遠される恐れも考慮しなければいけない。いろんなところにじゅうたんを散らばせて、広く浅く収益を上げたほうが最終的には儲かるかもしれない。最後は持ち金と、じゅうたんの広さを足して一番多い人の勝ち。
中盤に目立った私はじゅうたんをずいぶん消されて3位どまり。方向を決める、ダイスを振る、じゅうたんを敷くというだけの簡単なゲームだが、じゅうたんの敷き方には戦略性があり、それでいてダイスに賭ける楽しさもあってとてもよいゲームだ。
ねこギャング(Katzenbande / R.クニツィア / ハバ, 2008)
ツモれ3匹のネコ
タイルをめくって色か絵を3枚揃え、お魚コマをもらうゲーム。今年の年間ゲーム大賞と年間子どもゲーム大賞をダブル受賞したクニツィアの作品である。
山から1枚引いたタイルを自分の前に表にしておく。3枚になっても揃わなければ1枚捨てて1枚引く。捨てたタイルは表になっており、ほかの人も利用できる。だからほかの人が集めているタイルをうっかり捨ててはいけない。でもときにはそうせざるを得ないこともあり、そのときにあえて自分の揃っているタイルを崩すか、相手がほしいタイルをプレゼントしてでも自分の勝ちを目指すかのジレンマがある。
今回はあからさまな邪魔が起こらず、順当に集めたタナカマさんが1位。3人以上いれば、自分の手を崩して1人を妨害してももう1人がほくそ笑むばかりである。山札から3匹目を一発でツモってきたときが嬉しかった。
イラスト募集中(Einfalls-Pinsel / K.トイバー / ASS, 1989)
言われてみればそういう気も
広告にぴったり合うイラストを投票するゲーム。トイバーが最初の作品にして大賞を受賞した『バルバロッサ』の翌年、同じメーカーから発売したものである。ほとんど話題にならなかったが、笑いが絶えないゲームで参加者からは『バルバロッサ』より面白のではないかと大好評だった。
1人3枚のイラストを描いて番号の入ったスリーブに入れるが、この時点ではまだお題が決められていないというところが特徴だ。お題は何かの広告になっているので、解釈のしようでどんな広告でも合うようなイラストにしておく。
全員が描いたイラストは混ぜて、誰がどれを描いたか分からなくしておく。そしてランダムに3枚めくり、お題の広告カードをめくってコンテストを始める。例えば「経営コンサルタントの本『明日破産しても心配無用』」。3枚の絵について、1人ずつコメントしていく。この絵がぴったりだとか、そうじゃないとか好きなことを言ってよい。
一通りコメントが終わったら投票。2点、1点、0点という点数をつける。同じイラストに2点をつけるとボーナスになるので、コメントの内容を踏まえて採点したほうがよいだろう。また、全員の採点の合計はイラストに記入され、後でそのイラストを描いた人の得点になる。
次の3枚をめくって新しいお題でこれを繰り返す。全部の絵が終わったらシャッフルしてもう1周。1枚の絵が2回、審査にかけられることになる。その間、誰がイラストを描いたか予想するフェイズがある。正解だったら得点、誰からも当てられなかった人も得点。コメントでこじつけたりごり押ししたりしている人は怪しい。
風景画とか、人間の絵なんかは当たり障りなくて選ばれやすいが、今回は宇宙人みたいなのとか、へんなロボットとか、誰が描いたか気になって仕方ない絵が続出。それについて真剣にあーだこーだコメントしているのが愉快でたまらなかった。ドラミちゃんみたいな女性の絵と風景画2点で私の勝利。