秋葉原ゲーム会 05/08/03

秋葉原ゲーム会 05/08/03

先週に引き続き、秋葉原イエローサブマリンにてボードゲーム会。今回の主催はWeiredWorksのずーあーさんで、昨年に引き続きちょっと早めの夏休みを利用しての平日ゲーム会だ。また土日に働いている方を中心にタナカマさんが声がけをして集まっている水曜日ゲーム会も合流。10名をこえる賑やかなゲーム会となった。
卓分けは希望者制で定番ゲーム卓と謎ゲーム挑戦卓に分かれた。近年多数のゲームが紹介されるにおよび旧作指向/新作指向(「スタイル、好み、経験」)の振り幅が広がったように思う。評価の定まった傑作ゲームを安心して遊びたいという人、たとえハズレが多くても珍しいゲームを試したいという人。前者に変なゲームの実験につきあわせるのは気の毒だし、後者に遊びあきたゲームを接待プレイで遊ばせるのもまた気の毒。もちろん誰と遊ぶかによってこの態度は大いに変わるが、今回のメンバーは後者に傾かせた。コレクターのずーあーさんに持ってきていただいた新旧の珍しいゲームを原語ルール直読みでチャレンジ。かゆかゆさん、sirouさん、タナカマさん、ずーあーさん、猫さんといった物好き(?)な方々にお付き合いしてもらった。

盗賊の親方フリント船長の財宝星々の夜はなまる作文ゲームオシリス

盗賊の親方(Meisterdiebe / F.ツァルネツキ / ツォッホ, 2004)

盗賊の親方記憶力と勘、そして度胸

 木箱に隠された宝石を集めるゲーム。昨年のエッセンで発表され、そのコンポーネントの豪華さが話題を呼んで、今年のニュルンベルクで革新的な玩具に贈られる「イノベーション賞」を授与された。コンポーネントの豪華さだけでなく、日本で買うなら2万円は下らないというコレクター魂をくすぐるお値段でも度肝を抜く。

 まず注目の木箱はどうなっているのか? 引き出しは三段で四方にあるから12個。それぞれの段は横に回転するが、これだけなら宝石の入っている場所を覚えておくことはたやすいだろう。問題は、上下が完全対照になっていてひっくり返せることだ。このため引き出しは上からも下からも入るような作りになっている。さらに引き出しの奥には、高価な宝石が隠されていることもある。
 基本は、はじめに配られた偽物の宝石を木箱の引き出しに隠して、その代わりに本物の宝石を取り出すというゲーム。この木箱は魔法の箱らしく、隠すときに偽物でも取り出すときはあら不思議、本物になってしまう(つまり偽物か本物かの区別はアクションによるだけで、モノは同じだということ)。誰かが高価な宝石を隠したら、しっかりその引き出しの場所を覚えておいてせしめよう。
 でも隠したり取り出したりするたびに、木箱は回転したりひっくり返したりするからたいへん。たくさん宝石がある引き出しを覚えていても、上下逆で取り出したりすると全部床にジャラジャラー。床にこぼれたのはもらえない。マークした引き出しは今どの位置にあるのかに加えて、上下どちらなのかまで覚えておかなければならない。記憶力なしで勝つことは難しいだろう。熟練者は引き出しの取っ手の微妙な傾き具合や木目を記憶の頼りにするらしい。
盗賊の親方・木箱 しかしこのゲームは記憶力だけではない。宝石をしまう、取り出す、こぼれた宝石をもらうなどのアクションはそれぞれ別々の職業に振り分けられているのだ。全員1つ職業カードを選んで一斉にオープン。決められた順序でアクションを行っていく。絶対OKだと思う引き出しがあっても、他の人とアクションがバッティングすると先を越されるかもしれない。裏をかいて、裏の裏をかいて…と勘も頼りにしなければならない。
 そして度胸。高価な宝石を取るには高いリスクが伴う。また中段は記憶しづらいため宝石がわんさと眠っていることがあるだろう。そういう引き出しをあえて開けるか、安全で確実な引き出しにするか。虎穴に入らずんば虎子を得ず。

 2~8人で遊べるが、職業のバッティングが思わぬ結末を生むので多人数で遊ぶのが面白い。今回は6人。かなり集中力を要求されるゲームだった。ちょっとでも目を離すとマークしていた引き出しがどこに行ったかわからなくなってしまう。「こっち向きに回転して、それからあっち向きにひっくり返したから…」頭の中で空間シミュレーション。前頭葉が活性化されるのを感じる。引き出しの奥に隠されている一番高価な宝石ルビーは、他の宝石と違って規則正しく隠されている。その規則から推理し、唯一ルビーを取れる職業「盗賊の親方」をプレイ。敵失に恵まれた感もなきにしもあらずだが、ルビー2コのおかげで1位となった。ワーイ。
 記憶力が第一なのは言うまでもないが、実際に覚えられる引き出しの位置は1つか2つぐらいまで。だから覚えていた引き出しを最大限生かせるよう、またもし誰かに先を越されても次善の手が打てるよう、多面的な思考が要求される。決して見掛け倒しでない、感動できるゲームだ。一番の悩みの種は、買おうか買うまいか。

フリント船長の財宝(Der Schatz des Kapt’n Flint / R.クニツィア / ピアトニーク, 2005)

フリント船長の財宝子どもゲームではない

 ピアトニークというメーカーはかなり警戒していた。というのも有名デザイナーを立てる立てないに関わらず、正直言って調整が行き届いていない戦略ゲームか、子どもだましの子どもゲームが多かったからである。ここ数年の受賞歴を見ても、ほとんど評価されていない。
 そんな中でこのところ打率が下がり気味のクニツィアが、そもそも得意分野でない子どもゲームを、ピアトニークから出したといったら、まず面白そうな気がしなかったのが正直なところである。しかし今日は嬉しい誤算が待っていた。

 フリント船長が宝を隠した6つの島が舞台。亡霊となってさまようフリント船長と、やたら陽気な海賊ベン・ガンが島を周回している。手下をそれぞれの島に派遣して価値の高い宝箱を狙おうというゲーム。基本はクニツィアが得意とする数比べシステムが使われている(フリンケピンケロコ市場の商人キングダム)。はじめ各人の手札内容は同じ。様子を伺いながら1枚ずつ出していき、最後に各島で出した手札の強さを比べて、一番強い人から価値の高い宝箱を取っていく。同じ島に投入しすぎると他の島が手薄になるが、かといってばら撒きすぎるとどの島でも1位を取れない。価値の高い宝箱のある島は競争率が激しくて割が合わないかもしれないし、安い宝箱ばかりの島は1位をとってもムダかもしれない。というようにこれだけでジレンマが十分ある…のだがさらに!
 秀逸な点の1番目。1つの島には何枚でもカードを置くことができるが、置いた時点では裏向きにする点。同じ島に別のカードが置かれたときはじめて前のカードがめくられる。だから最後に置かれたカードだけはいつも非公開。あいつは何を置いたのか?オレは次に何のカードを出せば1位になれるのか? カウンティングとブラフがうずまく。
 秀逸な点の2番目。手札に1枚だけある大砲。これも裏返しにして島に置くが、その後に出されたカードはボカーン!手下はぶっ飛ばされてゲームから取り除かれてしまうのだ。競争率の高そうな島はひとまず大砲で強いカードを除去してから、余裕の態勢で入り込もう。しかし大砲はあまり先に出しては小兵しか除去できないかもしれないし、遅れてもぶっ飛ばす手下が来ない。タイミングが大事だ。
ベン・ガン 秀逸な点の3番目。一番価値の高い宝箱を持っているベン・ガン(赤いコマ)と自分がいる島の得点計算をなしにしてしまうフリント船長の亡霊(黒いコマ)は島をぐるっと周回している。コイツらがいる島で手下がめくられると、ベンガンは時計回り、フリント船長は反時計回りに隣りの島に移っていく。そして、どちらかが一周したときにゲームがサドンデスで終わってしまうのだ。ベン・ガンは誰でもほしいから奪い合いになり、フリント船長は誰もほしくないから押し付け合い。これでゲーム終盤は否応なく盛り上がっていく。「よし、ベンガンこっちに来い!でも、フリント船長来ないで~」
 ベン・ガンもフリント船長も1周しなくても、全員が手札を使い切った時点で終わり。そのとき手下の強さを比べて宝箱を配分する。最後に置かれたカードをめくって一喜一憂。もちろんフリント船長の島ではガッカリ0点。
 1回目はみんな飲み込めないうちにずーあーさんが大勝したが、2回目からは厳しい攻めを見せて勝負は僅差に。たった8枚の手札を順々に置いていくというだけでこんなに悩ましくなるものか。対象年令は8才以上とされているが、これは決して子どもゲームではない。大人が何ゲームも遊ぶのに十分たえる奥行きをもった好ゲーム。クニツィア先生、なめてましたごめんなさい。

星々の夜(Nacht der Sterne / R.ヴィティヒ / コスモス, 2004)

星々の夜天文学博士

 タイルを配置して星座を完成させるゲーム。シンプルすぎるせいか新味がないせいかあまり注目されていないコスモスの小箱シリーズから去年発売された。
 タイルは5×5で、初期配置は中央に4枚。手番はカルカソンヌのように山札を1枚引いて、隣接するタイルがすでにあれば置くことができる。なければキープして後で置く。星座ができるか、タイルが埋まって青いキューブを置くことができれば得点。基本はそれだけだ。
 星座は大きいほど得点が高くなるが、得点をもらえるのはあくまで完成させた人だから、とっておきの1枚は後で出したい。そのため置けるタイルを引いてもパスすることができる。ただしパスにはお金がかかるから、損得の勘定が必要だ。
 しかし皆がパスしたらゲームが進まないではないか? そんな心配は要らない。山札がなくなり、キープしておいたタイルを先に置き終えると、手番が来るたびに得点が入ることになっている。だからパスでめいっぱいためこんでしまうと、他の人を利することになりかねない(それ以外にも、パスは5回までというルールがある)。
 ちなみに引いたタイルが置けるのに、置けないと思って手番を終えた人にはペナルティがある。それぐらい一目ではわかりづらい絵柄で、天文学の知識がものをいうかもしれない(タイルを全部並べた図が箱裏に入っているのでそれを注意深く見ればまず問題なし)。今回は皆で相談して進めたのでこのペナルティは発生しなかった。
 デザイナーは戦略のヒントとして、タイルを置くタイミングがゲームのキモだという。ただ引いたものを漫然と置いていっては勝てまい。しかしひとたびにらみ合いが始まると、タイルの引き運が勝敗を決定的に左右する。隣接するタイル同士をまとめてもっていれば有利だ。
 sirouさんがあまりパスせずに絶好のタイルを引いて大勝。かゆかゆさんとずーあーさんはにらみ合いをしてお金を使ったため2人で沈んだ。ってそういう展開になるよなあ。ちょっとぬるい。

はなまる作文ゲーム(Hanamaru Composition Game / 糸井重里 / 河田, 1993)

はなまる作文ゲーム普通に作っているつもりでも

 一昔前の国産ワードゲーム。手札5枚と、助詞カードを使って文を作る。判定はほかのプレイヤー。長い文を作れば得点が高くなるが、無理があれば判定が通らなくなる。特に一癖ある単語が書かれたスペシャルカードの使いどころがポイントだ。
 とはいえ勝敗を気にせず、ヘンテコでインパクトのある文を作ってゲラゲラ笑ったり、どうしようもない文で苦しい説明を聞くのが楽しみ方。思わず笑えます。
 カードの中は、どうみても下ネタを作ってくれといわんばかりのもの(「一発」「しちゃった」)があり、女性がいるときには良識が問われるかもしれない。
 手堅く稼いで1位。自分では絶対通ると思っていても、判定に微妙なことがあるのが面白かった。ワードバスケットアップルトゥアップル日本語版あいうえおプラスワードリンクことばであそぼ……ワードゲームは国産でしかないわけだから、これからももっと出てほしい。アトリビュートとか、チームワークの日本語版なんて出ないかな。

オシリス(Osiris / H.ヴィット、A.シュタイナー / ヘクサゲームズ, 1995)

オシリス次のファラオは僕だと思ったら…

 次のファラオをめざして神官がピラミッドをのぼっていく。しかし真の勝者はファラオになった神官の神格を最も多く支持していた人。どの神官がどの神格をもっているかはわからない。推理をはたらかせて、有力そうな神官に支持者を配置しよう。
 12人の神官は始めランダムに神格を与えられる。神官コマと神格チップは磁石で一心同体。そのうち自分が操る3人だけ、裏返してその神格を確かめることができる。支持者コマを神格に振り分けたらスタート。
 手番にはまず神官を移動する。その神官が持っている権力コマの数だけピラミッドを移動、一段上る/下るのに2つ、横に1マス動くのに1つ消費する。消費した権力コマは左へ1つずつ分配。これが次に移動するときのエネルギーになる。
 他の人の神官コマがあるマスに入ったら戦闘。当事者同士がその神官の神格をこっそり見せ合って、支持者の多い方が勝つ。勝ったら神格を交換でき、負けたらふりだしに戻る。これを繰り返すうちにどのコマがどの神格をもっているか段々わかってくるという寸法だ。戦闘に参加していない人も、戦闘の結果や支持者の集まり具合から何となく予想することはできる。
 支持者を移動したければ移動して手番終了。ファラオに近い有力な神官には自然と支持者が集まってくる。そうなると、自分の神官がファラオになっても支持者で負けるなんてことも(1つの神格には、自分の支持者を2つまでしか置けない。同数の場合は手番が後の人が勝つ)。ピラミッドのマスは権力コマで封鎖でき、全部塞がって誰も頂上に上れなくなったらピラミッドの頂上に隠された神格が発動。勝敗はこの神格に支持者を置いた人で決まる。

 はじめ神官は自分の街に近いところからのみピラミッドに上れるとしたが、ピラミッドの封鎖が2回も続いたので、神官はどこからでも上れることにした。はじめタナカマさんの神官(カメムシ)が順調に支持者を集めながら上っていく。このままどうしようもないかと思われたが権力チップが枯渇、頂上まで上る力が消えると支持者離れが起こった。次にけがわさんの神官が一気に頂上までのぼりつめる権力チップを集め万全の態勢かと思われたが、皆が予想していた神格は別の神官に。そこでけがわさんは戦闘を仕掛けて神格を奪い、そのまま頂点に上って勝利となった。お見事。
 第一印象では戦略がまるで見えなかったが、少しずつ上りながら力を蓄えていく方法、街で権力を蓄えてから一気に上っていく方法があることがわかった。前者では神格を他の人に明かすことになるので支持者を集めやすい分、相乗りされる恐れがあるが、後者は機を逸すると警戒され、通路を封鎖されてしまう。ほかにも有力そうな神官に相乗りしていくコバンザメ戦法などあるかもしれない。3人の神官で権力チップをうまく配分しながら、他の人のコマを偵察に行く係、一気に頂上に飛び込む準備をする係など、うまく分担するのがコツと言えそうだ。

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