ドイツ年間ゲーム大賞がノミネートされる5月、今年もすでにメビウスから相当の新作が販売されているが、ぜひ発表前に遊んでおきたいと思われる9タイトルをかゆかゆさんと個人輸入。中には長時間かかるものもあり、卓分けをして1時間程度で回す自宅ゲーム会では遊べないと判断、わずか3日後であるが再び知り合いをお招きして秋葉原でゲーム会を行うことになった。
平日に秋葉原という難しいパターンでも時間を調整して来てくださるかゆかゆさん、ファラオさんに加え、先ごろ『日経ネットナビ』でボードゲームサイトの特集を執筆された椿さんで4名。夜からは仕事を終えたカワサキさんがいらっしゃった。休憩なしで9時間近く、ヘビーなゲーム会である。
ゴア|無碍光|ハンザ|サンファン|レイルロードダイス|マハラジャ
ゴア(Goa / R. Dorn / Hans im Glueck, 2004)
ポルトガル領時代のインドの都市、ゴアで交易を展開する経営ゲーム。ジェノバの商人の作者ドーンがハンス社から発表しました。今年は久々にいわゆるゲーマーズ・ゲームがたくさん復活している様子で、アメリカのゲーマーなどを喜ばせています。このゲームも重量感たっぷりでじっくりと楽しむことができます。
はじめにプランテーションなどのタイルを競ります。各自何を競りにかけるか選んだ後、それを1つずつ競っていきます。ビッドは1周だけのワン・ビッド方式。落札したお金はタイルを選んだ人に入る(自分で落札したら銀行へ)ので、みんなが欲しそうなタイルを選んでおくのが基本です。
競りが終わると、今度はアクションフェイズ。スパイスを船に乗せて出荷し、それによって自分のボードを発展させたり、新しい植民地を手に入れたりします。そのため、競り落としたものを元手にいろいろな行動を行っていきます。
- 船の建設…スパイスを出荷するための船を手に入れます
- スパイスの生産…船に積むスパイスを手に入れます
- 税収…競りに使うお金を手に入れます
- 探検…特殊効果のあるカードを引きます
- 植民地の建設…植民者を送り込んで新しい植民地を開きます
- 発展…上記の5つの建設・生産能力を、スパイスを船で出荷することで向上させます
この中から1つずつ、合計3アクションを行ったらラウンド終了。またタイルを競りに戻ります。それぞれのアクションが勝利点に結びついているので、どこに力を入れていくか、競り落としたタイルと相談しながら考えていくことになります。
そして4ラウンドが終わったら前半終了。売れ残ったタイルを捨てて、後半の新しいタイルを並べます。前半は生産重視のタイルが多いのですが、後半はより勝利点に関係しているものが多くなります。
再び4ラウンド行って最後に得点計算。発展の度合い、植民地の数、探検、持ち金、タイルの特殊能力で勝利点を計算し、一番多い人が勝ちます。
タイルと探検カードをひとつひとつ説明するので、インストに45分ほどかかり、またプレイ時間は約2時間かかりました。しかし始まってしまえばカードやボードにシンボルが図示されているのでわかりやすく、とても面白く遊べました。金の亡者と言われながらひたすらお金を稼いだファラオさんが目立っていましたが、終盤に椿さんが最後の植民地、カルカッタに到達して1位。私はリソース管理が甘くていつも何か足りないという状況になり、伸び悩んでビリとなりました。
競りというインタラクティブな要素と、発展というソロプレイの要素が交互に訪れ、飽きさせない展開で満足感があります。戦略を変えればまたいろいろ楽しめそうで、同時発売のサンクトペテルスブルクと共に優れたゲームだと思いました。
余談ですがゴアは現在、インドで数少ないヨーロッパ感の漂う観光都市になっています。1年中泳げるビーチでは西洋人が日光浴をし、レストランではエビのグリルが最高。イエズス会の教会やフランシスコ・ザビエルの墓などキリスト教の史跡もあって、二重の異国情緒たっぷり。日本からはムンバイまで国際線、国内線乗換え。
無碍光(Mugekou – Light without obstacles / G. Suzuki / Octagon Entertainmant,2002)
お念仏の力で108の煩悩を打ち払う国産の仏教カードゲーム。かゆかゆさんが「ネタとして外せない」と手に入れてきました。サブタイトルの「仏教カードゲーム 入門編 ~煩悩~」というのがイカしてます。発売日は2002年とクレジットされていますが、主に仏具屋さんで販売されていたらしくゲーマーの目に触れることはありませんでした。ちなみに浄土真宗、ご門徒さんのテーマなので、禅宗の僧侶などにも知られていません。通販はこちら。
お念仏カードを出して、その数字の合計をちょうど108にするのが目標です。ですがカード構成が憎らしく、奇数が多くてなかなか108にできません。その上、お念仏カードの上にほかの人から煩悩カードを出されると、それを取り除くまで上がれません。取り除くには、より強いお念仏カードを出したり、僧侶カード、御仏カードを出して追い払います。
テーマもさることながら、絵柄が美しくて感激しました。ルールブックはやや煩雑ですがゲーム自体はとても軽く、インスト込みで15分かかりません。もし仏教カードゲームシリーズが続くとしたら非常に楽しみです。かゆかゆさんが僧侶を駆使して優勝(笑)。
ハンザ(Hansa / M. Schacht / Abacus, 2004)
ドイツの商人となってバルト海・北海沿岸の都市を船で移動し、商品を売買するゲーム。コロレット、パリスを共にヒットさせたシャハトとアバクスの新作です。フェドゥッティは自身のサイトで「王と枢機卿を超える彼のベストゲーム」と褒めています。
ボードにはデンマークのコペンハーゲンほか9つの都市があり、そこでまず商品を買います。この商品を他の都市に持っていって売り、勝利ポイントにします。販売するには同じ色の商品を2つ以上集めなければなりません。そこで商品を集めるため、さらに他の都市も回っていくことになります。
ところが都市から都市への移動は、みんな共通の船を使わなければなりません。その上航路が予め定められており、思うようなところになかなか行けません。航路には矢印があって行くことはできても帰ることはできず、元の都市に戻ってくるには大きく遠回りしなければいけない場合もあります。コペンハーゲンに行きたい人もいれば、ストックホルムに行きたい人もいる。でもヘルシンキからはどちらも行きづらくて……この不便さがゲームの妙を生み出します。
さて、都市には各自の商館があります。これには2つのはたらきがあって、1つはその都市で最も多く商館(販売権)を持っていると商品が無料で買え、もう1つは商品を売るときに必要となります(商館のない都市では販売できません)。商館は、商品を売らずに捨てることで建設でき、売るたびに1つずつなくなっていきます。どの都市で買い、どの都市で売るかは全て商館次第。自分の商館を最大限に生かしながら、他の人にやすやすと商館を使わせないよう、航路を選ばなければなりません。
ボード上に商品がなくなったらゲーム終了で、商館と販売した商品から勝利点を計算して一番多い人の勝ち。商品の勝利点が大きいので、商館を建てるよりも商品をひとつでも多く売る商人魂が競われます。
ファラオさんがコペンハーゲン近くのトライアングルを掌握し、そこで効率よく商品を手に入れたのが奏功して17枚のチップを売ることができ、1位。私はファラオさんの都市から行ける所に拠点を築き、おこぼれに預かるようなかたちで2位。かゆかゆさんと椿さんの都市にはなかなか船が入りにくく、3,4位に沈みました。
ほとんど公開情報なので、自分が最も儲かり、次の手番プレイヤーに最もいやらしいルートを考えるのはパズルで、かなり頭を使います。後半は「アイヤー、これは困ったあるよ(何人ですか?)」「ここはあれで、あれだから、よし、あれにします(意味が分かりません!)」といった頭ウニの台詞が飛び交っていました。今回は1時間15分ぐらいで終わりましたが、長考型がいるとゲームは確実に長引くでしょう。後先考えずに気軽にプレイすることができればいいのかもしれませんが、経験者はそんなことができません。
アバクス社では、メールで受付して500名に拡張カードを郵送しました(写真下)。あまり大々的に宣伝しなかったにもかかわらず、全世界から1000人の応募があったそうです。ルールはゲーム終了時、建てている商館の一番多い人に2点、最後に商品の補充を行った人に3点、商館をもっている都市の一番多い人に4点、樽1のチップの数が一番多い人に5点というもの。今回は採用しませんでしたが、試算しても順位は変わらず。特に3点と5点のボーナスはトップ目のプレイヤーが取りがちなので、ただ差を広げるだけではないかという話になりました。
サンファン(San Juan / A. Seyfarth / alea, 2004)
ゲーマーズゲームとしては久々のヒットとなった植民地経営ゲーム、プエルトリコを基本はそのままに、手軽なカードゲームにしたもの。メビウスが日本語版を発売するというので、昨年のゲームパーティ、今年のゲームマーケットで大いに注目を集めました。今回はかゆかゆさんが輸入したドイツ版にてプレイ。
カードにはインディゴから銀までの生産設備、特殊能力を持った建物が描かれています。これをあわせて12件建てるのが目標です。
手番は職業選択によって行います。好きな職業を選び、行動を行います。
- 建築士…手札からカードを出して建設を行います
- 監督…生産設備で生産を行います
- 商人…生産した産物を販売します
- 参議会議員…手札を補充します
- 金鉱掘…自分だけ手札を補充します
建設する建物だけでなく、商人で得られるお金や建築コストも全て手札が兼ねます。すなわち建設の時にはコスト分だけ手札を捨て、販売の時には収入だけ手札を補充します。このシステムによってゲームはかなりシンプルになりました。しかし建てたい建物をお金として支払うことになるので、建てるか捨てるか悩むことになるでしょう。
プエルトリコと同様、自分が選んだ職業で、自分の後に他の人もプレイします。ですのであまり他の人に有利になるような職業を選ばないように気をつけないといけません。ただプエルトリコほどの影響はないので気楽に選んでよいでしょう。
むしろ大事なのはいわゆるコンボ、数ある建物をどのような組み合わせで建てていくかです。建物の特殊能力を生かすも殺すも、他の建物の特殊能力との組み合わせ次第。特に最も大きいコスト6の建物はそれ自体では点数にならず、他に建てた生産設備やモニュメントの数によって変わってくるので、手当たり次第に建てては点数が伸びません。
ファラオさんがコスト6の建物を2件立て、モニュメントをコンプリートして1位。私は生産設備を7つまで建て、ギルドホールで14点(1つにつき2点)たたき出しましたが及ばず。椿さんとかゆかゆさんは手札のめぐり合わせが悪かったようです。
プエルトリコよりも気軽で何度もプレイでき、そのたびに建物の組み合わせにたくさんの可能性が考えられるよいゲームです。ただ、シンプルな分、他の人との絡みがあまりなく(誰が何を建てたかチェックするのは大事ですが)、ソロプレイ感がやや強くなっているのは少し欠点に映りました。よーいドンでみんながわき目も振らず駆けっこをしているような感じです。それと、コスト1,2の建物にあまりに使い道がなさそうなハズレがあるのも気になりましたが、これについては日本語版が出てから研究してみたいと思います。7月が待ち遠しいです。
レイルロードダイス(Railroad Dice / J. Kappe / Wassertal Spielverlag, 2003)
専用のダイスを振って出た目で線路を敷き、駅を作って乗客を獲得するゲーム。昨年のエッセンで小部数発売されたのがあっという間に売り切れ、話題になっていたゲームです。最近第2版が発売され、日本では昨日、バネストから発売となりました。
手番には以下の5つのアクションから、5つを行います。
- 収入を得る…ダイスをもらいます
- ダイスを振る…ダイスを線路や株券に変えます
- 株券を買う…自分が社長になりたい鉄道会社の株を買います
- 線路を引く…ボードにダイスを並べます。路線は1本だけで、その両端を伸ばしていきます
- 駅を建てる…線路上に自分の会社の駅を建てます。
全員が手番を行った後、自分の駅から乗客の収入があります。乗客は駅を建てれば建てるほど増えます。これが最後に一番多い人が勝ちます。
ボードはタイルから成り立っており、そのタイルの外に出ると次のタイルが置かれます。使い終わったタイルはダイスと共に除去するので、どこに駅が建っていたか分かるように小さいタイル(写真右上)で記録しておきます。このあたりの芸が細かく、本当に線路を建設しているような気分になってわくわくします。ただし、株を増やして他の人の会社をのっとったりすることができるので、建設以外のことも考えておかなければなりません。
時間の関係でインストと序盤のみのプレイ。路線が1本しかないのと、同じ路線に違う会社の駅ができていくのは不思議に思いました。
マハラジャ(Raja / W. Kramer & M. Kiesling / Phalanx 2004)
北インドの都市をめぐって宮殿を建てる戦略ゲーム。概要は前回参照。前回はルール説明に不備があったので再プレイとなりました。
フェドゥッティが絶賛している(この人が絶賛しているゲームは少なくありませんが)のは操り人形を髣髴とさせる職業選択のためでしょうか。ゲーム中プレイヤーは6つの職業を転々とし、その特殊能力を生かしてアドバンテージを作っていきます。
- 領主…手番が最初。得点計算で同点ならば必ず勝つ
- 商人…毎回1金の収入
- 僧侶…得点計算で宮殿の得点が2倍になる
- 遊行者…移動コストが無料
- 経営者…家が1件無料
- 建築家…宮殿を3金安く建てられる
- (ヨーガ行者(ヴァリアントルール)…追加アクション)
序盤大きな宮殿(街の中央に立てる宮殿で、コストは変わらないが得点計算で有利)を建築できなかった私はどんどん置いていかれました。かゆかゆさん、カワサキさん、ファラオさんが全員、第8ラウンドで7つ目の宮殿を建て、持ち金勝負でカワサキさんの優勝。建築家でコストをセーブしていたのがうまくいったようです。
行動は同時プロットなので考える時間があまりかからず、メーカー発表どおり90分で終わりました。それでいて職業選択や得点計算の起こる都市でさまざまな駆け引きがあり、緊張感の高いよいゲームだと思います。インドというテーマで贔屓目に見ていることもありますが、同じ作者のエルグランデよりも面白いです。再戦希望。