今年の9月頃に出るという予定(エッセンの記事が入り12月末に延期されました)のゲーム書籍の記事に、「2002年ドイツ年間ゲーム大賞候補作品全タイトル紹介」という企画があり、「候補作品が発表されたら、国内未発売のものを緊急輸入する」という依頼を受けました。そこで発表日にドイツのショップサイトを回り、全ゲーム揃っていたエッセンの「All Games 4 You」に注文。2週間ほどで入手し、1週間ほどで翻訳。幸いにして全部英語ルールがありましたが、曖昧なところがあるのでドイツ語ルールで確認しました。
今回はその引渡し兼テストプレイを行いました。非常に珍しい企画でしたのでちょっと広めに声をかけて、康さん、鷹村さん、よ~さん、かゆかゆさんのウェブマスターの面々、茨城県内のゲーム愛好者Seさん、Moさん、そしてゲーム書籍関係のライター、デザイナ、イラストレーター、カメラマンといったスタッフ6名、そして私の計12名がつくばに集まりました。
近所の集会所の和室で4名ずつ3卓立ちました。候補作6タイトルはどれも軽めのゲームばかりで1時間以内に終わり(ゲームによっては1時間で2回できたものも)、6時間で計6回まわしましたので、同じゲームを2度以上やらなければ全員が6タイトル全部を遊べたというバッチリな結果でした。
ドイツ年間ゲーム大賞は人気投票ではなく、審査員賞ですので、それゆえに政治的な匂いがぷんぷんする訳ですが、今回の6タイトルは総じて面白いものが多かったと思います。
トランスアメリカ|ブロクス|全部バケツの中|ヴィラ・パレッティ|ロード・オブ・ザ・リング旅の仲間|サン・ジミニャーノ
トランスアメリカ(Trans America/F.-B.Delonge/WinningMoves 2002)
アメリカ大陸を横断する鉄道を建設するゲーム。最終ノミネート3作に残っています。
ゲームのはじめに各プレイヤーは5色のエリアからひとつずつ都市を担当します。どの都市を担当しているかはカードに描かれていますが、他のプレイヤーには秘密です。
最初好きなところにスタートマーカーを置き、そこから手番につき1本か2本ずつ、レールを置いていきます。5つの都市を早くつなげたら手札を公開してつながっていることを確認し、勝ちになります。その時点でつながっていない他のプレイヤーはマイナスポイントです。
他のプレイヤーの路線につなげると、お互いに共用することができます。ゲーム終盤には結局全員の路線がつながりますので、他のプレイヤーがせっせと引いてきたところにちょいと便乗して終わりです。
何とそれだけです。お金も株券もリソースもありません。いかにも鉄道ゲームっぽいボードからは想像もできない軽さです。あっというまに路線が広がっていくので、他のプレイヤーの邪魔とか考える前に自分の路線をできるだけ多くつなげておくことに集中しがちです。どこから始めるかというのを少し考えるくらいです。ドイツのサイトで「どのゲームが大賞を取るか」というようなフォーラムがあり、そこで「トランスアメリカは軽すぎる」という声が聞かれましたが、そのことが納得できました。
手札の組み合わせが他のプレイヤーとかけ離れていたSiさんが4位。鷹村さん、Tsuさん、私が同点1位。
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ブロクス(Blokus/B.Tavitian/Sekkoia 2001)
テトリスのようなブロックをボードに敷き詰めていくフランスのゲーム。
各プレイヤーは四隅からスタートしてブロックを並べていきます。自分の色のブロックはカド同士のみが接するように置かなければなりません。
ブロックには1マスから5マスまであり、形は全部違います。置ききれなかった分がマイナスポイントになります。
アブストラクトですが、ボードががっちりしていてコマもカラフルということもあり、何となく心浮き立ちます。他の人のエリアにいかに奥まで入っていけるか、逆に他の人のブロックをいかに侵入させないかポイントになります。「このブロックをそこに置きたいから、まずこれをここにおいて…いやその前にあの人がここに置いちゃうかな?」などと先の先を読むことも必要です。うまくいって他の人のエリアに侵入でき、隙間に自分のブロックががっちりとはまった時には何ともいえない喜びがあります。完成度の高いゲームでした。
1回目(写真)はよ~さん(緑)が-9点で1位。2回目は皆攻めどころ、守りどころがわかってきて厳しい戦いとなりましたが私が-4点で1位。全部置いて+20というのは夢のまた夢です。
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全部バケツの中(Alles im Eimer/S.Dorra/Kosmos2002)
コスモス社は昨年から出し始めた「シンプルゲームシリーズ(細長い箱)」での候補作品入りです。たぶん本腰を入れていたのは「ノーチラス」などの大箱シリーズだったと思うのですが…。
自分のバケツの山を動物の突進から守るゲーム。私の大好きなデザイナ、シュテファン・ドーラによる、ルールが簡単で盛り上がるゲームです。
スタートプレイヤーから、5種類の動物のいずれかのカードを出します。ここで出された動物が、誰かのバケツが崩れるまでプレイヤー間を走り回ります。
バケツを崩されたくなかったら、その動物カードで数字が上回るように出さなければなりません。出せなければ(または出さなければ)、その動物が対応する色のバケツに激突し、1つ崩れます。崩れたバケツの上にバケツがあったら、そのバケツも一緒に崩れてしまいます。
こうして誰かのバケツが全部崩れ去るまでゲームを続けます。バケツが多く残っているプレイヤーが勝ちです。
カードは3枚まで出すことができます。しかしながら、補充は1枚ずつなので、たくさん出せば手札が減ることになります。自分のピラミッドの構成を見ながら攻めどころ、守りどころを見極め、時には出せるのに出さないで1つ崩しておくという手もあります。
昔、「ザ・我慢」というテレビ番組がありましたが、それに近い雰囲気です。涼しい顔をしてカードをバンバン出していても、手札はすっからかんでヒヤヒヤということがあったり、他のプレイヤーの激しいせめぎあい中で体力を温存したりと、臨機応変なカードプレイがポイントになります。6人まで遊べ、パーティーや重いゲームの合間に軽く盛り上がれる楽しいゲームです。
2回やりましたが2回とも鷹村さんのバケツが最初になくなりました。1位はバケツの配置が絶妙だったSeさん。ついつい熱くなってカードを出しすぎると後が恐いです。
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ヴィラ・パレッティ(Villa Paletti/B.Payne/Zoch2001)
建物を崩さないように柱を下から取り除いて上にあげていくバランスゲーム。最終ノミネートに残っています。
手番には自分の色の柱を下の階から取り除いて、最上階に乗せます。崩したら負けで、その時点で建築マイスター(=最上階にもっとも太い柱を乗せているプレイヤー)が勝ちです。建築マイスター自身が崩してしまったら、その前に建築マイスターだったプレイヤーが勝ちます。
つまり1位をとるには、崩れそうな5階か6階に太い柱を上げられるようにしておかなければなりません。太い柱がそれより下の階でぜったい外せない「礎」になってしまうと不利です。そのため2~4階付近の柱の位置取りが重要になってきます。もちろん、自分の柱を殺さないように床をうまく置くのも大事です(そのために、床はどんどんアンバランスになっていきます)。上家下家を見ておくことも必要で、太い柱の生き残り合戦はさりげなく戦略的です。全体的な重心を見極めて、見事に自分の柱を抜けたときの爽快感、そして崩してしまったときの盛り上がりはたまりません。このゲームが最終ノミネートに残ったのは、単なるバランスゲームを超えてプラスアルファがあったからだと思いました。
Moさんが5階からの冒険的な柱抜きに失敗してガッシャーン!6階に太い柱を打ち立てたKaさん(赤)が勝利。全く座っている暇がないほどエキサイティングでした。
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ロード・オブ・ザ・リング旅の仲間(Der Herrder Ringe – Die Gefaerten/R.Knizia/Ravensburger2001)
映画「ロード・オブ・ザ・リング旅の仲間」を題材にしたクニツィアのカードゲーム。キャラものというとちゃらちゃらしていて内容はいまいちという先入観がありますが、いたるところにクニツィア魂が感じられ、嬉しい誤算でした。なお、同じシステムでアメリカのファンタジーフライト社から「キングスゲート」というタイトルで発売されています。こちらの方が場所は取りません。
物語は「袋小路屋敷」から始まり「アモン・ヘン」で終わります。10の場面で手柄を立てて勝利ポイントをたくさんもらったプレイヤーが勝ちです。
場面は2枚組みのカードで示され、この周囲10のスペースに順々にカードを置いていきます。全部置き終わった時点で合計点数の一番高いプレイヤーから、勝利ポイントが配分されます。ビリのプレイヤーは何ももらえません。
カードはガンダルフ(5点)から、0点まで、それぞれ指輪物語の登場人物が描かれています。またたとえガンダルフでも追い払ってしまうナズグルがいます。カードによっては複数枚置けるので、誰の手番で場面が終わるかわかりません。また黒い場面(モリアなど危険なところ)では、他プレイヤーのカードの上により点数の高いカードを置くこともできます。
場面が終わったら、次の場面が置かれます。前に使われたカードでも、次の場面に接していればそのまま有効になるため、どこに次の場面が置かれるかは重要です。いいカードは2回使うことができるようにしたいものです。「ボロミア、ブリー村に死す」「まだ登場してないって(笑)」なんてことは愛嬌でしょう。
それから場面によって、1位のプレイヤーには指輪が与えれます。この指輪には「+2点」「この場面は点数ではなく枚数で勝負」「一度使ったカードを召還」などといったなかなか強い能力があります。
指輪・ナズグル・ガンダルフを適切な場面で使って、効果的に勝利ポイントを集めることがコツのようです。手札は全プレイヤー同じ内容で一定数しかないので、引くところは引くことも必要です。
よ~さんが指輪をうまく使って最後に1位抜けしました。勝利ポイントチップが公開だったので最初の方で1位をとっていたTsuさんはナズグルにつけねらわれ、2位。
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サン・ジミニャーノ(San Gimignano/D.Carpitella/Piatnik2002)
ギルドに取り入って塔を建設していくゲーム。
手番には貴族コマを1コ置き、ボードを1枚置いていきます。お互い隣接しあう4色のギルド(菱形のマス)全てに自分の貴族が置かれていれば、そのうち1つのギルドに塔を建設できます。
塔を建てたギルドにはもう貴族を置けません。残った3つのギルドに隣接する別のギルドに貴族を置いて、次の塔を建設していきます。
とうまくいけばいいのですが、1つのギルドには貴族コマを2つまで置くことができます。他プレイヤーに先に塔を建てられてしまうと、そのギルドがつぶされてしまいます。うまく先手を取りましょう。
他のプレイヤーが来ない限り広く布石を打っておいて、他のプレイヤーが侵入しそうになったら一気に建てていくという戦術、他のプレイヤーのエリアに積極的に侵入していく戦術、先手後手の差が大きいので先の先を読んで配置しておくことが大切です。
塔に本物のレンガを使用しているのは感激しますが、アブストラクト色が強くて好き嫌いがはっきり分かれました。先手後手の差が大きいのも欠点です。私としてはパズルを解いているようで、新しい答えが見つかっていく楽しさがありました。2回やって、2回ともよ~さんが1位。
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