シュピール’14:ホビージャパンの輸入リスト第3弾
ホビージャパンは、10月にドイツで開かれたシュピール’14の新作輸入リスト第3弾を発表した。今回はフランスの出版社3タイトルで、発売は12月下旬から1月中旬を予定している。
★ロビン(Robin)
F.モイヤーセン作、イエロ社(フランス)/フラットラインドゲームズ(ベルギー)、2~6人用、8歳以上、30分、3400円(税別)、12月下旬発売予定。
プレイヤーはシャーウッドの森に潜むロビン・フッドとその一味に連なって、富める者から奪い、貧しき人々に施しをします。そのために、シャーウッドの森のねぐらの野営地を手伝ったり、ノッティンガム城へと続く道で旅人を待ち構えたり、ロビンからの報せを伝えたり、近隣を見まわって情報を集めたりします。危険を侵せば侵すほど手に入るものは増えますが、城にあまりに近づきすぎると、待ち構えていた警邏と守備隊に捕まってしまうでしょう。
いずれかの種類の任務を7回こなすことで、ロビン・フッドの副官となれます。ほかのプレイヤーもその座を狙っている中、ほかのプレイヤーよりもいち早く成功をつかみ取ることができるでしょうか? プレイ時間も短く、家族で遊べるお手軽さと、度胸が試される駆け引きのゲームです。
★孫子兵法(Sun Tzu)
A.ニューマン作、マタゴー社(フランス)、2人用、10歳以上、30分、5800円(税別)、1月中旬発売予定。
西暦506年、春秋戦国時代……楚の昭王、兵を率いて淮河を侵し、孫子、兵を挙げ迎える。楚の昭王軍を率い高地に陣し、孫子率いる呉兵比ぶるにその数少なし。孫子、謀りて兵を退き、昭王即ち兵を散らせ追撃を命ず。楚の兵まばらとなり、孫子これを漸次向かえて撃ち減らす。この柏挙の戦いに於いて、楚の昭王敗れ兵を郢都に退く。孫子とその兵、郢都を侵し、昭王都より出、孫子の兵法を大いに懼れる……。
プレイヤーは楚の孫子、もしくは呉の昭王となり、軍を率い、中国の平定をめざします。毎ターン、各地域のカードをプレイし、地域ごとに公開します。そのカードの値や特別な効果により、プレイヤーは兵を進めたり退けたりします。カードは1度しか使用できないものがあり、そのため適切な時を選んで使用することが勝利のためには重要です。ゲームは綱引きのように、中央に置かれた得点マーカーを自陣側に動かすことを競います。9ラウンド行うか、いずれかのプレイヤーが得点マーカーを自陣側の最後のスペースに進めると終了します。アートワークも美しい、対戦型の陣取りゲームです。
★アルティフィキウム(Artificium)
T.シャーゴロドスキー作、アスモデ社(フランス)、2~6人用、8歳以上、20~50分、5000円(税別)、1月中旬発売予定。
中世の施政者として、産業を発展させ、産物の効率的な循環を作り上げて、自分の都市を発展させるゲーム。生産し、加工し、資源を集めますが、ほかの都市の領主の邪魔があることを忘れてはいけません。
カードドリブンによってゲームは進みます。カードの中には資源を生み出すものや、ある資源を別の資源に変換するものや、勝利点をもたらすものや、アクションを実行できるようにするものがあります。カードの連鎖を見極めてプレイすることが、勝利のために必要となります。
ゲームは4ラウンドからなり、各ラウンドの開始時には、各プレイヤーは手札5枚を持っています。そのほかに、表向きになったカードが6枚並べられており、そこを市場と呼びます。まず最初にプレイヤーは自分の手札のカードと市場のカードを交換することができます。その次に、カードを使用してアクションを実行したり、交易をおこなって資源を集めたり、ある資源を別な資源へと変換して勝利点を得たりします。
4ラウンドが終了したところで、持っている資源などを売却して最後の得点計算が行われます。最も得点を獲得したプレイヤーは、中世の施政者として実力を示したこととなり、勝者となります。カードの効果を見極めつつ必要なカードをそろえていく駆け引きと判断が面白いボードゲームです。デザイナーはロシア人で、この作品が第一作となります。
ムラーノ島(Murano)
じっくりと島をデザイン
ヴェネツィア本当から水上バスで15分、運河で7つの島に分かれたムラーノ島は、ガラス細工「ヴェートロ・ディ・ムラーノ」で有名である。その美しいフォルムは、日産のクロスオーバーSUV「ムラーノ」の名前の元にもなった。この島を舞台に、商人となってお偉いさん方の要求に応え、名声を稼ぐドイツのボードゲーム。作者は『村の人生』のブラント夫妻。ムラノつながりは、もちろん日本語だけの話である。
お偉いさんの要求はわがままだ。「この島では店を沢山建てろ」「この島にはあなただけガラス工房を作って」「青いガラス細工を集めろ」「この島ではガラス工房とショップと宮殿を全部同じ軒数にしろ」「この島には客を3人以下にして」……こんな人物カードの要求を満たすように、島をデザインしていくのがゲームの中心だ。プレイヤーによって狙いが異なるため、達成は容易ではない。
中心となるシステムは「ワーカームーブメント」である。建物タイルを買う、それをボード上に建設する、ガラス細工を作る、ショップから収入を得る、人物カードを買う、ゴンドリエーレ(ゴンドラの船乗り)を配置するといったアクションは、ボード周辺にあるアクションスペースに船を移動して行う。何隻かの船がアクションスペース上にあり、空いているところに進めてアクションを行うことができる。ほかの船があるスペースでは、まずその船をどかしてから、後ろの船を進めなければならず、これにはお金がかかる。「ワーカームーブメント」といえばS.フェルトの『ルナ』(TGiWレビュー)があるが、船はみんなが共有していて、どの船を動かしてもいいため、選択肢は広い。
ゲームのポイントとなるのが、ガラス細工の製造だ。ガラス工房タイルを買い、ボード上に建設し、製造アクションを行うことでガラス細工ができる。このガラス細工はすぐに売ることができ、ゲーム中の重要な収入源になるのだが、製造のとき、島に煙と熱が立ち込め、住民を脅かすため、名声点が下がってしまう。そして名声点が十分になければ、製造することができない。宮殿などを建てて名声点を稼ぎ、その名声を使ってガラス細工を作り、その収入でまた新しい建物を作るという自転車操業。お金も名声点もカツカツなところがゲーマーズゲームらしい。
そんなカツカツぶりを少し和らげてくれるのが「特別な建物」。これを建てると、特別な建物カードを受け取り、ちょっとした特殊効果が得られる。特定のアクションのたびに収入が増えたり支出が減ったり、ガラス細工の色を変更できたり、選べるカードの枚数が増えたりする。これを活かしたアクション選択ができると、ゲームを進めやすい。
タイルの山が切れたらゲーム終了となり、得点計算に移る。ゲーム中にゴンドリエーレを置いた島に人物カードを適用し、その条件を満たせば名声点が入る。ゴンドリエーレを置いていない島には、人物カードを適用できない。どれだけ多くの人物カードを適用できるか、得点が最大限になるように建物などを配置できるかが勝敗を分ける。
4人プレイで約90分。人物カードを慎重に選ばないと全く得点できないため、選択に悩んだ。1ゲーム目はcarlさんが名声点を最大限削ってガラス細工を量産し、そのガラス細工が名声点になる人物カードで大量得点して1位。2ゲーム目はtomokさんが人物カードをたくさん集め、少しずつ加点して1位となった。島の状況を見ながら、人物カードをもっと増やすか、それともゲームを終わらせにいくかという選択肢が悩ましい。ゲーム終了時にボーナスカードの条件を満たして大逆転というゲームはよくあるが、このゲームはそうではない。ボーナスカードがほとんどの得点源で、ゲームを通してその条件を満たすようコツコツ進めていくというプレイ感覚が新しかった。
Murano
I.ブラント、M.ブラント作/ルックアウトシュピーレ(2014年)
2~4人用/10歳以上/60分