ドイツゲーム賞とは

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ドイツゲーム賞ドイツ年間ゲーム大賞(Spiel des Jahres=SdJ)と訳語が似ていて混乱してしまいそうだが、ドイツで毎年恒例に発表され、注目されるもうひとつの賞がドイツゲーム賞(Deutscher Spiele Preis=DSP)である。

かつてドイツには『ペッペル・レビュー(Die Pöppel-Revue)』というゲーム情報誌があった(2001年に廃刊)。この雑誌では1979年の創刊以来毎年、読者アンケートなどでその年のベストゲームを選んでいた。これが「ゴールデン・ペッペル賞(Goldenen Pöppel)」だ。この賞の選定にあたっては読者だけでなくさまざまなところから広く意見を集めていた。読者4割、サークル2割、ショップの店員2割、メディア関係者2割という内訳だったという。

『ペッペル・レビュー』は1985年、エッセン・シュピールを運営するフリードヘルム・メルツ社から発行されるようになり、「ゴールデン・ペッペル賞」を改称して1990年に設立されたのがドイツゲーム賞である。運営はフリードヘルム・メルツ社が継続し、主としてエッセン国際ゲーム祭の一環として、入場料・出展料収入から経費が賄われている。

改称した後、投票は『ペッペル・レビュー』誌の読者だけでなく『フェアプレイ』誌の読者、300以上のサークルへの投票依頼、ゲームショップでの投票募集、メディア関係者への投票依頼、そしてインターネット投票と幅広く行われるようになった。メルツ社は前年に投票した人へは翌年、郵便で投票依頼を行うなど投票者拡充に努めており、有効投票数は2002年で1,840票、2003年に1,937票、2004年には2,341票と上昇を続けている。2001年からインターネット投票ができるようになって、ドイツ人以外の参加も容易になった。

「ドイツ」ゲーム賞と銘打ってはいるが、投票者も対象ゲームもドイツ人・ドイツ製に限らず、グローバルなイベントにしたいと、フリードヘルム・メルツ社は述べている(実際にはほとんどドイツ人が投票するので、ドイツ外のメーカーでもドイツ語版を出していないと入賞は難しい)。

投票は一般ゲームとして面白いと思う順に5つまでと、キッズゲームとして1つを記入。インターネット投票では重複投票防止のため、名前と住所の記入が必須。7月末に締め切られ、専門の統計会社で集計される。かつてはメルツ社が集計を行っていましたが、票数を操作した疑惑がスキャンダルとなり、正確と公平を期すために外注されることになった。2018年にはYoutuberが投票を呼びかけるプロモーション行ったことから、投票〆切日を繰り上げるなど、公平性には気を遣っている。

集計では1位に挙げられたものを5点、2位が4点、3位3点、4位2点、5位1点として計算し、獲得ポイントに従って10位までを発表する。キッズゲームは1タイトルのみの記入なので最も多いもの。発表は9月中旬頃にインターネットにて発表され、授賞式は10月のエッセン・シュピール会期中に行われる。

まずエッセン・シュピールの前日の午後から記者会見が行われ、そこで1位受賞作品の一般ゲームとキッズゲームが発表される。そして夜、メディア関係者を集めた夕食会にて授賞セレモニーがある。デザイナーやメーカーの社長が招かれ、インタビューを受ける。

投票は誰でもできるとはいえ、ゲームタイトルとメーカー名を記入しなければ投票できない方式ということもあり、頻繁にさまざまなゲームを遊んでいる目の肥えたフリークが多く投票することになる。その結果必然的に戦略性が高く、時間のかかる重いゲームに票が集まりやすい。そのためドイツゲーム賞はその年のベスト・ゲーマーズ・ゲームともいえるだろう。この点で一般への普及を念頭においてライトなゲームを選んでいる近年のドイツ年間ゲーム大賞とは一線を画している。2001年はカルカソンヌがダブル受賞したが、それ以降は袂を分かち、2002年は年間ゲーム大賞ヴィラ・パレッティに対してプエルトリコ、2003年はアルハンブラに対してアメン・ラー、2004年は乗車券に対してサンクトペテルブルグが選ばれている。

ウェブではドイツ年間ゲーム大賞よりもドイツゲーム賞の結果を歓迎する声が多く聞かれるが、それはウェブもフリークが多く集まるところだからであって、実際の影響力はドイツ年間ゲーム大賞の方がはるかに大きいことは注意しておかなければならない(ドイツゲーム賞を受賞しても売り上げが倍増することはまずなく、ロゴが箱に印刷されることも稀である)。

なお、ドイツゲーム賞とあわせて「金の羽根賞(Goldenen Feder)」という特別賞が1981年から2016年まで発表されていた。模範ルール賞とも呼ばれ、例示が多く、カラフルで分かりやすいルールブックを評価して与えられる賞で、一般投票ではなく関係者が独自に選んでいる。アナログゲームの欠点である分かりにくさや間違えやすさをなくすため、ルールブックのデザインを工夫し進化させているドイツゲームの一端を物語るものと言えるものだったが、2017年から、革新的なボードゲームを表彰する「イノシュピール賞(InnoSPIEL)」に代わられている。

ドイツ年間ゲーム大賞がぬるい、ドイツゲーム賞の方が信頼がおけると思い始めたら、あなたもフリークの仲間に入ったという証拠だ。今度は、インターネットで投票してみよう。そしてエッセン・シュピールに行こう。フリーク街道まっしぐらだ。