人手もお金も足りず大忙し
20世紀初頭のウィーンを舞台に、ホテルを経営して名声を獲得するゲーム。デザイナーはアッキトッカに所属するジッリと、『ツォルキン』『マルコポーロの旅路』で注目を浴びているタッシーニ。ダイスでアクションの内容が決まるという運の要素があるにも関わらず、緻密なプレイが要求される戦略ゲームである。
お客様をカフェでもてなし、その間にホテルの部屋を準備して宿泊させるというのがおおまかな流れである。それぞれのアクションは、ダイスを選んで行う。
毎ラウンドはじめに、たくさんのダイスを振って、出目ごとに分けて並べる。手番にはその中から1つ出目を選んでそのアクションを行う。1はケーキとシュトルーデル(ウィーン名物のお菓子)、2はコーヒーとワイン、3は宿泊部屋、4はお金か皇帝ポイント、5はスタッフ、6はジョーカーというように得られるものが異なり、いくつ得られるかはこのラウンドのダイスの個数で決まる。ダイスがどれかの出目に偏っていたら、それを取るとお得だ。
お客様は毎ラウンド1枚ずつカフェにやってくる。「ケーキをひとつ所望す」「シュトルーデルとコーヒーをお願いね」こうした注文に答えて、アクションで作ったものをお出しする。「ごちそうさま」満足したお客様をホテルのお部屋へご案内。ただし、部屋は貴族用、芸術家用、市民用に分けられており、お客様に合った部屋にご案内しなくてはならない。しかも最初は3部屋しか用意されておらず、新しい部屋も用意していかなければならない。全てを同時進行で進めるのはなかなか忙しい。
しかしできるアクションはダイスで決められている。今必要なアクションがなかったら、パスをして振り直すこともできるが、それも望みのものが来るとは限らない。このような運の要素をやわらげ、戦略性を高めるのがお客様とスタッフの効果だ。
お客様は注文を満たした時に、それぞれの効果を発動させる。「ねえ、この店いい店だよ」と新しいお客様を呼んでくる口コミ客、「ほらチップだ受け取り給え」とお金をくれるお金持ち、「いいコーヒー豆あるんだ」と物資を提供してくれるお客様などさまざま。カフェにやってくるお客様は選べるので、回転がよくなるように工夫できる。
スタッフはお金を払って手札から出す。ケーキを毎ラウンド作れるウェイトレス、芸術家の部屋を無料で用意してくれる花屋、1度だけワインを4つもってくるソムリエなど、その効果は強力かつバラエティに富んでいる。終盤には、条件を満たすと勝利点を増やしてくれるスタッフもいて、これなしには勝負にならないといってもいい。
さらにスタッフを紹介してくれる(山札から引ける)お客様、お客様を選ぶ時にコストがかからなくなるスタッフもいて、この2つは密接に関係している。お客様とスタッフでうまいコンボができると、ダイスの出目が望み通りでないラウンドでも何とかなるだろう。
全員が2回ずつ手番を行ったら1ラウンドで、7ラウンドでゲーム終了。3,5,7ラウンドの最後には皇帝の得点計算というものがあり、それまでに皇帝ポイントを十分に上げていれば報酬を、できないとペナルティーを食らう。また、方針カードというものが3枚あって、ゲーム中に先に達成した順にボーナスが入る。この内容が毎ゲーム変わるので、どこに重点を置いてゲームを進めるかで展開が自ずと異なっていくだろう。
4人プレイで120分。料理を取るたびに部屋を用意できる装飾係のおかげで部屋不足にならず、次々とお客様を部屋に送り込む。やがて6のダイスを無料で使える厨房手伝いで、アクションの選択にもあまり困らなくなった。しかし中盤、やがてお金が足りなくなり足踏みしてしまう。カフェには、ワイン3杯とか注文して居座る客などばかりで回転も悪い。「飲みすぎですよ!」結局、そのまま減速してしまい、皇帝のペナルティーまで食らって3位。1位は、先手先手を打ってスタッフを出していったcarlさん。
時間はかかるものの、ダイスの出目に一喜一憂する爽快感と、カードの効果の組み合わせを考える戦略性の両方を兼ね備えており、その時間ずっと楽しさの持続するゲームである。
Grand Austria Hotel
V.ジッリ、S.タッシーニ/ルックアウトゲームズ(2015年)
2~4人用/12歳以上/60~120分