山形県の蔵王ライザウッディロッジというところで開かれた山形大学のゲームサークル「Neutral」OB会合宿に、ぽちょむきんすたーさんからお誘いいただいて参加。NCONと呼ばれるこの合宿は、実はかれこれ10年以上も続いているもので、参加者も20名ほどになる。夏に出会った東北芸術工科大学のボードゲームサークル「Blood Lust」に引き続き、こんな身近にボードゲームを遊べる環境があったことに驚く。
参加者はTRPGあり、ウォーシミュレーションあり、ボードゲームありと幅広くアナログゲームを楽しんでいた。ボードゲームしか知らない私としてはその守備範囲の広さにまた驚くのであった。
バケツくずし2|私の世界の見方|それ何やねん|石器時代|パトリツィア|パンダゴリラ|アトリビュート|キャッチマウス|カイロ
バケツくずし2(Alles im Eimer / S.ドーラ / コスモス, 2006)
すぐ盛り上がる、すごく盛り上がる
はじめは大きめの細長い箱で発売されたこのゲーム。2002年のドイツ年間ゲーム大賞でノミネートされたものの、ゲーム内容の割に箱が大きくて値段も割高であった。
そこが唯一の欠点であったとするならば、小さい箱で発売された『バケツくずし2』は欠点のないゲームということになるだろう。ルール自体もバケツの数を減らしたり、逆回りになるバリアントを入れたりして、より盛り上がるようになった。
バケツ1つの丸裸になってからが勝負。ほかの人はバケツがいっぱい残っているプレイヤーを狙ってカードをリードするが、なかなか思うようには届かずそのうち誤爆でぶっ飛んでしまった。ゲラゲラ笑いながら遊べるカードゲーム。
私の世界の見方(Wie ich die Welt sehe… / U.ホシュテトラー / アバクス,2004)
全員にウケたら親も選ばざるを得まいて
大量のカードがドイツ語で書かれたこのゲーム。『アップルトゥアップル』に倣って日本風にローカライズしながらカードを訳すのには手間がかかったが、リプレイ率が高くて手間をかけた甲斐があった。
「死刑より嫌な48時間○○」――「水鉄砲」
「フィンランドの森の中にある道路標識○○に注意」――「オリバー・カーン」
お題もワードもぶっ飛んでいて、下ネタから文学表現まで多彩に表現できるのが魅力。中には『アップルトゥアップル』がそうであったようにどんなお題でも点を取れる無敵(ゆえに興ざめの)のカードがないわけではないが、どんなカードも使うタイミングと親のツボにはまることで爆発力を発揮するのがいい。布教用にもう2,3個買おうかなというくらいだ。
それ何やねん?(Was’n das? / P.パリエール / ラベンスバーガー, 2006)
考えすぎですってば!
昨年のドイツ年間ゲーム大賞で推薦リストに入った、もともとはフランスのゲーム。これまたお題が全部ドイツ語ということで、日本風にローカライズして遊んでいるが、これもリプレイ率が高いゲームとなっている。
今回はいつもと違う展開。お題が決められてから、最初の1個を取るまで時間がかかる。「コレを取ったらアレだと誤解されるだろうし……」と考え込んでいるからだった。解答者側もその間に「コレを取らなかったということはアレではない」などと手札を整理している。何というゲーマーたち!
そんなわけで直感的に遊んでいるいつもとは違うゲームの感触を味わえた。こういう遊び方もいいなぁ。
石器時代(Neolithibum / H.ビルツ & P.グードブロート / ハイデルベルガーゲーム出版,1991)
下手するとツリますよ
詳細はこちら。石を置く場所がなくなった頃からが勝負どころ。あえて石を積むアクションを選んで勝負に出るか、石を積みそうな人をあざ笑ってボーナスを狙うか。みんなも同じことを考えているから、洗面器ゲームの様相を帯びてくる。見事に難しい石を積み上げる英雄と、がらがら崩してしまう笑い者とは紙一重。石の積まれた状況をよく観察して、置けるかどうかしっかり見極めたい。
序盤にどんどん石を積み、食料がなくなった頃に暴れん坊をスルーして食料を蓄え、終盤はマークされながら難しい姿勢で石を積んで勝利。もう若くはないもので、足を上げてその下から手を入れるアクションはきついけれども、あちこちにドラマが起こる仕掛けが仕掛けられていてまた遊びたくなる。
ちなみにこの後何人かは『スカッド7』を始めた。柔軟体操とランニングで日ごろの運動不足解消?
パトリツィア(Patrizier / M.シャハト / アミーゴ, 2007)
最初から最後までシビレっぱなし
早くもエッセン前にメビウス便で届いた秋の新作。しかもドイツ年間ゲーム大賞を受賞したばかりのシャハトの作品で、アミーゴで発表するボードゲームは初めて(カードゲームは昨年発表された『ディアボロ』『エレファント』がある)。それだけで十分注目される作品だが、その期待を裏切らないゲームである。
ボード上に描かれた9つの都市を舞台に塔の建築競争をする。自分の色のコマをより多く、より高く置くことによって得点が入る。ドイツゲームの王道、陣取りゲームである。
シャハトの手法は選択肢を極力少なくし、その中でジレンマを感じさせることにある。手札はたったの3枚。その中から1枚を選んで出し、その色の街に自分の色のコマを乗せる。
そこでこのゲームのポイントその1。カードの補充は自分がコマを置いた街から行い、しかもそのカードはオープンになっていること。どの色を補充すれば次に有利になるか考えながら、計画的に配置しなければならない。また自分が狙っている街のカードを誰が取ったかだいたい覚えておくことも必要だろう。
なぜかというとこのゲームのポイントその2。置けるコマの数は都市毎に定数があり、しかも最後は全員置ききるまでゲームを続行すること! 終盤になると、だいたい自分が得点できそうか読めてくるのだ。「最後に黄色の都市に置けるのは私だ!」「あの人が赤のカードを持っていないならば得点できる!」というように。
これだけだとほとんどアブストラクトゲームかというほどのガチガチなゲームだが、マルチプレイヤーで遊ぶことによる不確定さ(『ブロックス』などで観察されるような)に加え、塔のパーツを一個移動できるという特殊アクションや、貴族の顔を3つ集めるともらえるボーナスなどで勝敗の行方が濁らされており、負け気味でも諦めずにゲームを続けられる。これだけ悩んで悶絶して、プレイ時間は30分前後。ドイツゲームの進化は想像を超える速さで進んでいるようだ。
さて今回。色を固めなかったせいであちこちで礎にされてしまい、盤面をうまく支配できなかった。貴族の顔ボーナスも狙ってみたが及ばず。悩ましすぎるゲームに出会うと手がしびれて力が入らなくなることがあるが(皆さんもそうでしょうか?)、このゲームは実に最初から最後までシビレっぱなし。1日に3~4ゲームくらい続けて遊びたい。
パンダゴリラ(Panda, Gorilla & Co. / P.ヴィヒマン / シュミット, 2007)
船頭多くして船山に登る
動物園の区割り計画をテーマにした陣取りゲーム。これまたエッセン前にメビウス便で届いた秋の新作である。
道や草原の色がつながるようにタイルを置いて、大中小のコマを置く。道で1つのエリアが囲まれたら大中小の動物タイルを並べてみて、置ければコマを置いていた人に得点。動物タイルは置けるだけ置いてその分だけ得点になるからできるだけ広げたい。でも広げすぎて後からピッタリ合うタイルがなかったりすると、動物タイルが置けなくて得点をフイにしてしまうかもしれない。ほかの人と協力しつつ、自分の計画にあった動物園づくりを進めよう。
ボードの周囲は柵で囲まれているので、タイルを置く場所は意外に狭い。なかなか絵柄が合わなくて悩むものだが、よいタイルを引いてうまく囲めたときの喜びは大きい。もっとも、最後まで囲みきれなくてもタイルを埋めて完成とするので、無闇やたらに区画を広げておくのも無駄ではない。
ポイントは、大中小のどの動物タイルがいっぱい入るかというところのようだ。大は得点が大きいが入りにくい。小は入りやすいが、得点が小さい上に置く順番は大中の後なのであまり入らない。欲張って大でいくか、ほどほどの中でいくか、安全な小でいくか。
適度に囲い込んで調子がいいと思っていたのはゲーム終了まで。最後に残った広大なエリアにコマを置いていなかったため大量得点チャンスを逃してしまった。もっと欲張っておくべきだったか……。
アトリビュート(Attribut / M-A. カサソラ / ルックアウトゲームズ, 2002)
拡大解釈の誘惑に注意!
ゲームの内容はこちら。これもカード全部を日本語化するのに骨が折れるが、その労を補って余りあるリプレイ率となっている。8人までとなっているが、別に10人だって余裕で遊べるし、ルールはすぐ分かるし、解釈の落差に大笑い必至。いいゲームである。
このゲームの面白さの源泉は、たった4枚しかない形容詞カードでお題に対応しなければならないところにある。よいカードがあるのはむしろ希。緑のヒツジのときに限ってどれも合わないカードばかりだったり、反対に赤のヒツジのときに限ってどれもぴったりしそうだったりする。もっともそれは思い込みで、出されたほうは思いもかけない解釈をしてくることがあるからまた面白い。
今回のMVPは「犬」というお題に出された「可燃の」を、迷った末取ったぽちょむきんすたーさん。「犬は可燃だ!」は名セリフだなぁ。「安部元首相」のお題で「洗濯機で洗える」を取った鴉さんもヒーロー。皆さん拡大解釈しすぎですって!
キャッチマウス(Fang mich! / 作者不詳 / ハバ)
紛らわしくてつかまっちまう
ハバ社のリアクションゲーム『キャッチミー(Hasch mich!)』を小型の缶に入れたゲーム。まずヒモのついたネズミを中央に寄せ、各自自分の担当を決める。ひとりが親になってダイスを振り、出た色のネズミを缶のふたで素早くキャッチ! これで捕まってしまったり、自分の色じゃないのに間違って引っ張ったりしたらお手つき。3回のお手つきで負けということにした。
コンパクトになっても面白さは変わらないどころか、ダイスにネコの目があって誰でも捕まえてよいというルールのひねりでもっと盛り上がるようになった。その罠で捕まってしまったのは私です。
カイロ(Cairo / G.ブルクハルト / シュミット, 2002)
上達している、のか?
ゲーム内容はこちら。発売当時は「チマチマしていて爽快感がない」というような評価が多かったように記憶しているが、ちょっとした力加減でゲームが大きく変わる繊細なところがとても好きだ。発売後5年経った今もこのゲームの特異な輝きは失われていない。
今回は鴉さんが一番難易度の高い20点エリアに見事着地。これで1位をもぎ取った。私は数日前遊んだばかりで結構指が感覚を覚えていてくれたため、大きくは外さなかったが冒険もできず2位。攻防が激しかったのは上流の12点ゾーン。きのさんが安定したピラミッドを作り、ほかを全く寄せ付けなかった。ゴルフのような楽しさもあり、バランスゲームのような楽しさもあり、おはじきに留まらない懐の深いゲームである。